今回は恐竜というテーマから少しだけ離れて「進化」について解説しておきます。
もちろん恐竜を理解する上でも役に立つ知識なので、絶対に押さえておきましょう。
ポケモンの「進化」は進化ではない
「進化」という言葉はゲームでたくさん出てきます。
ポケモンでもレベルアップさせると進化して別の姿のポケモンになりますよね。しかし厳密な意味での進化は異なります。
進化はもっと大規模で長期的なものなのです。
例えば、現代に生きているキリンっていますよね。キリンと言ったら首が長いのが特徴ですが、キリンの祖先は首が長かったわけではありません。もともとキリンの祖先は小さい馬のような生き物でした。
小さい馬に突然変異が起きてキリンになった!
進化のきっかけとなるのは「突然変異」です。遺伝子に突然変異が起きると、体の特徴がわずかに変化します。
例えば、みんなが首の短い小さい馬なのに、一部だけ首がちょっとだけ長い個体が生まれたりします。
首がちょっとだけ長いと、周りの個体よりも高いところにある葉っぱを食べやすくなります。食べ物にありつきやすくなるのでその個体は他の個体よりも生きるのに有利になります。
すると、首が短い個体は子孫を残せずに死んでいき、首が長い個体が子孫を残しやすくなります。すると次の世代では首が長い個体が多くなります。
これが繰り返されることによって。いつの間にか首が短い個体はいなくなり、首が長い個体だけが残ります。もともとの種とは姿が大きくことなった別種と言えるので、進化が完了したことになります。
このような進化の考え方を「自然選択説」と呼びます。進化は自然の選択によって起こるのです。
自然選択説を唱えたのは「チャールズ・ダーウィン」です。
ダーウィンは22歳の時、恩師の推薦でナチュラリスト(博物学者)として測量船ビーグル号に乗り、5年間の世界一周の航海に出発しました。
ダーウィンの仕事は野生生物の標本を集めてそれを調べることです。 その経験から、生物がどのように進化し たのかについて考えるようになったのです。
「自然が選ぶ」というのはどういうことでしょうか。
キリンの例では、「首が長い個体の方が高いところの葉っぱを食べるのが有利だから、生き残りやすくなったんだよ~」という話でしたね?
つまり、「高いところに葉っぱが生えている」という自然環境が首を伸ばす進化の鍵となったのです。
逆に首が短い方が有利な自然環境では、首が長くなる進化は起こりません。
実際にキリンの仲間である「オカピ」はキリンの仲間なのに首が短いです。キリンとオカピは共通の祖先から進化したと考えられています。
進化が二手に分かれた理由は、住んでいる自然環境にあります。
キリンは草原で、オカピは森で生息しています。
草原という拓けた場所では、姿を隠すことはできないので、敵が近づくのをいち早く気づくために首が長い方が有利です。また、走って逃げるために脚が長い方が有利になります。ですから祖先は首を長くしてキリンになりました。
逆に森では姿を隠すことができるので、首も手足も短くて小回りが効く方が有利です。ですから祖先は首を短いままに残したのです。
つまり、同じ祖先であっても、草原か森かという環境によって、進化の方向性が決まったわけです。自然が選択した個体が生き残れるというわけですね。
進化は成長や努力では起きない
自然選択説が出る前は、進化は成長によって起こると信じられていたこともありました。
例えば、「キリンの進化は本来小さい馬のような動物が、高いところの葉っぱを食べようと一生懸命首を伸ばした結果、今のように首が長いキリンへと進化したのだ」と信じられていたのです。
しかし、これは間違いです。進化は努力や成長によって起きるものではありません。
なぜなら進化は遺伝子が後の世代に伝えられる必要があるからです。
仮に現在ヒョロヒョロ体型の僕が、めちゃくちゃ筋トレをしてムキムキになったとしましょう。
しかし、僕の子どもはムキムキで生まれてくるでしょうか?もちろん違いますよね。
仮にキリンの祖先である小さな馬が毎日首の柔軟運動を欠かさず行い、頸椎移植手術を行い、首ながコンテストで一位になったとしても、その子どもが首が長い状態で生まれてくるわけではないのです。
ですから、1つの個体がいくら努力してもキリンには進化できません。
進化は努力や成長によってではなく、たまたま起こるのです。
たまたま突然変異が起こって、たまたまその環境で有利に働いただけです。
進化は最近も起こっている
進化が完了するには途方もない時間がかかります。
もしもDSでムックルを育てているなら、本来の意味でムックルがムクバードに進化するのはあなたが生きている間では無理です。
それでも、進化は今でも起こっているのです。
例えば、「オオシモフリエダシャク」という蛾がいます。オオシモフリエダシャクは色が濃いものと色が薄いものの2種類がいました。
しかし、数十年の間に色が濃い遺伝子を持つ個体が一般的となったのです。
300年前まではほとんどが色が薄い個体でした。色が薄いカバノキに止まったとき時に姿を隠すことが できるからです。
しかし、環境の変化が起こりました。19世紀のヨーロッパでは石炭が燃料として多く燃やされるようになり、壁や木の幹にはたくさんの「すす」がついたのです。そのため木の表面が暗くなり、今度は色が濃い個体の方が生き残りやすくなったのでした。
つまり、オオシモフリエダシャクはわずか300年の間に色濃く進化したのです。
木の表面が薄いか濃いかという自然環境が、オオシモフリエダシャクの運命を選択したわけですね。
始祖鳥は鳥に進化した!…わけではない
ついでに進化についての誤解をもう1つ解いておきたいと思います。
世の中では「始祖鳥は鳥類に進化した」とかって言われていますよね。
学校の教科書でも、「始祖鳥は爬虫類の特徴と、鳥類の特徴をどちらも持っています」だとか、「爬虫類から鳥類への進化の過程を示しています」みたいに書かれていました。
だから「鳥の祖先は始祖鳥」と認識している方も多いと思います。
しかし、実際には始祖鳥は鳥類の直接的な祖先ではありません。
正しく言うと、「始祖鳥は鳥類と共通の祖先から進化した」だけです。
「共通の祖先から進化しているけど直接の祖先ではない」
これは非常に分かりづらいと思うので、またポケモンを使って解説してみたいと思います。
ポケモンのユキメノコ・オニゴーリの進化を使うと非常に分かりやすいです。
ポケモンを知らない方に、説明しておくと、「ユキメノコ」と「オニゴーリ」というポケモンがいまして、どちらも「ユキワラシ」というポケモンから進化します。
あるユキワラシはユキメノコになり、またあるユキワラシはオニゴーリになります。ちなみにオニゴーリはさらにメガオニゴーリに進化します。
鳥類と始祖鳥の関係もこれと似ています。
現代に生きる鳥類はメガオニゴーリです。始祖鳥はユキメノコです。そして現代の鳥類と始祖鳥の共通の祖先がユキワラシです。
ユキメノコとメガオニゴーリが直接繋がっていないのと同じように、現代の鳥類と始祖鳥も直接つながってはいないのです。
ですから始祖鳥から鳥類に進化したわけではありません。
始祖鳥も鳥類も「ドロマエオサルス類」と呼ばれるグループのなかから登場したと考えられています。ドロマエオサルス類の代表的な恐竜はヴェロキラプトルです。
つまり、「ユキワラシ」に当たるのは、ドロマエオサウルス類の誰かなのですが、誰とは明確に分かっていません。
「近縁だけど直接的な祖先ではない」という言い方の意味が分かっていただけたでしょうか?
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