前回までの登場神を整理しておきましょう。出てきたのは主にガイア・ウラヌス・ティターン・クロノスですね。
ガイアは一番最初の母親で、ウラヌスと結婚しました。めちゃくちゃ子どもを産んでいて、子どもは3つのグループに分けて呼ばれています。ティターン・キュクロプス・ヘカトンカイルの3つです。
そしてティターンの末っ子がクロノスでしたね。
前回の話では、父親は嫉妬深く自分の子どもを生き埋めにしていたんだけど、末っ子のクロノスは母親と協力して父親を倒したんだぞ~というところまで解説しました。
今回から出てくるのがレアー・オリンポスの神々・コウレテスです。
レアー
ウラヌスに埋められたティターンの一人。後にクロノスと結婚して、6人の子どもを生む
オリンポスの神々
父となったクロノスと母となったレアーの間にできた子どもたちは、後にオリンポスの神々と呼ばれるようになる。(厳密に言うと例外はいるんですけど)
その中の末っ子が「ゼウス」。後に暴走する父クロノスと戦う。
コウレテス
母レアーの代わりにゼウスを引き取ってくれた部族。
荒々しいけど優しい?
Episode2.クロノスとゼウスの全面戦争
では、今回の話に入っていきます。
生き埋めにされていたティターンが開放される
父親のウラヌスを倒したことで、ウラヌスの子どもたち「ティターン」が開放されました。クロノスが兄弟たちを見事助けることに成功したわけですね。
前回は面倒くさくて、省略したのですがティターンたちにはそれぞれ名前があります。
- オーケアノス
- コイオス
- クレイオス
- ヒュペリーオーン
- イーアペトス
- クロノス
- テイアー
- レアー
- テミス
- ムネーモシュネー
- ポイベー
- テーテュース
いろいろいますが、物語上大事なのはクロノスとレアーです。この2人はクロノスが父ウラヌスを倒したあとに結婚して子どもを産みます。
※ちなみに、この頃封印されていた同じくウラヌスの子どもである、ヘカトンカイル三兄弟と、キュクロプス三兄弟はまだ封印されたままでした。
超有名どころ!クロノスとレアーの子どもたち
クロノスとレアーの子どもは少なめなので安心してください。
- ヘスティア(長女)
- デメテル(次女)
- ヘラ(三女)
- ハデス(長男)
- ポセイドン(次男)
- ゼウス(末っ子)
有名な神なので知っている名前もあったのではないでしょうか。末っ子であるゼウスが今回の物語の中心となります。
血は争えない…。今度はクロノスが凶悪化する
前回は勇敢なイメージだったクロノスですが、クロノスも凶悪化していきます。
ウラヌスと同じように自分の子どもを嫌うようになるのです。レアーが子どもを産むたびに自分の口で飲み込んでいきました。さすがウラヌスの息子…といったところでしょうか。
長女のヘスティアも、デメテルもヘラも、長男のハデスも、ポセイドンもみんな飲み込まれていきました。
母レアーは心を痛め、末っ子であるゼウスを産んだときにはクロノスの目から隠すことに決めました。ゼウスの代わりに石を産着に包んで父親に渡したのです。クロノスは確かめもせずにゴクリと石を飲み込みます。
生きのびた最後の赤ん坊ゼウスは父親の目から身を隠しながら生きていくのです。
ゼウスが泣くたびにどんちゃん騒ぎでごまかす
母親レアーは凶悪化した父親クロノスからゼウスを隠すために、「クレタ島」という島に連れていきました。
クレタ島のイガ山という場所に住んでいる「コウレテス」という陽気な部族に預けたのです。コウレテス部族は「アダマンティア」という精霊にゼウスを育てさせました。
当時父親クロノスは天空・大地・海を支配していたので、赤ん坊がクロノスに見つかるのではないかとみんな用心していました。
そこでコウレテス部族は赤ん坊ゼウスが泣き声を上げるたびに、どんちゃん騒ぎして踊り狂い、泣き声をかき消していたんだとか。
コウレテス部族は荒々しくて好戦的ですが、結構優しいやつらみたいです。
「ゼウスVSクロノス」腹をぶち蹴る
無事に育った末っ子ゼウスは父クロノスに兄弟の復讐をすることを誓います。ゼウスは祖母ガイアの力も借りながら、父親に奇襲を仕掛けました。
その驚きの攻撃方法とは…、
腹をぶち蹴る(笑)
腹を蹴られた父クロノスは今まで飲み込んだものを吐き出します。最初に出てきたのが最後に飲み込んだ石です。ゼウスの身代わりになったやつですね。
ちなみにその石は後に、ギリシャ神話の中心地である「デルポイ」に置かれて、崇められました。「父親の冷酷さを象徴するもの」として。
生まれた順と逆順に生まれ直し、「オリンポスの神々」となる
腹を蹴られた父クロノスは、呑み込んでいたゼウスの兄弟たちを次々と吐き出します。
赤ん坊のときに呑み込まれた兄弟たちは、父クロノスのお腹のなかでスクスク成長してて、口から出てきたときには立派に育っていたんです。
神々が再び世界に登場するので、「生まれ直し」と表現されることもあります。
兄弟のなかで一番最初に出てきたのは、一番最後に呑まれたポセイドンです。次にハデス→ヘラ→デメテル→ヘスティアと生まれ直してきます。
生まれ直したゼウスの兄弟たちは「オリンポスの神々」と呼ばれるようになります。
この後、オリンポスの神々とその父であるクロノスは、宇宙の秩序の支配をめぐって戦いを繰り広げます。これが「ティタノマキア」と呼ばれる大戦です。
神々の親子喧嘩「ティタノマキア」が勃発
父クロノスと、ゼウスの戦い「ティタノマキア」が繰り広げられます。
クロノスは自分の兄弟であるティターン族を率い、ゼウスは自分の兄弟であるオリンポスの神々を率いて戦いました。
ようするに、家族・親族総出の親子喧嘩が始まったわけです。
親子喧嘩と言っても、山々が大きく揺らぎ世界が崩壊するほどの威力なんですけどね。というか、神は不死なのでいくら争っても決着が着きません。
両者決め手にかける戦いにもつれ込んだとき、ゼウスは祖母ガイアに助言を求めます。
ガイアは「3人のヘカトンケイルたちと、3人のキュクロプスを味方にしたら勝てるんじゃないかしら?」と助言します。
ヘカトンケイル兄弟と、キュクロプス兄弟は、ティターン兄弟と同じくウラヌスの子どもでしたね。(つまりクロノスの兄弟)
ゼウスからすれば、叔父さんに当たります。強大な力を持つヘカトンカイルと、キュクロプスの力を借りて、ゼウスたちオリンポスの神々が勝利を納めます。
中二病心が刺激される!キュクロプスが作った究極の武器
ティタノマキアの際、封印を解いて助けてくれたゼウスに、キュクロプスはお礼として武器を作ってくれました。
ゼウスにはすべてを燃やし尽くす雷霆(らいてい:激しい雷のこと)を、ポセイドンには三叉の矛を、ハデスには姿を隠す隠れ帽をつくってあげたのです。
くじ引きで「委員決め」?
ティタノマキアに勝利すると、ゼウス兄弟たちはすべてを支配する権力を得ます。
そして、世界を支配するのに誰がどの役割を担うかをくじ引きによって決めることになります。
宇宙を天空・大洋・冥界の三つに大きく分けてそれぞれを支配するのは誰にするか振り分けたのです。
言ってみれば、学校で委員会を決めるみたいな感じ。ポセイドンは海洋、ゼウスは天空、ハデスは冥界を引きました。
ちなみに冥界は外れくじ。みんながやりたがらない「学級委員」みたいな感じでしょうか。
この時点でのオリンポスの神々を整理
さて、ここまでゼウスの兄弟をオリンポスの神々と呼ぶんですよ~と解説してきました。
しかし、厳密に言うと例外があります。まずはハデスです。ハデスは冥界という外れくじを引き、1年を通じて冥界で暮らさなければならないのでオリンポスの神からは外れます。
また、長女であるヘスティアもオリンポスの神からは外れます。兄弟の小競り合いには興味がなく、地上で暮らすことを選んだためです。
ですから、ハデスとヘスティアの2人はゼウスの兄弟ですがオリンポスの神々にはカウントされません。
逆に、ゼウスの兄弟ではないけどオリンポスの神々に入る神もいます。「アフロディーテ」です。
アフロディーテは前回の記事でちょろっと登場しました。アフロディーテはゼウスの祖父に当たるウラヌスの精子が、海に落ちてから生まれた女神だと解説しました。
ですから、一応ウラヌスの子ども?と言えるので、父クロノスの兄弟です。ゼウス兄弟から見たら叔母さんと言えます。
ですので、現状ではオリンポスの神々は、
- デメテル(次女)
- ヘラ(三女)
- ポセイドン(次男)
- ゼウス(末っ子)
- アフロディーテ(叔母さん?)
の5人だと思ってください。後々さらに7人が追加されて、「オリンポス12神」と呼ばれるようになります。
創作のヒント
始まりであり、終わりでもある「ヘスティア」
ヘスティアはゼウスの兄弟(クロノスの子ども)で長女です。
ヘスティアは結構興味深くて、僕が好きな神の一人です。
物語のなかでクロノスの腹から生まれ直したという部分を覚えていますか?ヘスティアは長女なので一番最初にクロノスに呑み込まれ、最後に吐き出されました。
ですから、ヘスティアは長女であって末っ子でもある、始まりであっても終わりでもある、という立ち位置なのです。そのため物事の両面性を表す象徴とされています。
また、ゼウスの兄弟であるにも関わらず自分からオリンポスの神々を辞退しています。そして地上に降りてから炉や竈の女神として人々の家庭生活を司るようになります。
家庭における温かく居心地がいい環境を象徴する神なのです。
ヘスティアのイメージ
竈・炉・温かい炎・家庭的・穏やか・競争が嫌い・地上に降りた神・物事の両面性
収穫の女神「デメテル」
収穫の女神であるデメテルは、年に一度の彼女のめぐみをあてにする崇拝者にとっては命を与える存在です。
しかし、兄弟と一戦交えるだけではなく、侮辱されたと見れば人間の行為も拒絶する気まぐれなところもあります。デメテルは結構野心的で、後にゼウスが最高神となることに反発します。
デメテルのイメージ
収穫・自然の恵み・気まぐれ・野心的
「夫婦愛」の象徴「ヘラ」
ヘラは重要な役割を持ちます。後に末っ子ゼウスと結婚して最高位の女神となったからです。
そのため「妻」「夫婦愛」を象徴する女神です。
ギリシャでは愛情に関して 「夫婦愛」と「ロマンティックな性愛」をはっきり分ける文化がありました。
「夫婦愛」を司るヘラに対して、「ロマンティックな性愛」を司るのがアフロディーテです。アフロディーテはゼウスの兄弟ではありませんが後にオリンポスの神々に数えられます。
ヘラのイメージ
妻としての女性・夫婦愛
冥界の神「ハデス」
ハデスは冥界を司る神です。有名なので知っている方も多いのではないでしょうか。
創作物では物語の適役として描かれることも多いです。「冥界」という言葉から、闇落ちしたイメージがあるんでしょうね。ハデスはキュクロプスにつくってもらった隠れ帽を使います。
ハデスのイメージ
冥界・闇・姿を隠す隠れ帽
大洋の神「ポセイドン」
ポセイドンは海を司る神です。創作物ではたびたび出てきますね。キュクロプスにつくってもらった三叉の矛を持っています。
ポセイドンのイメージ
水・海・矛
天空神「ゼウス」
最後に天空を司るゼウスです。キュクロプスにつくってもらった究極の武器「雷霆」を用いて、すべてを雷で焼き尽くします。オリンポスの神々のなかでも「最高神」として君臨するリーダー的な存在ですね。
ゼウスのイメージ
天空・雷・末っ子であり最高神・リーダー
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