私たちは日々、「やりがいのある仕事」や「モチベーションを保つ働き方」を模索しています。
近年の心理学・組織論の研究では、自己決定理論をはじめとする職務満足に関する理論が注目を集めており、「自分のアイデアが尊重され、かつ形になる仕事」は人の幸福度や生産性を高めるとされています。
では、そうした働き方を実践している職種とは、具体的にどんなものなのでしょうか?
今回取り上げるのは、「ゲームプランナー」という仕事。
一見、娯楽の世界の専門職に思えるかもしれませんが、企画力・分析力・チーム連携・ユーザー志向といったあらゆるビジネスパーソンに共通する能力が求められる職業です。
そして何より、「アイデアを形にする力」が問われる点で、クリエイティブな仕事の本質が詰まっています。
この記事では、ゲームプランナーの仕事内容ややりがい、適性、そして働き方から、現代の仕事に求められる意味と満足度について考えてみます。
ゲームプランナーとは?
ゲームプランナーは、ゲーム開発の「設計者」であり「仕掛け人」です。ゲーム全体の設計、仕様書の作成、ゲームバランスの調整、プレイヤー体験の設計など、ゲーム制作の中核を担います。
また、ゲームの企画立案だけでなく、仕様設計、進行管理、バランス調整など幅広くプロジェクトに関与し、「遊び」を作る現場の中心となる存在です。
ゲームプランナーとゲームクリエイター、ゲームデザイナーの違いは何?
ゲームプランナーはゲームクリエイターの一員です。ゲームクリエイターという用語が「ゲーム制作に関わるすべての職種(プランナー、プログラマー、デザイナー、ライターなど)」を含むのに対し、ゲームプランナーは「企画と設計」のプロフェッショナルといえます。
ゲームプランナーとゲームデザイナーは基本的に同じです。
仕事内容
企画立案・プレゼン
- 市場調査やターゲット設定
- クライアントやプロデューサーの意向を反映したゲームコンセプトの立案
- 企画書の作成と社内プレゼンテーション
仕様設計・仕様書作成
- キャラクター設定、ステージ構成、バトルシステムなど、ゲームの骨格を構築
- 各職種(プログラマー・デザイナーなど)が正しく実装できるよう、仕様書を詳細に記述
制作ディレクション
- スケジュール管理、ミーティングでの意思疎通
- シナリオやUI、バトル設計など細部の確認と調整
運用・分析
- リリース後はKPI(例:DAU/課金率など)をもとに改善施策を立案
- ユーザーの声やプレイログを活かしたイベント設計
ゲームプランナーに向いている適性
ゲームプランナーに求められるスキルと資質は多岐にわたります。以下に分類して整理します。
企画・発想力
- 豊かな想像力と論理性のバランスが重要。ユーザー行動や数字(KPI)を根拠に改善案を出す論理性も不可欠
- 「こんな遊びがあったら面白い」を形にできる。
- 歴史や音楽、映画など、ゲーム以外の知識も引き出しとして活かせる。
分析力と探究心
- プレイ中に「なぜこのゲームは面白いのか?」と考察する習慣。
- 流行やユーザー動向に敏感であることも重要。
- 他作品の良い部分を研究・模倣し、自分の企画に活かす姿勢。
技術やツールの流行は移り変わりが激しく、「5年後にはもう使われていない」ことも珍しくありません。常に新しい知識をキャッチし、柔軟に変化に対応できる姿勢が求められます。
コミュニケーション力
- 多職種のメンバーとのやり取りが日常的に発生
- アイデアの魅力を説得力ある言葉で伝える能力も重要
- デザイナーやプログラマー、サウンドなど多職種と連携。クリエイターという少し癖のある人たちをまとめることが重要!
- 「指示する」「伝える」「話を引き出す」など双方向の力が問われる。
マネジメント力(進行管理)
- スケジュールや予算の管理、仕様の変更対応
- プロジェクト全体の流れを俯瞰できるスキルが求められる
文章力・表現力
- 仕様書や企画書を、正確に・わかりやすく・魅力的に伝える力。
- コピーライティングのスキルがあると尚良し。
柔軟性とマメさ
- 制作途中で仕様が変わることは日常茶飯事。
- そのたびに仕様書を更新し、関係者に伝達する対応力が必要。
英語・資格
- 海外市場を意識したタイトルも多く、英語スキル(TOEIC・英検)は活かせる。
- 情報処理系の資格(基本情報技術者など)も、ゲーム開発の理解を深めるのに役立つ。
- マーケティング関連資格があるとプレゼン時に強みになります。
ゲームプランナーのやりがい
創造性とチーム力でゲームを形にできる
「アイデアを考えるだけでなく、現実のものにしていく」という過程には大きな充実感があります。仲間と共に一つの世界を築き上げる、そのプロセスこそがゲームプランナーの醍醐味です。
「好き」を仕事にできる
ゲームに触れる時間が多く、日常的に企画や改善を考える中で、趣味と実務が近い仕事ともいえるでしょう。
アイデアが形になり、ユーザーに届く
ゲームプランナーの大きなやりがいは、自分のアイデアが企画として採用され、ゲームという形で世の中に出ることです。自分が考えたシナリオやシステムをユーザーが楽しんでくれたとき、その達成感は他には代えがたいものがあります。
ユーザーの反応がダイレクトに見える
現代のゲームはオンライン運営やSNSの普及により、ユーザーの声が直接届きます。「アップデート内容が良かった」「イベントが神だった」など、評価が即時に可視化される点も特徴です。
企画から運用まで関われる
ゲームプランナーは開発初期の企画フェーズから、完成後の運用(イベント・キャンペーン設計など)にも関わります。一つのプロジェクトを通して全体像を見渡せるため、やりがいは非常に大きいです。
最新の技術に触れ、多様なゲーム体験を提供できる
ゲームはかつて「室内でコントローラーを握る娯楽」だったものが、
- 運動系(フィットネス)
- 学習系(知育、語学、歴史)
- eスポーツ
といった形で、生活や文化と共存する存在になっています。今後はさらに、
- VR/ARの発展
- AIによる自動生成コンテンツ
- インディーゲームの自由な発想
ゲームプランナーの給与・将来性
平均年収・給与
- 平均月収:約36~38万円
- 年収換算:約430~550万円前後(企業・地域・経験によって異なる)
- ディレクターやプロデューサーに昇進すれば年収700〜1000万円超も珍しくない
労働環境
かつて「ブラック」と言われがちだったゲーム業界ですが、昨今は働き方改革が進み、
- 週5日勤務
- 土日祝日休み
- フレックスタイム制や裁量労働制の導入といった企業も増加中です。
ただし、大型リリース前やイベント直前には残業が増えることもあります。
ゲームプランナーになるには
専門学校や大学から目指すルート
- 専門学校や大学のゲーム学科は一定の知識を学べる反面、即戦力性や個性の方が重視される傾向。
未経験からプランナーにつなげるルート
- 「高卒→現場経験→プランナー昇格」というルートも存在します。アシスタントプランナー、デバッカー(バグ発見担当)、QAテスター、サポート職などからキャリアアップが可能。
- ただし、プランナー職は競争率が高く、ポートフォリオ(自主制作企画書)があると有利です。
ゲーム業界の他のクリエイターからプランナーへ転向するルート
- デザイナー、プログラマー、サウンドなど他職種から転職
特にその業種のなかでリーダー職を経験した人は歓迎される傾向があります。
IT業界からの転職
例えば「システムエンジニア→ゲームプログラマー→ゲームプランナー」というルートもよく見られます。
- プロジェクト管理の経験
- C++やUnityスキル
- 仕様書理解力
…などを活かすことができます。
その後のキャリアパス
ゲームプランナー→ディレクター→プロデューサーといったキャリアアップが王道です。
- ディレクターは開発全体の責任者であり、チーム統括や品質管理、予算・スケジュール管理を行います。
- プロデューサーはそのさらに上で、ゲームタイトル全体の方向性を定め、開発・運営・宣伝・マネタイズに関わるトップポジションです。
また、開発経験を積んだ後にインディーゲーム開発や独立系スタジオ設立といった道もあります。
科学的考察
ゲームプランナーという仕事について、職務満足度などを調べた研究などを参考に、科学的な視点から分析してみます。
自分のアイデアが形になる喜びは幸福度を高める
前述した通り、自己決定理論の観点から、「自分のアイデアが尊重され、かつ形になる仕事」は人の幸福度や生産性を高めるとされています。
「ゲームが好き」だけ選ぶのは危険!?
好きを仕事にするという観点は賛否両論あります。例えば、2015年のミシガン州立大学の研究によると、好きなことを仕事にするのが幸せだと考えるタイプよりも、「仕事は続けるうちに好きになるものだ」と考えるタイプの方が、長期的には幸福度や年収、キャリアのレベルが高くなるとにされています。
好きな仕事が思いのほか幸福度を高めてくれない理由は、仕事に就く前の創造と仕事に就いた後の落差だと考えられます。ゲームプランナーなどのゲーム業界を選ぶ上ではなおさらです。
- ゲームをプレイするのが好きという理由だけで選んでしまい、ゲームを作る側の立場を楽しめなかった
- ゲーム好きが黙々と作業するというよりも、プログラマーやデザイナーなどクセが強く専門職の人たちと綿密にコミュニケーションを取らなければならない
- 人前に出てプレゼンテーションをするなど話し手としての振る舞いも求められる
ゲームプランナーを目指したいという人はゲームが好きという理由だけで選ぶのではなく、しっかりと業務内容吟味する必要があるでしょう。
まとめ:「企画職=創造と調整のプロ」から学べる働き方のヒント
ゲームプランナーという職種は、単なる「ゲーム好き」では務まりません。
限られた時間や予算、そして多様な職種の人々との連携の中で、常に最適解を見つけ続ける力が求められます。
ゲームプランナーは、「遊び」というあいまいで自由な世界に、ルールや体験を与え、形にしていく仕事です。アイデアを形にする力、他者と協力して作り上げる力、そしてなによりも「面白い」を追い続ける情熱が必要です。
競争も激しく、変化の速い世界ですが、だからこそ、自分だけの発想や知識を活かせる魅力があります。「面白い!」を生み出し続けたいというあなたには、きっとぴったりの職業かもしれません。
科学的な知見に基づけば、自分の強みを活かし、仲間と協力しながら達成感を得られる環境こそが、幸福で生産的な職場の本質です。
ゲームプランナーの仕事からは、その一つの実例を読み取ることができました。
私たちがどんな業界で働いていようとも、自分の仕事に創造性を持ち込み、周囲と共に成果を作り出していく力こそが、これからの働き方において重要なのかもしれません。
参考文献
![]() | フレーベル館 発売日 : 2018-11-01 |
- ゲームプランナーになるには?未経験でもOK?必要なスキルや仕事内容をご紹介(ゲームのお仕事メディア)
- ゲームプランナーになるには?年収や必要なスキル、資格も解説(レバテックキャリア)
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