自分だけしんどい…。バーンアウトになりやすい人の性格が判明

精神力

「なんで私は、こんなにしんどいんだろう?」

人と関わる仕事を目指している人、すでに始めたばかりの人の中には、そんなふうに感じている人も多いかもしれません。

実は、性格によって 「バーンアウト(=心が燃え尽きてしまう状態)」になりやすい人がいることがわかっています。今回は、あなたの性格に合わせた心のすり減りの防ぎ方を解説します。

  • バーンアウトしやすい性格をコンパクトに表で把握!
  • バーンアウトに関連する性格を簡易的に診断!
  • 自分の性格に合った心のすり減りの対策を実践!

 

バーンアウト(=燃え尽き症候群)ってなに?

「バーンアウト」は燃え尽き症候群のことです。燃え尽き症候群とは、がんばりすぎた人が心や体のエネルギーを使い果たしてしまい、やる気が出なくなったり、人に冷たくなったり、自分に自信が持てなくなったりする状態です。

バーンアウトは、もともと看護師やカウンセラーなど、ストレスが多い仕事をや不規則な仕事に多く見られることで知られています。

 

バーンアウトは、大きく次の3つの要素に分けて考えられています。

  1. 情緒的消耗:「もうムリ…」と感じるほど心がヘトヘトで、元気もやる気も出なくなること。
  2. 脱人格化:まわりの人に優しくできず、冷たく、無関心になってしまうこと。
  3. 達成感の低下:自分はうまくやれていないと感じ、仕事へのやりがいを失うこと。

 

2009年に発表されたライト州立大学の研究では、バーンアウト(燃え尽き症候群)と性格の関係を調べました。そして、情緒安定性(=気持ちが安定しているか)や外向性(=人と話すのが好きで活発)、ポジティブさなどの性格を持っているとバーンアウトになりづらいことが示されました。

https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/02678370903282600

 

内容

バーンアウトの原因として性格がどのように関係しているかを調べた。具体的には、バーンアウトの3つの側面(情緒的消耗・脱人格化・達成感の低下)と、多様な性格特性との関連を分析した。

 

結果

性格とバーンアウトの三つの特徴との関連性は以下の表のようになった。

性格 情緒的消耗感 脱人格化 達成感の低下
自尊心
自己効力感
内部統制
情緒安定性
外向性
勤勉性
協調性
開放性
ポジティブ感情

ネガティブ感情
楽観主義
積極性
ハーディネス

タイプA
※表の見方について
  • 「負」はその性格が高いほど、バーンアウトが起こりにくいことを示します。(例:自尊心が高いほど情緒的消耗感が起きにくい)
  • 「正」はその性格が高いほど、バーンアウトが起こりやすいことを示します。(例:ネガティブ感情が高いほど情緒的消耗感が起きやすい)
  • 「ー」はその性格が高くても低くても影響しなかったことを示します。
  • 太字は特に強く関係していたところです。(例:情緒安定性が高いほど情緒的消耗間および脱人格化がとても起こりにくい)

 

ざっくりと傾向をまとめると以下のようになります。
  • 自己効力感・情緒安定性・外向性・協調性・勤勉性・ポジティブ感情・ハーディネスを持つ人は、全体的にバーンアウトににくかった。ネガティブ感情を持つ人は、バーンアウトになりやすかった。

 

より具体的な傾向は以下のようになりました。

  • 情緒安定性(=気持ちが安定しているか)が高い人ほど、情緒的消耗感(=気持ちの疲れ)、脱人格化(=周りの人への無関心)が少なかった。
  • 外向性(=人と話すのが好きで活発)や自己効力感(=自分ならうまくやれると思う気持ち)を持つ人ほど、達成感の低下(=やりがいを失う)が少なかった。
  • 協調性(=人と協力するのが得意)が高い人は脱人格化が少なかった。
  • ポジティブ感情(=うれしい楽しいを感じやすい)ハーディネス(=ストレスに強い性格)を持つ人は、バーンアウトの3つの要素すべてが少なかった。
  • ネガティブ感情(=不安、怒り、悲しみを感じやすい)を持つ人は、バーンアウトの3つの要素すべてが起きやすかった
  • タイプAパーソナリティ(=短気で攻撃的な性格)を持つ人は、達成感の低下が少なかったが、他の要素とは関係がなかった。
  • ただし、バーンアウトの評価方法(より一般的な人向けor援助職向けか)によって、性格との関連の強さに違いがあった。
 
考察

研究のポイントをまとめると以下のようになります。

  • 情緒安定性やポジティブ感情など感情に関わる性格は、バーンアウトの中でも特に情緒的消耗感(=気持ちの疲れ)に強い影響を与えると考えられる。
  • 外向性や自己効力感は「自分ならできる」という感覚を強く持つため、達成感の維持につながる。
  • ハーディネスは、ストレスを脅威ではなく課題として受け止め、前向きに対処できる性格であるため、バーンアウト全体を予防する力があると示された。
  • タイプAパーソナリティは怒りや苛立ちが多いため、情緒的消耗感(=気持ちの疲れ)や脱人格化(=周りの人への無関心)が多くなりそうなものだが、研究結果では関連がなかった。

 

 

【実践①】自分の「バーンアウトしやすさ」を知ろう

ステップ1:かんたんな性格チェックをしてみよう

まずは「自分がバーンアウト(=心がすり減るように疲れきってしまう状態)しやすいかどうか」を、いくつかの質問でチェックしてみましょう。

 

自尊心(=自分には価値があると思える力)
  • 自分には、人の役に立てる価値があると思う
  • 「自分はダメな人間だ」と感じることが少ない

 

自尊心が高い人は情緒的消耗感・脱人格化・達成感の低下をやや起こしにくいです。逆に低い人は以下の傾向が見られます。

  • 同僚が褒められているのを聞いて、「自分なんて全然ダメだ…」と落ち込んでしまった。
  • 小さなミスをしただけで、「私なんかがこの仕事してていいのかな」と考えてしまう。

 

自己効力感(=自分ならうまくやれると思う気持ち)
  • 新しいことに挑戦するとき、「なんとかなる」と思える
  • 困難な状況でも「自分なら乗りこえられる」と感じやすい

自己効力感が高い人は特に達成感の低下を起こしにくいです。逆に低い人は以下の傾向が見られます。

  • 新しい業務を任されても「どうせ自分には無理」とすぐに不安になる。
  • 話し合いの場で意見を求められると、「正解を言わなきゃ」と緊張して何も言えなくなる。

 

情緒安定性(=心の落ち着きやストレスへの強さ)
  • イライラや不安があっても、自分で気持ちを落ち着けられる
  • 小さなことで落ち込まず、気持ちを引きずりにくい

情緒安定性が高い人は特に情緒的消耗感を起こしにくいです。逆に低い人は以下の傾向が見られます。

  • 注意されたあと、一日中そのことが頭から離れず落ち込んでしまった。
  • ちょっとしたトラブルでも過剰に焦ってしまい、冷静に考えられなくなる。

 

内的統制の所在(=自分の人生は自分がコントロールできるという考え)
  • 今の自分の状態は、自分の選択で変えられると思っている
  • うまくいかなかったとき、運や他人ではなく自分の行動を見直す

内的統制の所在が高い人は情緒的消耗感・脱人格化・達成感の低下をやや起こしにくいです。逆に低い人は以下の傾向が見られます。

  • 「うまくいかないのは職場のせい」「周りの人が悪い」と感じることが多い。
  • 何かを変えたいと思っても、「自分がやっても意味がない」とあきらめてしまう。

 

外向性(=人と話すのが好きで活発)
  • 人と話すと元気になる/楽しく感じる
  • グループや会話の輪に入ることに抵抗が少ない

外向性が高い人は特に情緒的消耗感・達成感の低下を起こしにくいです。

 

勤勉性(=きっちり計画建てて動く)
  • 一日のやることをだいたい決めてから動く
  • 期限がある課題は、コツコツ取り組む方だ

勤勉性が高い人は特に達成感の低下を起こしにくいです。

 

協調性(=人と協力するのが得意)
  • 人と協力することにストレスを感じにくい
  • 周りの人の意見を聞いて、うまく調整できることが多い

協調性が高い人は特に脱人格化を起こしにくいです。

 

ポジティブ感情(=うれしい・楽しいを感じやすい)
  • 小さなことでも「うれしい」と思えることがある
  • 仕事や実習の中でも「やってよかった」と思える場面がある

ポジティブ感情が高い人は情緒的消耗感・脱人格化・達成感の低下を特に起こしにくいです。逆に低い人は以下の傾向が見られます。

  • 周りが盛り上がっていても、「どうせ私は関係ない」と心が冷めてしまう。
  • 何かを達成しても、「でもこれぐらいできて当たり前だよね」と素直に喜べない。

 

楽観主義(=将来はよくなると思えるか)
  • 悪いことがあっても「きっとよくなる」と思える
  • 将来について、楽しみに思うことがある

楽観主義が高い人は情緒的消耗感・脱人格化・達成感の低下をやや起こしにくいです。逆に低い人は以下の傾向が見られます。

  • 少しミスしただけで、「これから先もうまくいかない気がする…」と悲観してしまう。
  • うまくいっている時でも「どうせそのうち失敗する」とどこかで不安を感じている。

 

積極性(=自分から行動するタイプ)
  • 今の状況に不満があれば、自分で行動して変えようとする
  • 「どうせ無理」とはあまり考えず、「やってみよう」と思える

積極性が高い人は情緒的消耗感・脱人格化・達成感の低下をやや起こしにくいです。逆に低い人は以下の傾向が見られます。

  • 職場で「こうしたほうがいい」と思うことがあっても、言い出せずに終わる。
  • 新しいことにチャレンジする前に、「どうせ変わらないし」とあきらめてしまう。

 

ハーディネス(=ストレスに強い考え方)
  • 失敗やトラブルも「成長のチャンス」と考えることがある
  • 「自分の行動で状況を変えられる」と思いやすい

 

ハーディネスとはストレスに負けにくい性格のことです。次の3つの考え方がそろっています。
  • コントロール感:自分の行動で変えられると思える
  • チャレンジ思考:問題を「ピンチ」ではなく「成長のチャンス」と考える
  • コミットメント:大切に思えること(家族・仲間・仕事など)がある
こうした人はストレスに押しつぶされにくく、バーンアウトにも強いです。ハーディネスが高い人は情緒的消耗感・脱人格化・達成感の低下を特に起こしにくいです。逆に低い人は以下の傾向が見られます。
  • 仕事で問題が起きると、「やっぱり自分には向いてない」と感じてしまう。
  • 落ち込んだとき、好きなことを思い出す余裕がなくなる。

 

ネガティブ感情(=不安・怒り・悲しみを感じやすい)

※これは「当てはまる=バーンアウトの危険」という見方になります。

  • ささいなことで不安になったり、落ち込みやすい
  • 他人の言動が気になってイライラしやすい

 

ネガティブ感情が高い人は情緒的消耗感・脱人格化・達成感の低下を特に起こしやすいです。高い人は以下の傾向が見られます。

  • 職場で無視された気がして、ずっとそのことを考えてしまう。
  • 他人の言葉に過敏に反応して、「嫌われたかも」と考えてしまう。

 

 

ステップ2:自分の性格に合わせてバーンアウト対策を実践しよう

項目を見て、自分が当てはまると思うなら、その性格を強く持っている可能性が高いです。逆に自分があまり当てはまらないと思う性格があるならバーンアウトの原因になりやすいです。ただし、ネガティブ感情については、より当てはまる方がバーンアウトになりやすいので注意してチェックしましょう。

ここからはより自分の性格にマッチした実践を行っていきましょう。

 

【実践②】人に気をつかいすぎる人のための「境界線トレーニング」をしよう!

自尊心が低い人・情緒安定性が低い人・ネガティブ感情が高い人に向いている実践です。

ステップ1:「自分の責任」と「相手の責任」を分けてみる

たとえば、誰かが落ち込んでいるときに「自分が悪かったのかな」とすぐに思っていませんか?

でもその人が落ち込んでいる理由は、あなたのせいじゃないかもしれません。まずは「それ、本当に自分のせい?」と一度立ち止まるクセをつけましょう。

 

ステップ2:「断る」練習をしてみる

無理なお願いをされたとき、いつも「いいよ」と言ってしまう人は、「ちょっと考えさせて」と返してみる練習から始めてみましょう。

自分の時間や気持ちを大切にすることは、わがままではありません。「断る=悪いこと」ではなく、「自分を守る手段」として身につけていきましょう。

 

 

【実践】落ち込んだときの「心のフィルター掃除」をしよう!

自己効力感が低い人・情緒安定性が低い人・ポジティブ感情が低い人・ネガティブ感情が高い人・ハーディネスが低い人に向いているトレーニングです。

ステップ1:最近の「悪かったこと」を書き出す

「あの時うまくできなかった」「また怒られた」など、頭の中にたまっているイヤな記憶を、紙に書いて出してしまいましょう。モヤモヤを「見える化」することで、自分の思考のクセに気づきやすくなります。

 

ステップ2:「でも、よかったこと」も探してみる

失敗のあとにも、がんばったことや助けてもらったことなど、少しでも「よかったこと」があったかもしれません。

たとえば、「○○さんが声をかけてくれた」「最後までやりきれた」など、小さなプラスを見つけるクセをつけていくと、気持ちがすこしずつ前向きになります。

 

 

 

【実践】「がんばりすぎる自分」とうまくつきあう工夫

情緒安定性が低い人・自己効力感が低い人・外向性が低い人・ネガティブ感情が高い人に向いてるトレーニングです。

ステップ1:一日の中で「がんばらない時間」をつくる

 仕事や勉強のスケジュールの中に、「何もしない時間」や「ただボーッとする時間」を5〜10分でもいいので入れてみましょう。それはサボりではなく、こころのエネルギーをためる「給水タイム」です。

 

ステップ2:「できたことリスト」をつける

その日やったことを3つだけ書き出してみましょう。

たとえば、「朝ちゃんと起きられた」「資料の提出を忘れなかった」「苦手な人と話せた」など、小さなことで大丈夫です。「今日も自分はちゃんと動いてる」と確認するだけで、がんばりすぎによる落ち込みを防げます。

 

【まとめ】

自分の性格や考え方のクセを知ることは、心を守る第一歩になります。

たとえば、「私はこういうときに疲れやすいんだな」「この考え方はちょっと自分を苦しめてるかも」と気づけたら、それだけで前よりずっとラクに過ごせるはず。

現場や仕事で悩んでいる人も、まだこれからという人も。「心の限界」を知ることは、長く働き続けるための一番の武器になります。

今日から、ほんの少しだけ「自分を守る練習」、始めてみませんか。

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