今回は子どもの不登校にアプローチしたい親御さんに向けた内容です。
- 夜は元気だったのに、朝になると「お腹が痛い」「気持ち悪い」と言い出す。
- 何がつらいのか知りたいのに、「分からない」「行きたくない」しか返ってこない。どう助けたらいいのか分からず、親として無力感を感じる。
- 勉強、進学、社会に出ることなど先のことばかり考えて眠れなくなる。
不登校に対しては、うつ病の改善などにも使われる「認知行動療法」という心理療法が有効であるとわかっています。心理療法というと大げさに感じてしまいますが、親子だけでもできるワークなので取り組んでみましょう。
親子で取り組もう!不登校への認知行動療法
1998年にモナシュ大学などの研究者たちが発表した論文によると、不登校に対して認知行動療法が効果的だと示されています。
認知行動療法とは、偏った考え方に注目する心理療法
- 認知:頭の中に浮かぶ考え。
- 感情:感じる気持ち。
- 身体:体の反応。
- 行動:振る舞い。
偏りの例:
例えば、「休み時間に話そうと思っていた友だちが、別の子と話していた」という出来事について考えてみます。
- 認知(偏り):「話しかけられなかったからもう友だちじゃない」「一人になったから自分は孤立している」
- 感情:寂しさ、落ち込み
- 身体:体が重くなる、動きたくなくなる
- 行動:一人で過ごす、誰にも話しかけない、学校がつらくなる
認知行動療法では認知と行動にアプローチします。ストレス反応の四つの側面において、認知と行動はコントロールしやすいからです。特に、同じ出来事(ストレス源)に対しても認知が変わることによって、その感情や身体反応は変わりやすいです。
認知行動療法による修正の例:
- 認知(修正後):「今は別の子と話しているだけかもしれない」
「あとで話すチャンスはある」
「話せなかった=友だちじゃない、とは限らない」 - 感情:少し寂しいが、落ち込みは弱い。不安はあるが耐えられる程度
- 身体:重さはあるが、動けないほどではない
- 行動:少し離れたところで待つ。授業の後や別の休み時間に声をかけてみる。
88%の生徒が登校できるようになった!不登校のための認知行動療法
認知行動療法の概要を掴んだところで、研究の内容を見ていきましょう。

内容
34人の不登校や登校困難の生徒(5~15歳)を対象。生徒やその保護者たちに向けて、4週間の認知行動療法プログラムを行ってもらった。その際、生徒をランダムに2つのグループに分けて比較。
- 認知行動療法を受ける介入グループ
- 何も受けない対照グループ(倫理的な問題点への対処として、介入群の実験が終わった後に同じ介入を受けてもらった)
なお、認知行動療法後の評価は、介入終了後の2週間以内に行われ、さらに12週間後に追跡調査が行われた。
子どもたちについて調べた指標は以下の通り。
- 学校への出席率
- 子どもの自己申告による感情的な不快感
- 学校の状況に対する自己効力(学校で不安を感じる状況に対して、「自分には対処する能力がある」と感じるかどうか)
- 親による評価
- 教師による評価
- 臨床医による評価
結果
- 対照グループと比べて、認知行動療法を受けた生徒は出席率の改善が見られた。また、治療前と治療後を比べても出席率の改善が見られた。
- 治療後の評価では、88.23%の生徒が90%以上の出席率を示していた。
- 対照グループと比べて、自己申告による恐怖や不安、抑うつが改善し、自己効力感が上がっていた。
- 対照グループと比べて、親や教師、臨床医による評価でも改善が見られた。
- また、3か月後の追跡調査でも改善効果を維持していた。
- 追跡調査では、82.35%の生徒が90%以上の出席率を示していた。
まとめ・考察
研究のポイントを簡単にまとめると以下のようになります。
- 認知行動療法による不登校へのアプローチは出席率の改善に効果的と言える。
- 学校に対する恐怖や不安などネガティブな感情が減少する。
- 学校内で不安を引き起こす状況に対し、「自分なら対処できる!」という自信を育てることができる。
なお、認知行動療法プログラムには、子どもに対する認知行動療法だけでなく、親や教師に対する子どもの行動のマネジメントスキルに関するトレーニングが含まれていました。
研究チームの考察でも、子どもと保護者どちらか一方ではなく、子どもと保護者両方に対して働きかけたのが成功要因だったと分析されています。実際に別の研究でも、子どもの不安障害に対して親の介入が治療の効果を高めることが示されているそうです。
【実践】不登校に対する認知行動療法を実践してみよう!
この記事を子どもと一緒に読んで、実践してみましょう。
おすすめの習慣プラン
- 学校が辛いなと思ったら→「今、頭に浮かんでいる考えは何?」と自問してみる。(例:「教室に入ったら変に思われる」という認知に気づく)
- 「なんで最近来なかったの?」と聞かれることを想像して嫌になったら→自己主張フレーズを1つ考えて、そのシチュエーションを想像する(例:「体調のことで休んでただけだよ」と言う)
- 寝る前に不安が強まったら→ゆっくり息を吐く深呼吸をして落ち着く。
研究において、認知行動療法を受ける子どもは、以下のようなセッションを受けました。子どもが登校困難やそれに伴う不安を乗り越えることを助ける内容になっています。
- 学校において何が不安なのかを具体的に特定する
- 特定した不安への対処スキルを増やす
- 不安のサインに応じたリラクゼーション
- セルフトークのトレーニング
- 自己主張スキルのトレーニング
- 想像上でのトレーニング
- 段階を踏んだ実際のトレーニング
ステップ1:学校において何が不安なのかを具体的に特定する
研究で行われた認知行動療法プログラムでは、まず学校において不安が呼び覚まされるシチュエーションを特定しました。ここでは、「学校が不安」という曖昧なレベルではなく、できるだけ細かく分解して捉えることが重要です。
例:不安な状況の特定
- 朝、家を出る直前
- 学校の門をくぐる瞬間
- 教室に入ったとき、みんなの視線を感じる
- 先生に当てられそうな雰囲気になったとき
例:不安な状況を「認知」「感情」「身体」「行動」で掘り下げ
- 状況:家を出るとき、教室に入ったらみんなに見られる光景を想像してしまう
- 認知:「みんな僕のことを変だと思って見ている」「昨日休んだから、悪く思われているに違いない」
- 身体:胃がキリキリする、心臓がドキドキする
- 行動:行きたくなくなって布団に戻る
親と離れることや学校内でからかわれるといったシチュエーションに対して、具体的にどのように対処するかを考えていきます。リラクゼーション・セルフトーク・自己主張スキルの3つです。
ステップ2:不安のサインに応じたリラクゼーション
「不安が出始めたサインに気づいたらこれをする」というリラックスのルーティンを作っておくスキルです。
例:
- 胃がキリキリし始めたら、ゆっくり息を吐く
- 手をぎゅっと握ってからゆるめる
- 心の中で決まった合言葉を言う
ステップ3:セルフトークのトレーニング
セルフトークとは心の声のことです。不安な場面で自動的に言っている心の声を取り出すことから始め、不安を強めてしまうセルフトークと不安を減らすセルフトークの違いについて学びます。
不安を強めるセルフトークの例:
- 「絶対失敗する」
- 「みんな笑うに決まってる」
- 「逃げないと大変なことになる」
不安を下げるセルフトークの例:
- 「ドキドキしても大丈夫」
- 「みんなは自分のことをそんなに見ていないかも」
- 「5分だけ教室にいればいい」
ステップ4:自己主張スキルのトレーニング
からかわれたり、困ったときにどう振る舞うかも練習します。言葉だけでなく、声の大きさ、目線、姿勢など非言語的な部分も含めて扱うのがポイントです。
例:
- 嫌なことをされたときに「やめて」と言う
- 先生に「今は答えられません」と伝える
- 助けを求める視線や姿勢をとる
ステップ5:想像上でのトレーニング
考えた不安に対処する3つのスキルを、実際の場面で使う準備をしていきます。子どもたちは想像上と現実において、不安を想起させるシチュエーションでこれらのスキルを実際に使ってみるように求められた。
例
- 教室に入る場面を目を閉じて思い浮かべる
- そのときに呼吸やセルフトークを使う
ステップ6:段階を踏んだ実際のトレーニング
想像上のトレーニングで慣れてきたら実際の場でスキルを活用していきます。研究で扱われたプログラムでは、不登校の子どもたちに段階的に出席をするように求められました。例えば、最初は一コマの授業だけから、次に半日までといったように出席を伸ばしていきました。
例:
- 校門まで行く
- 1コマだけ教室に入る
- 午前中だけ過ごす
- 半日登校
- 通常登校
まとめ
- 不登校の背景には、不安や恐怖を強めてしまう「偏った認知」と、それに伴う回避行動がある。
- 認知行動療法は、認知と行動に働きかけることで、感情や身体反応を和らげる実践的な方法である。
- 研究では、子どもへの認知行動療法と親・教師の関わりを組み合わせることで、高い登校改善効果が示された。
不登校への対応は、「無理に行かせる」か「何もしない」かの二択ではありません。
子どもの感じている不安を具体的に理解し、小さな成功体験を積み重ねていくことが回復への道になります。

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