時間差のある死に方の描写

ミステリーでは「自殺や事故だと思われていたけど殺人だった」というオチは定番です。

逆に、「殺人だと思ったけど事故死だった」いうオチもあります。

例えば、「殺人だと思ったけど本当は3日前に遭遇した事故が原因の死だった」なんてパターンです。

「自分が殺したと思って証拠隠滅のために死体を埋めた」となると、殺人は成立せずに死体遺棄だけになります。「勘違いしなければ罪を犯すこともなかったのに」という切ない描写にすることもできるでしょう。

死のタイミングに時間差が生じる紛らわしい事故死としては、「ハンドル損傷」が挙げられます。

ハンドル損傷で時間差のある死を遂げる描写

今回解説するのはハンドル損傷による腹膜炎です。

腹膜炎とは細菌が腸や腹膜に繁殖している状態です。腹の中で細菌が広がってしまうと死亡するケースがあります。

所見は腹の中に黄色く濁って液体が溜まっている状態になります。

腸に穴が開いていて腸の中が漏れ出してしまうと腹膜炎になります。

ただし小腸に穴が開いてもすぐに症状が出るわけではありません。

小さな穴から腸内の内容物が少しずつ腹腔に漏れ出していき、三日間ぐらいかけて広がり死に至ります。

時間差のある死に方になってしまうため、「なぜ死亡したのか」が一見分かりません。まさにミステリーでも使えそうなネタですね。

腸に穴が開く原因は胸や腹に何か強い力が加わることです。

腸は腹の中で固定されておらず、自由に位置を変えることができます。

ですからお腹を圧迫されたりしても、ニュルっと移動するため穴は開きにくい臓器です。

ただし小腸すべてが宙ぶらりんなわけではありません。小腸が始まろうとしている箇所は固定されているので、圧迫されると穴が開きやすいところです。

この場所に何か強い力が加わると小腸に穴が開くことがあります。

例えばハンドル損傷です。ハンドル損傷とは交通事故を起こしたときにハンドルに胸やお腹を打ち付けることで起きます。

その際に小腸に穴が開くケースがあります。打ち付けた直後は平気ですが、腹膜炎に侵され後日死に至るというわけです。