【クリティカルシンキング入門】情報に惑わされなくなる2つのテクニック

学び方を学ぶコース
この記事はこんな方にオススメ
  • ベストセラーの本などに影響されることが多い
  • 周りの人の意見や有名な人の言うことを信じ込んでしまう

 

今回は売れている本に書いてあることや有名人が入っていることをだからといって正しいとは限らないぞ~というお話です。

クリティカルシンキングが大事

様々な情報が飛び交う現代ではクリティカルシンキング(=批判的思考)が重要になります。クリティカルシンキングとは与えられた情報を信じ込むのではなく「本当に根拠はあるのか?」と問いただしてみることです。

 

クリティカルシンカーの第一歩として今回マスターしてほしいことは相手の「主張」と「根拠」を切り分けることです。

 

その情報の「エッセンス」は何?主張と根拠を切り分ける

クリティカルシンキングに欠ける人は自分の判断に自信を持つこともできなくなります。

例えば、世の中に出回る勉強法に関する情報もそうです。「~~勉強法」「~~読書術」といった本はたくさんありますが、なかには反対のことを言っているものも多いです。情報を批判的に吟味しないと「結局どの方法を信じればいいの?」と迷走してしまうことになります

 

 

そんなときこそクリティカルシンキングです。著者の主張と根拠を明確にすることで本当に重要な部分(=エッセンス)を抽出することができます

 

例えば、ベストセラーとなった書籍「スマホ脳」という本の内容を少し要約してみます。

この本の著者は勉強する時にデジタルデバイスを持ち込むことを否定しアナログ的な方法を推奨しています。その根拠としてデジタル性健忘についての研究について取り上げられています。

 

根拠となる研究

その研究では被験者に対してある音声を聞かせてノートパソコンでメモを取ってもらうという課題を行わせました。その際被験者を二つのグループに分けていて、

  1. 片方の被験者には「データが残る」と伝え、
  2. 片方の被験者には「データが消去される」と伝えました

その結果、「データが消去される」と伝えられた被験者の方が同じ文章を書いたにも関わらず記憶に残りやすかったというもの。理由としては、デジタルの媒体にデータが残ると考えるだけで脳が労力を節約しようとして記憶に残りづらくなるからだと考えられています。

 

 

 

ここで著者の主張と根拠を整理すると以下のようになります。

  • 筆者の主張:「デジタルデバイスを使うべきではない」
  • その根拠:デジタル性健忘に関する研究。「覚えなくてもデータに残る」と思うだけで脳が記憶をサボるようになるから

 

筆者の主張だけを汲み取れば「あぁ、デジタルのアプリを使った勉強法はよくないのか~」と解釈してしまいそうです。しかしベストセラーの本に書いてあるからといって今すぐスマホのメモアプリをアンインストールしなければならないというわけではありません。クリティカルシンキングを働かせて筆者の主張を検証してみましょう。

 

筆者の主張を裏付ける根拠として紹介されている研究を見てみます。研究で示されている内容はあくまで データとして詳細に残っている場合人間は自分の頭で覚えようとしなくなるということです。研究自体がデジタルデバイスを否定しているわけではありません。

たとえアナログ的な方法であっても教科書を丸写しするようなノートまとめだと、同じように脳が記憶をサボるのではないか?と考えることもできます。逆にデジタルの方法であっても、要点だけをピックアップして詳細は自分の頭で覚えるという勉強法を取れば デジタル性健忘は防げるかもしれません。

 

 

 

クリティカルシンキングのプロセスをまとめるとこんな感じ。↓

  • 筆者の主張:「デジタルデバイスを使うべきではない」
  • その根拠:デジタル性健忘に関する研究。「覚えなくてもデータに残る」と思うだけで脳が記憶をサボるようになるから
  • クリティカルシンキング:ようするに「覚えなくても情報が残る」と思ってしまうのが問題なんだな。だったらデジタルが一概にダメというわけではないのでは?

 

情報の解釈は人それぞれです。「この主張はどういった情報が根拠となっているのかな?」「著者はどんなふうに解釈しているのかな?」と考える癖をつけましょう。主張と根拠を切り分けられるようになると必要以上に 情報に惑わされることがなくなります

 

その根拠は本当に正しい?因果関係と相関関係を切り分ける

人間は数字や権力に弱いです。「~~大学の教授によると~」「最新の研究によると~」「調査で~~%改善」といった言葉を見ると信頼できる情報だと信じ込んでしまいます。

そこでクリティカルシンキングを働かせて根拠として挙げられている情報の正当性に関しても調べてみましょう。

 

 

根拠の正当性を調べるときのコツは因果関係と相関関係を分けて考えることです。例えば 「AI 分析でわかったトップ5%の社員の習慣」という本を例題にしてみます。この書籍のなかで主張されている「言葉遣いを変えることで相手に行動を促すことができる」を検証してみましょう。

まずはクリティカルシンキングのセオリー通り「この本の内容に裏づけはあるの?」と根拠を探ってみます。↓

クライアント企業25社にご協力いただき、「5%社員」と、そうではない95%の一般社員の働き方をリサーチしてきました。サンプル数は、「5%社員」とそれ以外の社員約9000名、計1万8000名です。 (中略)対象となる「5%社員」には、いつもどおりの行動をお願いして、デスクに定点カメラを設置したり、ICレコーダーやセンサーを装着してもらったり、クラウドサービスや対面ヒアリングなどを通じて行動や発言を記録したりしました。 それ以外にも個人を特定しない形でメールの内容を分析したり、チャットやオンライン会議などの利用履歴も集めました。 これらのデータをAIと専門家によって分析して、「5%社員」の共通点や、95%の一般社員との違いを抽出したのです。

※「AI分析で分かったトップ5%の習慣」『はじめに』から抜粋

↑何やら大規模な調査が行われているようです。直感的には信頼できそうな情報な気がします。次に今回ピックアップした「言葉遣いを変えることで相手に行動を促すことができる」という主張の裏づけを見てみます。

今回の調査では、ICレコーダーなどを使って発言内容を一定期間録音しました。 その音声データをAIで文字に変換して分析しました。すると、AIが面白い気づきを教えてくれました。 「5%社員」はダ行を使って話す頻度が少ないのです。 ダ行の言葉とは、「だけど」「でも」「ですから」「どうしても」などです。 一見しただけでも、あまり気持ちのいい言葉ではありません。ダ行は断定しているように聞こえるため、聞き手にとって耳障りが悪く、言い訳に聞こえてしまうのです。

※「AI分析で分かったトップ5%の習慣」第3章『トップ「5%社員」の強いチームをつくる発言』から抜粋

 

 

 

内容を整理してみます。

  1. 主張:「言葉遣いを変えることで相手に気持ちよく動いてもらうことができる。ダ行は使わないようにしよう!」
  2. 主張の根拠:AI分析によると成果を出しているトップ5%の社員はダ行を使って話す頻度が少ない

 

素直に捉えれば「そうなのかぁ。今日から言葉遣いを気をつけるようにしよう」と考えるでしょう。もちろんそれは自由です。しかし、「ダ行の言葉を控えることでいきなり評価が上がったり、平凡な社員が 業績が上がる」と本当に言えるでしょうか?

 

 

ここでクリティカルシンキング。「ダ行を使わないこと」と「周りからの評価」が因果関係なのか相関関係なのかというところに注目する必要があります。

 

  • 因果関係:「~~することによって○○が起きる」という原因と結果の関係が明確な関係性
  • 相関関係:「~~するほど○○も起きやすい」というたまたま一緒に起きていることを示す関係性

「ダ行を使わないこと」と「周りからの評価」に関しては後者の相関関係に過ぎないかもしれません。相関関係にはたいてい隠れた真の要因が存在しています。例えば、ダ行を使わない人は語彙力がそもそも豊富で、それが業績や評価に関係しているのかもしれません。つまり評価に関与しているのは全般的な教養であって小手先の言葉遣いではないという可能性もあります。教養のない平凡な社員がダ行を控えるだけで評価アップできるとは限らないのです。

 

 

クリティカルシンキングのプロセスをまとめるとこんな感じ。↓

  1. 主張:「言葉遣いを変えることで相手に気持ちよく動いてもらうことができる。ダ行は使わないようにしよう!」
  2. 主張の根拠:AI分析によると成果を出しているトップ5%の社員はダ行を使って話す頻度が少ない
  3. クリティカルシンキング:周りからの評価が高いことの理由が「ダ行を使わないこと」だとは限らないのでは?

 

 

ですので、「信頼できそうだ!」と飛びついてしまいそうなときこそ、クリティカルシンキングを働かせ「この根拠は因果関係を証明するもの?それとも相関関係に過ぎないのか?」と吟味することが大事です。

 

まとめ

ということで今回はクリティカルシンキング入門のお話でした。これから先注意して欲しいことをまとめておきます。

  1. 筆者やコメンテーターの主張と根拠を切り分けて考える
  2. 根拠に関しては因果関係なのか相関関係なのかを考える

以上!

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