最古のクジラから地球最大の生物へ!進化の歴史
クジラで有名なのはやはり「シロナガスクジラ」でしょう。地球で最大のせいぶつです。シロナガスクジラは「ヒゲクジラ類」に属しています。ヒゲクジラ類は口のなかにヒゲ板というものがあり、プランクトンを濾過して食べる「濾過食」という独自の武器があります。
今の濾過食にたどり着くまでには、長い歴史がありました。
水中にも入っていたオオカミっぽい哺乳類「パキケトゥス」
クジラの歴史は最古のクジラの仲間である「パキケトゥス」から始まります。パキケトゥスは最古のクジラと言えど、足ヒレではなく陸を歩く四肢がありました。フォルムとしては狼の体に、ワニみたいな頭がくっついているというイメージです。
クジラからはかけ離れた姿ですが、一応水のなかにも入っていたようです。パキケトゥスが水中でも活動していたことを示す証拠がいくつかあります。
1つは目の位置です。ワニと同じように高い位置に目があるのです。
高い位置に目があると、水面から顔を出したときに目と鼻が一直線に揃います。呼吸を確保しながら水中で周りの様子をうかがうことに適しているのです。
また、パキケトゥスの耳は水中で音を拾うことに適していたそうです。水の中からで陸上の天敵や獲物にも反応できたことでしょう。
パキケトゥスは普段は河川の近くを歩き回りながら、川にも入る生活をしていたとされています。
さらに後の時代で「アンブロケトゥス」が登場します。アンブロケトゥスは狼のようにスマートな四肢を持ったパキケトゥスよりも、ガッチリとした印象を受けます。「毛が生えているワニ」といった印象です。
アンブロケトゥスも半水棲の生活スタイルだったようですが、パキケトゥスとは違い海に進出していました。
クジラの直接の祖先!?「ドルドン」
さらにさらに後の時代では「ドルドン」が登場します。ドルトンは前足のみがヒレ、後ろ足は短くなっています。段々とクジラのフォルムに近づいてきました。
しかし、ドルトンまではまだヒゲクジラ類のように濾過食を搭載していません。きちんとした歯があることから普通に生物を捕食していたと分かります。
進化の最後のピースは「地理」だった
古来のクジラのなかまが濾過食を手に入れるカギは、南極大陸の孤立にありました。
昔は地球の大陸がすべてつながっており、「超大陸パンゲア」と名付けられているのはご存知でしょうか?学校の地理の時間に習いましたよね。
パンゲアは次第に分裂して、今の大陸の配置になるわけですが、最後までつながっていたのがオーストラリア大陸と南極大陸です。
オーストラリア大陸と南極対立が分裂してからはお互いが孤立した島になりました。特に南極大陸はオーストラリア大陸のように近くを囲む小さな島もなく、完全に孤立しています。
さて、こっからが面白いところですよ~
完全に孤立している南極大陸には、周りをきれいに一周する海流が生じます。これは「南極周回流」と呼ばれます。
普通なら地球上の多くの海流は複数の気候帯をまたがっています。例えば日本の周りには黒潮が流れていますよね。黒潮は東シナ海からの低緯度の温かい空気を、高緯度に運んでくれます。
- しかし、南極周回流は南極の周りだけを流れますから、温度の低い海流がグルグルと回り続け、水温はどんどん低下していきます。
- 水温が低下していくと氷になります。海水が氷になる際には海水に含まれる塩分は外にはじき出されます。すると南極近くの海水は塩分濃度が高くなるのです。
- 塩分を多く含む海水は通常の海水よりも重いので、海水は下に沈んでいきます。すると下方向への循環が始まり海底に向かっていくわけです。
- 海底にはプランクトンの死骸などが大量に沈んでいます。海水が沈み込むことによって、海底の死骸を巻き上げます。
- するとプランクトンのエサが豊富になり、プランクトンが大繁殖します。
さて、もう分かりましたね。プランクトンが大繁殖するということは、プランクトンを効率的に食べることができれば生態系で優位に立てるということです。
タイミングよく海での生活に適応し、「ヒゲ板」を持ち始めたクジラの祖先はプランクトンを濾過して食べる捕食方法で大成功します。
まとめると、クジラはパキケトゥスの時代に水中に適応、アンブロケトゥスの時代に海水に適応、ドルトンの時代に前ヒレを手に入れ、ついにヒゲクジラとして濾過食を手に入れ、タイミングよくプランクトンが大繁殖したので、海の覇者になれたわけです。
【知識の連鎖】古生物を通して苦手な地理にも興味を持てた
僕は小学校の頃から、社会があまり好きではなかったですし、高校のときの地理も好きではありませんでした。
ですが、今回クジラの進化の歴史を勉強してみると、古生物の進化に地理が大きな影響を与えていることを知りました。同時に「地理って面白いな!」「ちょっと勉強してみようかな」という気になっています。
学校以外の学問を学んで何が悪い!
ここからは教育の話になるので興味がある方だけ読んでください。
精神年齢が若い僕は今になって古生物ブームが再燃していますが、動物と言えばやはり子どもの頃にハマるイメージです。
ですが小学校に上がれば学校の勉強をしなければいけません。それどころか最近は「英才教育だ!」なんて言って、幼稚園からお受験の勉強をさせている家庭だってあります。
でも僕は英才教育には反対です。なぜなら、国語算数の学びは小さいときに遊びのなかで育んだ能力や、好奇心が土台となっているからです。
子どもの頃の純粋な好奇心を放棄して知識を詰め込むのは、土台をつくらずに家を建てるようなものです。
僕が古生物を追いかけていたらいつの間にか地理の勉強もしたくなってしまったように、自分が好きなことを極めれば、学校の知識にも興味が持てるようになるものです。
子供の頃は恐竜、動物、昆虫取り、スポーツなど一見学校の勉強とは関係のないことにハマるかもしれません。しかし、学問はつながっています。何かしらの分野を極めればもっと知りたいという欲求が芽生えるのは自然なことです。
ですから、子供さんが興味のあることをどうか潰さずに好奇心を育んでみてください。
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