脳のエネルギーはボ~っとしているときに一番消費される
寝ても取れない疲労感は「デフォルトモードネットワーク」の過活動によるものです。
デフォルトモードネットワーク(DMN)とは内側前頭前野・後帯状皮質 ・楔前部・ 下頭頂小葉などからなる脳回路です。DMNは意識的な活動をしていない時に活動する領域 で、いわば脳のアイドリング状態を作り出します。
1日のおよそ半分以上はDMNが活動しており、デフォルトモードネットワークのエネルギー消費量は脳全体の消費量の60%から80%を占めます。
つまり、人間はぼーっとしているときにもエネルギーを無駄に使って疲れてしまっているということなのです。ぼーっとしているときには無意識のうちに「今日何食べよっかな?」「まだ仕事が残ってたな、あれやらなきゃな」「明日のプレゼン不安だな」などという雑念が浮かび続け、そのせいで疲弊してしまいます。
雑念を取り除く「マインドフルネス」に取り組もう
マインドフルネスとは現在の感覚に注意を向けることです。
マインドフルネスの種類には姿勢を正して自分の呼吸に集中する呼吸瞑想や、自分の体の動きに集中するムーブメント瞑想や歩行瞑想などがあります。
マインドフルネスで自分の呼吸や動きに集中することによって、精神を研ぎ澄ませ雑念を排除することができます。実際にマインドフルネスを行うことによって、DNNの主要領域である内側前頭前野後帯状皮質の働きを抑えることができると分かっています。
瞑想のやり方(呼吸瞑想)
- 座って背筋を伸ばす
- 息を吸って息を吐くだけ
- 息を吸うときに肺が膨らむ感覚や、息を吐くときに肺が凹む感覚など自分の呼吸に意識を集中させる
たったこれだけです。
座った時に目を閉じても閉じなくてもいいですが、視界に入るものがあると気が散ってしまうという人は目を閉じることをお勧めします。
目を閉じていると眠気が襲ってくるという方は目を開けてやってみましょう。
呼吸する時には自分の肺やお腹が膨らむ感覚、息を吐く時には自分の肺やお腹が凹む感覚に意識を向けましょう。
雑念が湧いてからが大事!
途中で「やり方ってこれで合ってるのかな」とか「明日の課題やってなかったなぁ」などの雑念が湧いてくると思います。
雑念がわいてきたら、再び呼吸に意識を戻すようにします。
瞑想が続かない人は「どうしても気が散ってしまって自分にはできない」 というふうに諦めてしまいますが、これは大きな間違いです。
瞑想する時には気が散ること自体を問題がありません。
むしろ、気が散ったことに気づき呼吸に意識を戻す過程こそが、自己コントロール能力を鍛えてくれます。
脳スキャンで判明!マインドフルネスによって脳が変わる
「マインドフルネスとか瞑想とかって宗教的なアレでしょ?」「なんか胡散臭いな」なんて思っている方も多いでしょう。
しかし実際には多くの研究によってマインドフルネスの有効性が示されているのです。脳スキャンを使った実験では、マインドフルネスに取り組むことによって脳の特定の領域に変化が生じることが分かっています。
ハーバード大学が2011年にマサチューセッツ総合病院で行った調査によると、マインドフルネスが脳の記憶に関する領域に明らかな変化を起こすそうです。
- 被験者を集めてマインドフルネスに関するレッスンを受けてもらう。
- 受講者がマインドフルネス講習を受ける前と受けた後のを脳をMRI でスキャンした
- その結果、受講後の脳では学習や記憶に関する海馬の灰白質が密度が増加していた
マインドフルネスのメリット
マインドフルネスで3倍以上性格がよくなる
マインドフルネスに取り組むことによって他人に親切な行動を確率が約3倍にあがることが分かっています。
ノースウェスタン大学の研究者たちが行った研究では、マインドフルネスが思いやりの行動を増やすことに繋がることを裏付けています。
ボストンから来た39人の被験者を対象にマインドフルネスを学び 生まれて初めて瞑想を行ってもらう実験。参加者のうち20人は先に講習を行い、残りの19人は控えていた
- 最初の20人が8週間のマインドフルネス講習が終わった時点で、実験者が「参加者の記憶力などを図る」と言って全員を実験室に呼び寄せ、ある仕掛けを行う。
- 実験室に入ってきた彼らは待合室で待たされており、そこには三つの椅子 しかなく、二つの椅子には既に人が座っていた。参加者が残っている椅子に座ると、松葉杖をついて 保護ブーツを履いた女性が 部屋に入ってきて辛そうに壁にもたれかかる。
- 被験者の行動を観察したところ、マインドフルネスのコースを受けていなかった人達が椅子を譲ったのは16%だったのに対し、マインドフルネスを受けていた人たちは50%以上が 椅子を譲った 。
つまりマインドフルネスをすることで親切な行動をとる確率が3倍以上上がるということです。
他人と衝突しやすい、誰かから慕われたいという方はぜひマインドフルネスで心の余裕をつくってみてはどうでしょうか。
【獲得経験値】
1日27分のマインドフルネスでストレス解消効果も。
マインドフルネスによってうつ傾向が減らし、メンタルを安定させることもできます。
とある研究では、マインドフルネスに取り組むことによって記憶・自己認識・ストレス・共感などに関係する脳の領域に変化が見られたとのことです。
- 16人の参加者に8週間のマインドフルネスのレッスンに取り組んでもらう実験。また、参加者の脳をレッスンが始まる前・次に受験期間中・次に受講後の3回に分けてMRIでスキャンした
- その結果、1日平均27分のマインドフルネスに取り組んだ被験者たちはストレスレベルが明らかに減った。また、MRIのスキャンによると学習・記憶・自己認識の中枢となる海馬の灰白質の密度が増加していた
デクスター大学がイギリスの中学校で行った研究でも、マインドフルネスによって幸福度と安らかさが上昇したことが分かっています。 12~16歳の生徒達522人を対象にした実験で、9週間のマインドフルネスのコースを受けた子供達は受けなかった生徒よりもうつの傾向が減ったとのこと。
また、マインドフルネスにはうつ病を 抗うつ剤と同じぐらい改善する効果があることも示されています。
オックスフォード大学のチームが行った研究 。長年にわたって薬物治療を受けている重度のうつ病患者を無作為に二つのグループに分ける。
- 一方にはこれまで通り薬物を投与する
- もう一方は薬の投与を止めて 週2時間のマインドフルネス認知療法に切り替える
8週間に及ぶ治療の後、2年間にわたって追跡調査した結果、どちらのグループがうつ病の再発率が高いかを検証したところ両方のグループに差はなかった。
つまり、マインドフルネスには抗うつ剤を飲むのと同じ効果があるということです。
マインドフルネスがここまでメンタルに効くのは、そもそもメンタルを病みやすい人は雑念に振り回されやすい人だからです。
人間が病んでしまう原因は、過去の出来事をうじうじと考え続けてしまうです。マインドフルネスは現在に注意を向けるので、過去を反芻する傾向が減るのだと思われます。
【獲得経験値】
2~5週で集中力アップ
マインドフルネスは注意力を高める効果もあります。
ある会社のスタッフを対象にスケジュール管理などの仕事を20分で管理するように言った実験では、マインドフルネスを週2時間5週にわたり行ったグループは、ただのリラックス法をやったグループより高い集中力を示したという結果が出ています。
また、カリフォルニア大学サンタバーバラ校の心理学者達が行った研究ではマインドフルネスを行うことによって試験の成績を高めることが示されています。
2週間の集中マインドフルネスコースを受講した学部学生を調査したところ、大学院進学適性試験において他の学生よりも良い成績を残したとのこと。
仕事にしろ学業にしろパフォーマンスを高めたいなら、マインドフルネスに取り組んで集中力を高めてみましょう。
【獲得経験値】
マインドフルネスの効果を上げるポイント
自分にあった方法を試す
1つは様々な場面で使うことです。マインドフルネスは呼吸瞑想が一般的ですが、自分の現在の感覚に集中できるなら基本何でもOKです。歩いているときに自分の筋肉の動きに注目するのでもいいし、お皿を洗っているときに手に当たる水の感覚に注目するのでもいいです。
自分がやりやすい方法を探してみてください。
決まった場所・決まった時間で行う
マインドフルネスは決まった場所や決まった時間に行うとさらに効果が高いです。というのも、脳は習慣を好むからです。
例えば勉強や仕事に取り掛かる前に5分行う、お昼休みに10分行う、寝る前に10分行うなど自分のルーティンとして組み込んでみてください。こちら↓の記事で様々なマインドフルネスをまとめています。
僕のオススメは休息モードと集中モードの切り替えスイッチとしてマインドフルネスを使うことです。例えば集中したい時間帯の前にマインドフルネス→集中し終わったらマインドフルネス→休息…という感じで、集中状態に入るときの合図として使ってみてください。集中と休息のメリハリがつきます。
デフォルト・モード・ネットワークが常に悪いわけではない
最後になりますが、デフォルト・モード・ネットワークの活動が悪いわけではないということに注意してください。むしろデフォルト・モード・ネットワークは脳のなかで情報を熟成させ、新たなアイデアを生むために必要です。ですので常に雑念を取り払わなければならないわけではありません。
やはり1日のどこかでマインドフルネスの時間を設けてその時間帯だけ取り組むと決めておくのがいいでしょう。
【今日のクエスト】マインドフルネスに取り組もう
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