今回は人事担当者やマネージャーに向けた内容です。ビッグファイブ性格特性の1つである協調性について解説します。
協調性の高さは人に共感し、慎ましく振る舞うかどうかを左右します。協調性の高さは世間でもてはやされますが、実はビジネスにおいては協調性が低い方が成功しやすいという指摘もあります。重要なのは組織の中に協調性が高い人と低い人がバランスよく存在していることなのです。
ビッグファイブとは?
- 外向性:社交的、活発的かどうか
- 協調性:他人への思いやりや共感力が高いかどうか
- 勤勉性:意志力や責任感が強いかどうか
- 神経症傾向:不安やストレスを感じやすいかどうか
- 経験への開放性:知的好奇心や想像力が高いかどうか
ビッグファイブの特徴は「型」で判断するわけではない点です。MBTIやエニアグラムなどのように「あなたは◯◯タイプ」という判断はしません。例えば、「この人は外向性が高いから外向型」という表現ではなく、「この人は外向性が高く協調性も高く勤勉性は中ぐらい、神経症傾向は中ぐらい、開放性は低い」というように判断します。
協調性の6つの特徴と本質を徹底解説
NEO-PI-Rで示される協調性の6つの特徴
協調性の中にも下位特性(協調性を構成するより細かい特性)があります。
NEO-PI-R(ビッグファイブを本格的に診断できる240項目の診断ツール)の日本語版では、協調性の下位特性は以下のように示されています。
- 信じやすさ:大抵の人は正直で悪気がないものだと信じているか
- 道徳性:他の人と関わるときに、ごまかしたり隠したりせず誠実か
- 利他性:他人のために何かすることを好むか
- 協力性:誰かと対立することを嫌い、上手くやっていくために譲歩したり我慢したりするか
- 謙虚さ:自分が他人よりも優れていると主張したがらないか
- 優しさ:心優しく憐み深く、他の人の痛みに対して同情するか
協調性が高い人の特徴
協調性が高い人は6つの下位特性が全体的に高めです。
- 信じやすい:人を疑わず信じる(例:「きっと悪気はなかったんだよ」とフォローする。)
- 道徳性が高い:倫理観があり、隠しごとが苦手。(例:レジで多くお釣りをもらうと「これ、多くないですか?」とすぐ返す。)
- 利他性が高い:自分よりも他人のことを考え、人間関係を円滑に保つ。(例:困っている人を見ると放っておけず、つい手を貸してしまう。)
- 協力性が高い:チームの調和を保ち、対人トラブルを避けやすい。(例:会議で意見が対立しても、「まあまあ、みんなの意見を取り入れよう」と調整役になる。)
- 謙虚である:謙虚で人の前には出ようとしない。(例:褒められても「いえいえ、私なんてまだまだ」と照れる。)
- 優しい:人に対して共感し、心地よい雰囲気を作る。(例:他人のミスを見ても責めず、「疲れてたのかも」と気遣う。)
協調性の高さは特に日本で重視される要素でしょう。しかし、協調性が高すぎると人を信じやすく、反対することができない一面があります。例えば、人に騙されてしまったり、友人の保証人になって借金を背負ってしまったり、頼まれてお金を貸してしまったりなど、不利益につながる可能性もあります。
協調性が低い人の特徴
逆に協調性が低い人は6つの下位特性が全体的に低めです。
- 信じやすさが低い:だまされにくく、冷静なリスク管理ができる。(例:他人の粗探しをする。)
- 道徳性が低い:競争の中では生き残りやすい。(例:必要ならルールを曲げる。)
- 利他性が低い:自己利益を追求し、他人に振り回されない。(例:同僚に「手伝って」と言われても、「それ、私の仕事じゃないよね?」と返す。)
- 協力性が低い:問題点を鋭く指摘でき、周りに流されない。(例:いつも誰かの言動に突っ込もうとする。)
- 謙虚さが低い:リーダーシップや自信がある。(例:褒められると「そうでしょ?」と素直に受け入れる。)
- 優しさが低い:感情に振り回されず、現実的で冷静。(例:部下が泣いても「泣く時間あるなら改善策を考えよう」)
協調性が低いと人間関係での摩擦は多くなってしまうでしょう。しかし、他人を気にしない独立性の高さはときに有利になります。例えば、多くの人と激しい競争を行い勝ち抜いていかなければならない場面であれば、低いほうが有利になる可能性があります。
協調性による働き方やキャリアの特徴
6つの特性をベースに、働き方やキャリアの積み方の特徴をまとめてみました。協調性を知ることで、部下や同僚がどのように働き、どのようにキャリアを積んでいくかを予測しやすくなります。
協調性が高い人の働き方・キャリアの特徴
- 信じやすさ・道徳性が高い:同僚や顧客を基本的に「善意の人」と考えるため、信頼関係を築きやすい。誠実に対応することで社内外の信頼を得やすい。
- 利他性・協力性が高い:チームのために率先して協力し、調整役やまとめ役に回ることが多い。対立を避けるため、円滑な人間関係づくりで力を発揮する。
- 謙虚さ・優しさが高い:自己主張は控えめだが、周囲のフォローや気配りに長けており、信頼できる「縁の下の力持ち」として評価されやすい。
キャリアの積み方の例を挙げてみます。
- 人事、総務、秘書などサポート職で強みを発揮
- 顧客対応やカスタマーサポートで評価される
- チームワークを重視する企業文化で昇進しやすい
協調性が低い人の働き方・キャリアの特徴
- 信じやすさが低い:人を簡単には信用せず、情報や成果を自分で確かめる傾向。リスク管理や交渉の場面で強みになる。
- 道徳性が低い:必要に応じて駆け引きや戦略的対応をとるため、競争的な環境で成果を出しやすい。
- 利他性・協力性が低い:チームよりも個人の成果を重視。議論や対立をいとわず、イノベーションや改革のきっかけをつくることがある。
- 謙虚さ・優しさが低い:自分の実力を堂々とアピールするため、営業や企画、新規事業など成果が可視化される場で力を発揮。
キャリアの積み方の例を挙げてみます。
- 営業やコンサル、起業など競争的環境で成功しやすい
- 交渉や契約、戦略立案の場で強みを出す
- 成果主義の環境ではスピード昇進する可能性が高い
実際に、ある研究では協調性が低いほど社会的な成功と結びつきやすいと示されています。なぜなら、成功したい時には時として冷酷になる必要があり、自分自身と仕事を第一に考える必要があるからです。ただし、全ての職業で協調性が低い方が有利とは限りません。
組織には協調性が高い人と低い人がバランスよく存在することが望ましいと言えます。人事配置では「場面ごとの役割」を意識するといいでしょう。
- 協調性が高い人は「人間関係を円滑にする潤滑油」として貴重だが、強く主張すべき場面では遠慮しすぎることもある。
- 協調性が低い人は「対立を恐れず、組織に新しい風を入れる」存在だが、人間関係の摩擦を起こしやすい。
【実践】自分とメンバーの協調性を把握してみよう!
ステップ1:協調性を診断してみよう

人事配置で困っている場合は、メンバーに診断を受けてもらうのもいいでしょう。まずは自分の性格を把握してみることも重要です。自分の協調性を把握することでその人の価値観との食い違いを把握できるからです。
例えば、自分の協調性が高い人にとっては低い人のはっきりした態度が「怖い」と感じます。協調性が低い人事担当が協調性の低いメンバーと話をすると、「態度が人に気をつかってばかりで芯がない」と評価しがちです。
ステップ2:人事担当としてメンバーと話すときのコミュニケーションギャップに注意しよう
事例①会議における食い違い
- 協調性が高いメンバー:「周囲の意見を尊重したいので、あえて反論しませんでした」
- 協調性が低いメンバー:「問題点を率直に指摘した方がチームのためになると思い、強めに発言しました」
話し合いの場面において、協調性が高い人は「雰囲気を壊された」と感じ、低い人は「誰も本音を言わない」と不満を感じがちです。話し合いの際には以下のようなルールを決めてみるといいでしょう。
- 会議ルールとして「肯定意見の後に改善提案を言う」フレームを導入。
- 意見の対立を「衝突」ではなく「建設的な議論」と位置づけ、双方が安心して発言できる文化をつくる。
事例②指示に対する従順さの違い
- 協調性が高いメンバー:「上司からの指示を断れず、業務を抱え込みすぎてしまいました」
- 協調性が低いメンバー:「納得できないタスクは断りました。効率的に進めたつもりです」
高い人は「自分だけが負担」と感じ、低い人は「他人の尻拭いをしている」と感じる傾向があります。人事担当として以下のような解決策を出してみるといいでしょう。
- 業務量を見える化して、タスクの偏りを防ぐ。
- 面談で「断る技術」や「ヘルプを出すスキル」を伝え、どちらも健全に自己調整できるよう支援。
事例③:異動・配置の意識の違い
- 協調性が高いメンバー:「人間関係の良い部署で、安定的に働きたいです」
- 協調性が低いメンバー:「新しい環境で挑戦したい。多少対立があっても成長につながると思います」
配属に関して、高い人は「配属でストレスを避けたい」、低い人は「チャレンジの少ない環境は退屈」と感じがちです。
解決策として、以下のような工夫してみるといいでしょう
- 異動希望を聞く際には「人間関係重視型」と「挑戦重視型」に整理して把握する。
- 部署内に両タイプが混ざるよう配置し、安定性と推進力のバランスをとる。
ステップ3:性格によって人事配置を工夫してみよう
協調性が高い人の人事配置の例
- 人事・総務・秘書などバックオフィス:誠実さや気配りを活かし、社員サポートや調整役として力を発揮。
- カスタマーサポート・受付・営業事務:顧客や取引先に丁寧に接し、関係を長期的に築く役割に適する。
- チームワーク重視の部署:プロジェクト管理やチームの調整係として雰囲気を安定させる。
- 教育・研修担当:新人や若手に寄り添い、安心感を与えながら指導できる。
協調性が低い人の人事配置の例
- 営業・企画・新規事業開発:交渉力や自己主張を活かし、競争的な環境で成果を出しやすい。
- 経営企画・戦略立案:リスクを疑い、現状を批判的に検討する姿勢が強みになる。
- 研究開発や専門職:個人プレーが許される場で集中力を発揮。独創的なアイデアを追求できる。
- 改善・改革が必要な部署:慣習にとらわれず意見を言えるため、業務改善や組織改革の起点になりやすい。
まとめ
- 協調性を見て人事配置するときには「人間関係を円滑にする力」と「対立を恐れず前進する力」のバランスが重要。
- 協調性が高い人は誠実さや気配りを活かしてサポート・調整役に向き、低い人は競争的環境や改革に力を発揮。
- 人事担当やマネージャーは、協調性の違いによるコミュニケーションギャップに配慮し、配置や会議運営で工夫する必要がある。






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