今回は人事担当者やマネージャーに向けた内容です。
ビッグファイブの性格特性の1つである神経症傾向について解説します。神経症傾向の高さは不安レベルやストレス耐性と関わっています。
- 神経症傾向が低くメンタルが強いメンバーは、神経症傾向が高く不安を感じやすいマネージャーのことを「心配性だな。そこまで逐一管理しなくても…」と煩わしく感じてしまいます。
- 逆に、神経症傾向が高いメンバーは、神経症傾向が低いマネージャーのことを「のんびりしていて信頼できない人だな」と不安感を募らせてしまいます。
そこで、自分とメンバーの神経症傾向のレベルをきちんと把握し、感覚のギャップを認識しましょう。メンバーの神経症傾向から作業に対する不安レベルを把握することで、適切な距離感でコミュニケーションをとることができます。
ビッグファイブとは?
- 外向性:社交的、活発的かどうか
- 協調性:他人への思いやりや共感力が高いかどうか
- 勤勉性:意志力や責任感が強いかどうか
- 神経症傾向:不安やストレスを感じやすいかどうか
- 経験への開放性:知的好奇心や想像力が高いかどうか
ビッグファイブの特徴は「型」で判断するわけではない点です。MBTIやエニアグラムなどのように「あなたは◯◯タイプ」という判断はしません。例えば、「この人は外向性が高いから外向型」という表現ではなく、「この人は外向性が高く協調性も高く勤勉性は中ぐらい、神経症傾向は中ぐらい、開放性は低い」というように判断します。
神経症傾向の6つの特徴を徹底解説
NEO-PI-Rで示される協調性の6つの特徴
実は神経症傾向の中にも下位特性(神経症傾向を構成するより細かい特性)があります。
NEO-PI-R(ビッグファイブを本格的に診断できる240項目の診断ツール)の日本語版では、神経症傾向の下位特性は以下のように示されています。
- 心配性:何か危険なことが起こりそうだと感じて気を張り詰め、神経質になる傾向があるか
- 怒りやすさ:怒りを感じやすく、不当に扱われることに敏感であるか
- 抑うつ:悲しさやみじめさ、失望を感じる傾向が強いか
- 自意識:他人にどう思われるかを気にするか
- 衝動性:強い欲求や衝動を抑えられないか
- 傷つきやすさ:プレッシャーやストレスに弱いか
神経症傾向が高い人の特徴
一般的に、神経症傾向が高い人は6つの下位特性がすべて高めです。
- 心配性である:心配性で不安を感じがち。安心するまで眠れない。(例:旅行の前日に忘れ物がないか何度も確認する。プレゼン資料の誤字脱字を細かく見直し、念入りに準備する。)
- 怒りやすい:軽い指摘やトラブルでも「自分を否定された」と感じやすい。(例:SNSの返信が遅いだけで「嫌われたのかも」と苛立つ。)
- 抑うつになりやすい:失敗を思い出して「自分はダメだ」と落ち込みやすい。
- 自意識が強い:周囲に配慮しすぎる。変に思われていないだろうかと周りの目を気にする。(例:会議発言の後に「場を白けさせたかも」とくよくよする。)
- 衝動性が高い:衝動的に行動しやすい。(例:ストレスで甘い物をドカ食いしてしまう。)
- 傷つきやすい:傷つきやすくストレス耐性が低い。(例:ちょっとした冗談を本気で気にしてしまう。小さなミスで強く落ち込み、パフォーマンスが下がる。)
神経症傾向の高さはデメリットが目立ちます。しかし、メンタルが弱いことのメリットもあります。創造性と不安による努力です。
創造性について、2007年に発表された論文によると、作家や詩人、画家などのアーティストは神経症傾向が高いことが知られています。つまり、アーティストなどの創造性が高い人はメンタルが弱めな傾向があるのです。なぜなら、アーティストは作品を一種のセラピーとして捉えている側面があるからです(例えば、苦しみを文章で表現するなど)。

また、何かが起きるかもしれないという不安を入念な準備力につなげることができれば、ほかの人よりも成果を出しやすくなります。
実際に、1993年にイースト・ロンドン大学の研究者によって発表された論文によると、神経症傾向と勤勉さがどちらも高いと神経症傾向が低い人よりも優秀な学業成績を収めることが分かっています。つまり、不安を燃料に変えて人よりも努力することができるのです。

神経症傾向が低い人の特徴
一般的に、神経症傾向が低い人は6つの下位特性がすべて低めです。
- 心配性ではない:リスクをあまり考えずに行動が早く柔軟である。(例:旅行準備も「なんとかなる」で前日パッキング。リスクをあまり考えずに新規提案に飛び込む。)
- 怒りを抱きにくい:苛立ちを感じにくく人間関係が安定しやすい。(例:友人に軽くからかわれても笑って流す。部下の小さなミスに動じずフォローする。)
- 抑うつになりづらい:ストレスに強く物事に動じない一面がある。(例:失敗しても「次がある」と気にしない。)
- 自意識が低い:周りにどう思われるか気にせず自然体である。(例:服装や発言についてどう思われるかあまり気にしない。)
- 衝動性が低い:感情的に何かを決断することが少ない。(例:衝動買いせず、必要なものだけを買う。)
- 傷つきづらい:ネガティブな感情をあまり感じることがなく、何が起きても感情が安定している。(例:冗談を深刻に受け止めず笑って受け流す。)
神経症傾向が低い人はメンタルが強いですが、危険に対してやや鈍感な一面があります。ゆったりと構え過ぎてしまって危機への対応が遅くなることもあるかもしれません。
神経症傾向の特徴まとめ
| 下位特性 | 高い神経症傾向 | 低い神経症傾向 |
|---|---|---|
| 心配性 | リスクに敏感で安全策を取れる。不安で行動が遅れることがある。 | 行動が早く柔軟。リスクに気づかず失敗することがある。 |
| 怒りやすさ | 不当な扱いに敏感で自己防衛ができる。人間関係で摩擦を起こしやすい。 | 人間関係が安定しやすい。不正や問題に鈍感になりやすい。 |
| 抑うつ | ネガティブな感情を創作に昇華できる。気分の落ち込みで長期的にパフォーマンスが下がる。 | 落ち込みに左右されず安定して行動できる。他人のつらさに鈍感になりやすい。 |
| 自意識 | 周囲に配慮できる。周りの目を気にして疲れやすい。 | 自己表現に積極的。場の空気を読まず誤解されることがある。 |
| 衝動性 | 直感的なアイデアが出やすい。後悔する行動をしやすい。 | 無駄が少なく堅実。機会を逃すことがある。 |
| 傷つきやすさ | 細やかな気配りができる。ストレスに弱く、疲れやすい。 | 強いメンタルで安定。相手の痛みに無頓着になりやすい。 |
神経症傾向による働き方やキャリアの特徴
神経症傾向が高い人の働き方・キャリアの特徴
- 心配性・傷つきやすさ→リスクや不具合を事前に察知できる。品質管理や安全管理などで強みを発揮。会議前に事前資料を完璧に揃える、プロジェクトのリスクシナリオを複数用意する。
- 怒りやすさ・自意識の高さ→他人の言動に敏感。人間関係で摩擦を抱えやすいが、顧客のちょっとした不満にいち早く気づく。
- 抑うつ傾向→モチベーションが下がりやすく、単調な作業や孤立した環境ではパフォーマンスが落ちやすい。しかし、創造性の高い職種では、自分の感情や不安を作品や提案に変換する能力がある。
- 衝動性→強いストレス下で感情的な判断をしてしまうことがある。サポートや安心感のある環境が必要。
神経症傾向が低い人の働き方・キャリアの特徴
- 感情の安定→ストレスフルな現場でも落ち着いて対応できる。トラブル対応やリーダー業務で安心感を与える。
- 怒りや抑うつが少ない→対人関係で安定感がある。部下や顧客に安心感を与える。
- 危機感の低さ→危険やリスクに鈍感で、対応が遅れることもある。リスク管理では弱みになる。
- 衝動性が低い→判断が冷静で、長期的な戦略や経営判断に向いている。
【実践】自分とメンバーの神経症傾向を把握してみよう!
ステップ1:神経症傾向を診断してみよう

ステップ2:人事担当としてメンバーと話すときのコミュニケーションギャップに注意しよう
ケース①:神経症傾向が低いマネージャー✕神経症傾向が高いメンバー
- メンバー:小さなリスクや問題に敏感で「このままでは大変なことになる」と繰り返し報告。
- マネージャー:動じず「大げさだよ、心配しすぎ」と受け流す。
神経症傾向が低い人からすると、神経症傾向が高い人の不安は大げさに見えてしまいます。しかし、メンバーは「話を聞いてもらえない」と感じ、不安が増大してしまいます。
人事担当として以下の解決策を実施してみましょう。
- マネージャーに「リスク感度の違い」を研修で理解させる。
- メンバーの懸念を記録・可視化する仕組み(リスクログや改善提案フォーム)を導入。
- 不安を「共有して良いもの」と位置づけることでメンバーの安心感を高める。
ケース②:神経症傾向が高いマネージャー✕神経症傾向が低いメンバー
- マネージャー:細部まで不安になり「ここも直せ、ここも準備して」と過剰に指示。
- メンバー:リスクを軽視して「そんなに細かくやらなくてもいい」と反発。
マネージャーは「危機意識が足りない」と苛立ち、メンバーは「細かすぎる」とお互いにストレスを感じる状況になっています。人事担当として以下の解決策を実施してみましょう。
- 双方の認識ギャップを可視化する場(振り返りミーティングなど)を設ける。
- 「最低限必要なリスク対策」と「過剰な不安対応」を切り分け、優先順位を明確化。
- マネージャーにはマイクロマネジメントにならない工夫をアドバイス。
ケース③:神経症傾向が低い人事担当✕神経症傾向が低いメンバー
- メンバー:異動や評価に強い不安を持ち「私は干されるのでは」と繰り返し相談。
- 人事担当:落ち着いて「そんなに心配しなくていい」と軽く返答。
メンバーは「真剣に取り合ってくれない」と不信感を抱いています。人事担当としてメンバーと接する際には以下の点を重視してみましょう。
- 不安を表明するメンバーに対し「傾聴」姿勢を徹底。
- 定期面談や匿名相談窓口など安心して声を上げられる仕組みを整える。
- 「根拠ある説明」で安心感を与え、感情を軽視しない。
ケース④:神経症傾向が高い人事担当✕神経症傾向が低いメンバー
- 人事担当:メンバーの将来リスクや不安を過度に想定し「異動に備えて研修も受けておきましょう」と繰り返し提案。
- メンバー:のんびり構えて「今のままで問題ない」と受け入れない。
人事は「危機感がなさすぎる」と不安になり、メンバーは「余計な心配を押しつけられている」と感じている状況です。人事担当としてメンバーと接する際には以下の点を重視してみましょう。
- メンバーにとっての「現実的なリスクシナリオ」を提示し、過度に一般化しない。
- キャリア開発をリスク対策としてではなく、メリットを強調して伝える。(例:スキルが増えれば選択肢が広がるなど)
- 人事自身も不安過多にならないよう、客観的データを根拠に使う。
ステップ3:性格によって人事配置を工夫してみよう
神経症傾向が高い人の人事配置の例
- 品質管理・監査業務:些細な異常やリスクに敏感で、不安が強いため細かいチェックを怠らない。
- 事務・サポート業務:先回りして起きうるトラブルを防ぐ役割に適性。資料準備やスケジュール調整など。
- 危機管理・リスクマネジメント関連:「最悪の事態」を想定できるため、BCP(事業継続計画)や安全管理に強みを発揮。
- 社内改善・業務プロセス改善:問題点を早期に察知し、改善策を計画的に提案できる。
- マーケティング企画:ユーザーがサービスを使う上での使いにくさや苛立ちポイントに気づくことができる。
- コンテンツ制作・自己表現:文章やイラストを制作する。不安や感情を表現やアイデアに変換でき、他者に刺さる企画を作れる。
-
プレゼン・イベント運営:入念に準備することで高いクオリティを実現できる。ただし、緊張で失敗にもつながりやすいのでメンタルケアが重要。
神経症傾向が低い人の人事配置の例
- 営業・新規事業開発:ストレスに強く、失敗しても気にせずトライし続けられる。
- 経営やマネジメント:動じない安定感でメンバーを安心させる。ただしリスク管理の視点を補う必要あり。
- 交渉やプレゼンテーション:緊張に強く、大舞台でも落ち着いて対応できる。
- プロジェクト推進・現場リーダー:危機に動じず前進できるので、スピード重視の現場で活かしやすい。
- 緊急対応・危機管理:冷静さを維持しやすい。ただし「油断しやすさ」に注意。品質管理や危機管理の役割は補完する人材と組ませるのが理想。
まとめ
- 神経症傾向はビッグファイブの1特性で、不安レベルやストレス耐性に関わる。
- 高い人は不安や落ち込みやすさが強いが、創造性や入念な準備力という強みも持つ。
- 低い人はストレス耐性が高く安定しているが、危機感に鈍感になることがある。
- 人事やマネジメントの場面では、神経症傾向の違いによる認識ギャップを理解することが重要。
- 配置やコミュニケーションを工夫することで、特性を活かしたチーム運営が可能になる。






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