今回は「この子は勉強ができるはずなのに成績が伸びない…」と悩んでいる親に向けた内容です。
- 理解力が高く、1〜2回説明しただけで内容を把握するのに、なぜか学校のテストでは成績が振るわない。
- ケアレスミスが多い、問題文を読み飛ばす、計算や記述の途中で失点するなどが原因で伸び悩む。
- 「興味がない」と言って取り組まない。宿題に手をつけない。
実は、知能が高いからこそ勉学に苦労することもあります。
才能あるギフテッドがなぜ学校で劣等生になるのか?
「ギフテッド」と呼ばれる優れた子どもは学校の環境において、能力を発揮できず、成績が振るわないことがあります。その原因は、学校のカリキュラムに興味が持てず、ADHDに似た傾向を示してしまうからだと言われています。
「ギフテッド」とは平均よりも高い能力を示す子ども
「ギフテッド」とは、平均よりも高い知的能力を示す子どもの特性です。
- 多くの場合、上位2.5%の知能指数(IQ 130以上)と定義されますが、明確に定義されているわけではありません。才能のある子どもに対してギフテッドと呼ぶようになったのは、スタンフォード大学の心理学者ルイス・ターマンです。ターマンは1916年にスタンフォード・ビネー知能検査を開発しました。そのときに、才能のある子どもを見出し、才能教育の必要性を訴えています。
- また、National Association for Gifted Children(NAGC)が示したギフテッドの定義は、特定の分野で同じ年齢の子どもと比べて、より高いレベルで能力を発揮する可能性を持っている子どもと定義しています。
「ADHD」は「不注意タイプ」「多動・衝動タイプ」に分けられる
- 不注意:忘れ物が多い。何かやりかけでもそのままほったらかしにする。集中しづらい、もしくは自分の興味のあることに対しては集中しすぎて切り替えが難しい。片付けや整理整頓が苦手。
- 多動性:落ち着いてじっと座っていられない。過度なおしゃべり。ソワソワして体が動いてしまう。
- 衝動性:順番が待てない。気に障ることがあったら乱暴になってしまうことがある。会話の流れを気にせず思いついたらすぐに発言する。ほかの人の邪魔をしたり遮ったりする。
- 不注意の症状が強いタイプ
- 多動性・衝動性の症状が強いタイプ
- 混合タイプ(不注意タイプと多動・衝動タイプが混ざっているタイプ)
学校の環境が知的刺激に乏しいことが原因か
ギフテッドであるにもかかわらず能力が振るわないのは、モチベーションの保ち方に問題があることも原因の1つとされています。
モチベーションを保つためには、自己効力感・目標価値づけ・自己調整という3つの能力が重要とされています。
- 自己効力感:ある課題を達成できるという信念。学業での粘り強さに関連する。
- 目標価値づけ:学業課題を意味のあるものとして捉えるか。学校でうまくやることが重要であると言う信念。
- 自己調整:生徒が目標を認識し、達成するための方法を計画して、自分の行動を自分自身で管理する能力。
成績不振のギフテッドはこれらの能力が低い傾向があり、集中力を発揮することができていないのです。つまり、知能が高くても、学校で成績が評価されることにあまり価値を見出せず、計画を立てて物事を達成していることが苦手だと、成績不振になりやすいです。
また、学校のカリキュラムが退屈であったり、知的刺激に乏しかったりすることも、才能を発揮することができない原因だと考えられています。
2020年にコネチカット大学(University of Connecticut)などの研究者たちが発表した論文によると、ギフテッドでありながら学業不振の問題を抱える生徒は注意力に問題があり、能力を発揮できていないと示されています。
内容
212名の生徒(平均年齢12歳)と110人の教師を対象。
- ギフテッドとしての知能の基準:知能検査の得点が120以上。
- 成績不振としての基準:学級内で50%未満の成績である。もしくは担任教師などから「能力は高いが学業不振である」と報告されている。
- ADHDの基準:「不注意」と「多動・衝動性」の2つの項目をチェックした。なお、家庭用版と学校用版でそれぞれ評価した。
- 学校達成態度:自己効力感・目標価値づけ・自己調整の3つのスキルを生徒が自己評価した。
結果
- 教員からの評価では、ギフテッドで学業不振の生徒は50%以上がADHDの基準を満たしていた。そのうち、不注意型のADHDは39.62%で標準の約4倍だった。
- 保護者からの評価では、ギフテッドで学業不振の生徒の約30%がADHDの基準を満たしていた。そのうち、不注意型のADHDは23%で、標準の約7倍だった。
- 一方で、保護者からの評価も教員からの評価も多動・衝動型のADHDの割合は標準と同じかそれ以下であった。
- 考察:つまり、成績不振ギフテッドの生徒はADHD全体の傾向があるというよりも、不注意の傾向だけを強く持っていると言えます。
- 多動性レベルについては保護者と教師の評価は一致していたが、不注意レベルは教師の方が保護者よりも高く評価していた。
- 考察:集中力がより必要とされる学校での環境においては不注意の傾向が特に注目されやすいと考えられます。また、ギフテッドにとって学校の環境を退屈に感じ、不注意が生じている可能性もあります。
- 実際に、不注意に問題があるギフテッドは問題がないギフテッドと比べて成績が低かった。なお、両者で年齢や知能、宿題に費やす時間には差が認められなかった。
- 自己調整が低い生徒ほど、保護者や教師からより不注意であると評価されていた。
- 特に、家庭において不注意の傾向がある成績不振ギフテッドは、不注意の傾向がない成績不振ギフテッドと比べて、自己効力感・目標価値づけ・自己調整の得点が低かった。特に自己調整と目標価値づけではスコアが大きく低い傾向が見られた。
- 考察:成績不振ギフテッドは学校に行く意味が見出せておらず、計画立てて物事を実践するのが苦手だと言えそうです。
考察
学校において集中力が発揮できないのは、知的刺激の乏しい学校環境も原因の1つかもしれません。
例えば、ギフテッドは理解力が高いため、授業の進行スピードが合わないことも多いでしょう。
- ギフテッドは1回の説明でも結論が把握できる。
- そのため、その後の反復説明・板書・例題演習が「新しい情報を含まない時間」になる。
- 結果として、窓の外を見る・空想する・別のことを頭の中で考え始めるといった不注意の状態になる。
もちろん、理解スピードの違いによって授業に集中できていないだけなら、成績不振にはならないでしょう。しかし、集中力の欠如によってケアレスミスが増える、指示を聞き逃す、途中でやめてしまうといったことが起き始めると、テストでいい成績を出すこともできなくなってしまいます。
まとめ
- ギフテッドであっても、学校環境とのミスマッチによって学業不振に陥ることがある。
- 成績不振のギフテッドは、多動性ではなく「不注意」の傾向が強い場合が多い。
- 自己効力感、目標価値づけ、自己調整といった学習態度が、不注意や成績と深く関係している。
知能が高いことと、学校で成果を出せることは必ずしも一致しません。特に、自己調整や学業への価値づけが弱いと、不注意が目立ち、能力を十分に発揮できなくなる可能性があります。
「怠け」や「やる気の問題」と決めつける前に、子どもと環境の相性や学習の進め方を見直す視点が重要です。

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