「偏見を持ちやすいかどうかは、実は“性格”と関係があるって知ってましたか?」
私たちはふだん、「人は誰でも平等に見るべき」と思っているかもしれません。しかし、2008年に発表されたオークランド大学の研究では、人の性格によって偏見を持ちやすい傾向があることがわかっています。
たとえば、
- 「変化が苦手」「いつも自分のやり方が一番正しいと思う」傾向が強い人は、文化や考え方が自分と違う人に対して不安や拒否感を持ちやすいのです。
- 逆に、「好奇心が強くて、新しいことを受け入れるのが得意な人」は、違いを楽しむことができるとも言われています。
性格の傾向は、誰にでもある「無意識の思い込み」にもつながっています。「ちょっと苦手かも…」「どう話しかけていいかわからない…」――それは、あなたが悪いのではなく、人の性格と脳のしくみによる自然な反応なのです。
この記事では、研究知見をもとに、
- なぜ偏見が生まれるのか?
- どうすれば多様性を受け入れやすくなるのか?
- 日常の中でできる実践ステップとは?
を、わかりやすく紹介していきます。
「違いが怖い」ではなく、「違いって面白い」と感じられるヒントを、一緒に見つけてみませんか?
協調性が低い人と好奇心が少ない人は偏見持ちやすい!?
2008年に発表されたオークランド大学の研究では、性格の特徴が偏見とどのように関係しているかを調べました。この研究では、「協調性(みんなと仲良くしようとする性格)」と「開放性(新しいことや考え方を受け入れる性格)」が偏見にどう関係しているかを見ています。
内容
71件の研究、合計22,068人のデータを集め、性格の5つの特徴と、「社会的支配志向(他の人を支配したがる気持ち)」や「右翼的権威主義(権力に従いやすいか)」という考え方、そして偏見の関係を調べた。
結果
- 協調性が低い人は社会的支配志向(他の人を支配したがる気持ち)が高く、偏見が強くなりやすい。
- 開放性が低い人は右翼的権威主義(権力に従いやすいか)が高く、偏見が強くなりやすい。社会的支配志向も少し高くなりやすい。
- 誠実性(まじめで責任感が強い性格)は、右翼的権威主義と少し関係があったけど、偏見とはほとんど関係なかった。
- 社会的支配志向と右翼的権威主義の影響を取り除くと、協調性と偏見の関係や、開放性と偏見の関係はずいぶん弱くなった。つまり、性格が偏見に影響するには、この2つの考え方によるということ。
- なお、分析にかけた研究によって、調査の方法や偏見の種類によって少し違いはあったけれど、基本的な結果は同じだった。
考察
- 偏見を理解するには、「協調性」と「開放性」という性格がとても大事だ。
- 「社会的支配志向(他の人を支配したがる気持ち)」は、特に協調性の低さから生まれやすく、偏見につながる。
- 「右翼的権威主義(権力に従いやすいか)」は開放性の低さと関係していて、これも偏見の原因になる。
- 性格がそのまま偏見に影響するのではなく、社会的支配志向や右翼的権威主義という考え方を通して影響を与える
つまり、偏見を減らすためには、性格自体を変える必要はなく、偏見につながる考え方を変えていくので充分と言えます。
【実践】文化の違いにオープンになり、多様性を理解しよう
偏見を持ちにくい性格は「協調性(みんなと仲良くしようとする性格)」と「開放性(新しいことや考え方を受け入れる性格)」でした。協調性が高い人や開放性が高い人に習って、文化が違う人への思いやりや興味を育てていきましょう。
ステップ0:まず、「多様性ってなぜ大切なの?」を知っておこう
違う文化、違う考え方、違う生き方を持つ人と関わるのは、むずかしいこともあるけど、実はすごく役に立つことがたくさんあります。
たとえるなら、多様性を持つことはRPGゲームでチームを組むことです。RPGゲームでチームを組むとき、同じ属性のキャラばかりだと弱点が偏ってしまって不利になりますよね。でも、違う属性のキャラを入れておけば、どんな敵にも対応できます。
人のチームも同じで、「違う人」がいるほど強いチームになれるんです。
多様性があると、どんないいことがあるの?
◯新しいアイデアが生まれやすくなる
- いろんな考え方の人が集まると、「今までなかった発想」が出やすくなります。
- たとえば、LGBTQ+の社員がいたことで、もっと多くの人にとってやさしい広告や商品ができた会社もあります。
◯いろんなお客さんに対応できるようになる
- お客さんもいろんな国や文化、年齢の人がいます。そんな人たちの気持ちがわかるスタッフがいると、よりよいサービスができます。
- たとえば、外国人スタッフがいることで、観光客への接客がスムーズになったお店もあります。
◯いろんな人が安心して働けるようになる
- 子育て中の人、障害がある人、年齢が高い人なども、支えがあればちゃんと力を発揮できます。
- 「この会社はだれでも安心して働ける」と思われると、応募する人も増えるし、やめる人も減ります。
◯トラブルやいやな発言が減って、みんなが働きやすくなる
- 多様性を大事にする職場では、「悪気はないけど傷つける言葉」が減ります。
- たとえば、性別や国籍でふざけてしまうような言動が少なくなり、おたがいに信頼できる関係ができます。
◯自分らしく働けて、やる気が出る
- 「自分のことをちゃんと見てくれてる」「自分の考えも言っていい」と思えると、人は力を発揮しやすくなります。
- 若い人でもちゃんと話を聞いてもらえる職場では、どんどんアイデアを出すようになります。
ステップ1:自分の中にある「なんとなくの苦手」に気づく
まずは、無意識の偏見に気づくところから始めます。自分が無意識に「ちょっと距離を置いてしまう人」や「なぜか苦手だと感じる人」を書き出してみましょう。
自分の中の「抵抗」の具体例
- 「外国人に声をかけるのが怖い」→言葉が通じるか不安。何か失礼をしてしまいそうで緊張する。
- 「LGBTQ+の人にどう接していいかわからない」→”ふつう”と違うという思いこみがある。
- 「障害がある人とどう接すればいいか迷う」→特別扱いすべきかどうか、経験が少なくて戸惑う。
- 「若い世代(Z世代)は礼儀を知らないと思ってしまう」→自分の常識が通じない場面があった。
思いつかない場合は、以下のよくある偏見の例を参考にしてみましょう。
よくある偏見の例
具体例: 「○○語で話してると怖い」「外人はマナーが悪い」などの言動。
具体例: 「どう接していいかわからないから話しかけづらい」「働けない人でしょ」といった誤解。
具体例: 「男のくせに女っぽい」「どっちが男役なの?」というような失礼な問い。
具体例: 「今の若者はすぐ辞める」「礼儀を知らない」といった偏見。
具体例: 「年寄りはスマホが使えない」「話が通じない」と一括りにされる。
具体例: 「あの人いつも変な時間に祈ってる」「何食べられないの?面倒くさい」など。
具体例: 「税金で食ってるくせに」「働かないから貧乏なんだ」などの偏見。
具体例: 「○○ちゃんは外国人なの?」「日本語上手だね(※日本生まれでも)」など。
掘り下げの問い
- その印象はいつ・どんな体験から生まれた?
- 自分の育った環境やメディアの影響で、どんなイメージを持っていた?
- どんな知識や思いやりを持てば苦手意識を解決できると思う?
このようにして、自分の中にある“思いこみ”に気づくことが、偏見を手ばなす第一歩になります。
ステップ2:知らない文化の「ちょっとした知識」を得てみる
知らないからこそ「どう接していいかわからない」——この不安をやわらげるには、文化的知識に興味を持ち、「この文化にはこんな意味があるんだ」と知ることが役立ちます。
よくあるケースの文化的知識:
【外国人・宗教編】
- ムスリム(イスラム教徒):豚肉・アルコールはNG、男女の握手を避けることもある。お祈りは1日5回。ヒジャブをかぶっている女性は安心や自信のあらわれ。
- ベジタリアンやヴィーガン:宗教的信念や倫理観から動物性食品を避ける人もいる。
- 英語圏の文化:自己主張を重んじるため、意見を言うのはマナーとされる。黙っているのは「無関心」と受け取られることも。
【障害の例】
- 発達障害(自閉スペクトラムなど):空気を読むのが苦手、急な変化がストレスになる。だけどルールや時間にきっちりしていることが多い。
- ディスレクシア(読み書き困難):文章の読み取りが苦手でも、空間認識や発想力にすぐれていることがある。
- 聴覚障害:筆談やジェスチャーでのコミュニケーションが役立つ。
【性的マイノリティ】
- L(レズビアン)・G(ゲイ)・B(バイセクシュアル):恋愛の対象が同性・両性
- T(トランスジェンダー):生まれたときに割り当てられた性別と自分が感じる性が違う
- Q(クィア・クエスチョニング):性に関する枠組みにあてはまらない、まだ模索中
ピンとこない場合には、特殊だと思い込んでいる文化を自分たちの文化でたとえてみるといいでしょう。
たとえの例:
- 「ヒジャブは、日本でいう“制服”のような安心感があるもの」
- 「外国人の主張の強さは、日本人が“謙虚に言う”文化と違うだけ。日本での『遠慮』が向こうでは『否定』に見えることも」
- 「若者のSNSでの自己表現は、昔の世代で言えば“ファッションや髪型で目立つ”感覚に近い」
- 「中年の会議での沈黙=賛同だが、若者にとっては“意見がない”と見なされる」
こうした“翻訳”のような視点を持つと、「文化が通じない人」への接し方がぐっと楽になります。
ステップ3:様々な属性の強みに目を向ける「RPGゲーム思考」を持つ
自分が「ふつう、多数派」と思っている集団(=内集団)とは違う人たち(=外集団)を、“変わっている”と見るのではなく、「違うからこその強み」を見つけてみましょう。
外集団の具体例と強みの例:
- 礼儀や文化が違う若者:情報収集が早く、SNSや新しいツールへの適応力が高い
- 外国人スタッフ:語学力だけでなく、違う価値観から新しい提案ができる
- ディスレクシア(読み書きが苦手な人) → 空間認識やひらめき力にすぐれていることが多い
- 聴覚障害のある人:観察力が高く、非言語コミュニケーションに長けている
- 自閉スペクトラム傾向の人:細かい違いに気づく力がある。ルーティン業務に強く、ミスが少ない
- HSP(感覚が敏感な人):共感力が高く、まわりの空気をよく察知できる
- LGBTQ+の人:複数のアイデンティティを生きているからこそ、多様な視点を持ち、人間関係の橋渡しが得意なことも
どんな人にも「その人にしかない強み」があります。それを見つけ、活かそうとする姿勢が多様性を受け入れることにつながります。
ステップ4:小さなアクションを日常に取り入れてみる
知識を得たら、あとは実際にやってみることが大切です。むずかしく考えず、小さなことからでOKです。
例:
- 外国人や障害のある人に、1日1回あいさつしてみる
- 会議で、発言が少ない人に「○○さんはどう思う?」と聞いてみる
- 職場で「自分と一番違う人」と一緒に仕事してみる
- 食事会やイベントで、ふだん交流のない属性の人と話してみる
- 職場で浮いている自閉スペクトラム傾向の人の人に「〇〇さんは仕事でミスが少ないですよね」と褒めてみる
そうした一歩が、「違いを受け入れる場づくり」につながっていきます。
まとめ:多様なタイプでチームを組もう!
人は誰でも、「自分と違うもの」にちょっとした不安や抵抗を感じるものです。それは、あなたの性格や、これまでの経験がつくった“思い込み”のクセかもしれません。
でも、違うからこそ得られる力もたくさんあります。研究でも、多様な人が集まることでアイデアが増える・商品がよくなる・人が辞めにくくなるなど、たくさんのメリットがあることがわかっています。
RPGゲームのチームと同じように、同じタイプのキャラだけじゃ勝てない場面も、違う特性を持った仲間がいるからこそ乗り越えられるんです。
だからこそ、「違いを知ること」「違いを認めること」は、あなた自身の成長にも、職場やクラスの未来にもつながります。
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