【論文解説】創造性のある人はどんな性格?

論文解説

創造性が高いのは、知的好奇心が高い性格の持ち主

これからの時代は創造性(クリエイティビティ)が必要とされる職業が増えてくるでしょう。クリエイティビティとは、新しいものを生み出す能力です。例えば、クリエイターや起業家などの職業はほかの人が考えないコンセプトを生み出す能力が必須です。

 

実はクリエイティビティを発揮できるかどうかは、性格によって影響されます。

2009年のノースカロライナ大学の研究によると、「経験への開放性」という性格が高いほど創造性が高いようです。開放性とは、「ビッグファイブ(=心理学の研究で使われる性格診断)」のなかの性格特性の1つで、知的好奇心や想像力が高いかどうかを指します。

 

 

根拠となる研究
ScienceDirect
  • 被験者:189人の大学生(スクリーニング後)
  • 内容:ビッグファイブの質問票とクリエイティビティの様々な計測を比べて、性格がクリエイティビティにどのように関連しているかを調べた。

 

測定

①ビッグファイブ

ビッグファイブを測定する質問票を4種類回答してもらい、以下の5つの性格を調べた。

  1. 経験への開放性(開放性):知的好奇心や想像力が高いかどうか
  2. 誠実性:意志力や責任感が強いかどうか
  3. 外向性:社交的、活発的かどうか
  4. 調和性:他人への思いやりや共感力が高いかどうか
  5. 神経症傾向:不安やストレスを感じやすいかどうか

なお、この研究ではビッグファイブの結果をもとに、「可塑性」と「安定性」という概念が規定された。

  1. 可塑性:開放性・外向性をまとめたもの
  2. 安定性:調和性・誠実性・神経症傾向をまとめたもの

 

②拡散的思考力

拡散的思考(=たくさんの新しい発想を生み出す思考)を計測する課題に取り組んでもらう。レンガ・ナイフ・箱の用途をなるべく多く、より独創的な使い方を考えてもらうように指示した。それぞれのお題で3分間ずつ行った。

拡散的思考テストの評価は2つの基準で行った。

  1. 流暢性:回答の数
  2. 独創性:回答の質。4人の評価者に、それぞれの回答を5段階で評価してもらう

 

③クリエイティブな行動

28項目のCreative Behavior Inventory(CBI)を使って、今まで創造的な活動をしていたかどうかを評価した。例えば、小説を書く、デザインする、衣装を作る、曲の歌詞を書く、インテリアを作る…など。

A:まったくしたことがない
B:1、2回したことがある
C:3~5回したことがある
D:5回以上したことがある

 

④クリエイティブな達成

Creative Achievement Questionnaire(CAQ)で、今までの創造的な活動の成果を自己評価で回答してもらった。なお、成果は客観的で計測可能なものを評価した。

 

⑤クリエイティブな自己評価

9項目のCreativity Scale for Different Domains(CSDD)を使って、自分のことをどれだけクリエイティブだと評価しているかを調べた。例えば、「芸術分野においてどれだけクリエイティブだと思うか?」「コミュニケーションにおいてどれだけクリエイティブだと思うか?」「自分は一般的にどれぐらいクリエイティブと言えるか?」など。

 

回答された自己評価をもとに4つのカテゴリーで分類した。

  1. 数学・科学でのクリエイティビティ
  2. 情動・人間関係でのクリエイティビティ
  3. 実践的なクリエイティビティ
  4. クリエイティビティ全般

 

結果

ビッグファイブとクリエイティビティの関係を調べたところ以下の傾向が見られた。

  • ビッグファイブのうち「開放性」が高いほど、全体的にクリエイティビティも高い傾向があった。具体的には、開放性が高いほど、拡散的思考・クリエイティブな行動・達成・自己評価における数値が高かった。
  • ただし、クリエイティブな自己評価のうち、数学と科学におけるクリエイティビティは開放性と関連がなかった
  • なお、可塑性(外向性と開放性の複合)が高いほど、全体的にクリエイティビティ高い傾向があった。ただし、拡散的思考で計測した「独創性」と、数学と科学におけるクリエイティビティの自己評価にはあまり関係していなかった。

 

要約・考察

この研究では、創造性(クリエイティビティ)を調べる上で、発想力・独創性・クリエイティブな行動・達成・自己評価という複数の側面で調べているのが特徴的です。

 

研究では、性格傾向として開放性が高い人には以下のような傾向が見られると分かりました。

  • 発想力、独創性が高い:アイデアを出すときにたくさん思いつくことができ、他の人とは違う独創的なアイデアを思いつきやすい
  • クリエイティブな行動と達成:小説を書く、デザインする、衣装を作る、曲の歌詞を書く、インテリアを作る…などの創作に興味を示し、実際に評価される
  • クリエイティブな自己評価:ユーモア、創作活動などでクリエイティビティに自信を持っている(ただし、科学の分野は除く)

 

つまり、開放性が高く知的好奇心が高い人ほどクリエイティビティを発揮できるのです。

ただし、数学や科学の分野におけるクリエイティビティ(の自己評価)は、開放性の高さと関連していませんでした。これは、「数学や科学の分野ではクリエイティビティとは関連していない」という思い込みが影響していると考えられます。思い込みがあるせいで、科学の分野への関心が妨げられているのでしょう。

 

創造性を発揮するのは外向型?内向型?

また、開放性と外向性を合わせて考えたときの、クリエイティビティとの関連も注目ポイントです。

  • 外向性だけではクリエイティビティ全般が高いとは言えないが、開放性と外向性が合わさるとクリエイティビティが高くなる
  • ただし、独創性に関しては開放性だけが高いときよりも、外向性と開放性がどちらも高いときの方が劣る

 

理由としては、ただし外向性と開放性がどちらも高い場合、思いついたことを実践する行動力が最も高くなるからだと考えられます。ただし、独創的なアイデアを思いつく能力は、開放性が高くて外向性が低いの方が得意だと言えます。なぜなら、内向的な人は独自の世界観に没頭して新しいものを考え出すのが上手いからでしょう。

ですので、自分の性格が外向型か内向型かによってアプローチを変えてみるのがオススメです。例えば、外向的な性格ならアイデアの数や行動力で勝負し、内向的な性格ならアイデアの質で勝負してみましょう。

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