「まじめ=うつ病になりやすい」は誤解?11万人のデータが示した「うつと性格」のつながり

精神力

「まじめすぎる自分って、うつになりやすいのかな…」

そんなふうに感じたことはありませんか?

実はこれ、よくあるけれどちょっとした誤解です。うつになりやすいかどうかは、「まじめかどうか」よりも、不安を感じやすいかどうかがカギになるんです。

 

実際に、2015年に発表されたヘルシンキ大学などの大規模な研究では、計画的でコツコツ努力できるまじめな人は、むしろうつ病にかかりにくいことがかかっています。問題はまじめさではなく不安に引っ張られすぎる性格なのです。

 

大切なのは、「不安とうまく付き合っていく方法」を知ることです。この記事ではまじめさを上手く活かしながらうつ予防をする方法を紹介して行きます。

もし今、気分が落ち気味だったり、自分の性格に自信が持てなかったりするなら、きっとこの内容がヒントになります。無理せず読んでみてくださいね。

 

うつ病になりやすいのは、不安になりやすい性格と、まじめ「ではない」性格

2015年に発表されたヘルシンキ大学などの大規模な研究では、「性格」と「うつのなりやすさ(=抑うつ症状)」の関係が調べられました。

内容

この研究では、人の性格を5つのタイプに分けて(=ビッグファイブ)、それぞれがうつとどう関係しているかを調べました。その5つの性格とは以下の通りです。

  • 外向性(=人と関わるのが好きで、活動的)
  • 神経症傾向(=心配しやすく、気分が不安定になりやすい)
  • 勤勉性(=計画的で、コツコツ努力できる)
  • 協調性(=まわりの人と仲良くしようとする)
  • 開放性(=いろいろなことに興味をもちやすい)

これらの性格と、うつの症状(=気分が落ち込んだり、やる気が出なかったりする)がどう関係しているかを調べました。過去の10件の研究をもとに、合計11万7899人のデータを集め調べました。参加者の平均年齢は49歳で、男女はほぼ半分ずつでした。

また、対象となった人たちを数年にわたって追いかけ、その人たちの性格とうつの症状を比較しました。

 

結果
  • 神経症傾向(=心配しやすく、気分が不安定になりやすい)が高いほど、うつの症状が強くなりやすい
  • 外向性(=人と関わるのが好きで、活動的)が低いほど、うつの症状が出やすい。
  • 勤勉性(=計画的で、コツコツ努力できる)が低いほど、うつの症状が出やすい
  • このような傾向は、ある一時点だけでなく、数年後のデータでも同じように見られた。
  • さらに、うつの症状があった人は、その後の性格に変化が出ることもあった。たとえば、
    • 人と関わるのがめんどうになる(外向性が下がる) 
    • イライラや不安が増える(神経症傾向が上がる)
    • まわりの人との協力が苦手になる(協調性が下がる)
    • 計画的に行動できなくなる(勤勉性が下がる)

 

考察

この研究から分かったことをまとめると、次のようになります。

  • 人の性格は、うつのなりやすさに関係している。
    • 特に神経症傾向(=心配しやすく、気分が不安定になりやすい)が高いほど、うつのリスクが高い
    • また、外向性(=人と関わるのが好きで、活動的)が低いほど、うつのリスクが高い。
    • 勤勉性(=計画的で、コツコツ努力できる)が低いほど、うつのリスクが高い
  • また、うつになると、逆に性格が変わってしまうこともある。これは「うつが心に傷あとを残す」という考え方(=傷跡モデル)に近い。
  • ただし、すべての人がうつによって性格が変わるわけではなく、影響の出方は人によって違う。

気分が不安定になりやすい性格の人ほどうつ病になりやすいというのは直感通りの結果でしょう。ただ、計画的でまじめな性格の人ほどうつのリスクが低いというのは意外です。というのも、一般的にはうつ病になりやすい人はまじめな性格の人が多いと言われています。

しかし、うつになりやすい人はまじめな人が多いというのは厳密には違います。まじめさと不安のなりやすさを区別して考える必要があります。

  • 勤勉性が高い人:まじめで計画的でコツコツ努力ができる。
  • 神経症傾向が高い人:心配しやすく気分が不安定になりやすい。

神経症傾向が高い人は、人目を気にし、失敗したことを思い悩む傾向があります。仕事の失敗も長く引きずるので、周りから見るとまじめな人に見えてしまうのでしょう。

それに対して、勤勉性が高い人は、物事に慎重に取り組み、計画性があります。慎重な一面があるので、周りから見ると不安になりやすい人に見えてしまうかもしれません。しかし、実際には計画立ててリスクを避けながら行動できる人です。神経症傾向が高くなければ、もし失敗しても次に活かす反省ができるでしょう。

 

【実践】「まじめすぎるからうつになる?」と思ったあなたへ

ステップ1:自分の「まじめさ」の中身を見てみよう

まずは、自分のまじめさが「いい方向に働いてるもの」と「しんどくなっちゃうもの」に分けられないか、考えてみましょう。

 

ノートやスマホのメモに、こんなふうに書いてみてください。

最近あったこと 不安から? 努力や計画?

プレゼンが不安で何度も準備した

△(不安) ◯(準備)

ちょっとしたミスで一日中落ち込んだ

◯(気にしすぎ) ✕(ただ落ち込んだだけ)

自分の「まじめさ」の中にある、不安から来るものだけを見つけて、「これは強みじゃなくて負担になっているな」と自覚することが第一歩です。

 

ステップ2:モヤモヤをメモして、「感情」から「データ」に変える

気分が落ちてるときは、頭の中にモヤモヤがいっぱいで、どこからどう考えたらいいか分からなくなります。そんなときは、「気分メモ」をつけてみましょう。1日1回、3分でOK

たとえば、こんな感じです:

  • 【今日の気分】★★☆☆☆
  • 【気になったこと】先輩に注意されたのがずっと頭から離れない
  • 【ほんとはどうだった?】アドバイスっぽかったし、他の人にも言ってた 【よくあるクセ】「怒られた=嫌われた」と思っちゃう
  • 【次に活かせる考え】「アドバイスは成長チャンスってことかも」

こうやって「モヤモヤを言葉にして見える形」にするだけで、だいぶラクになります。

 

ステップ3:「不安になりやすい自分」のために、先回りして準備してみよう

不安を感じやすい人ほど、「ちゃんと準備できてる」ことが安心につながります。

  1. ステップ1の「努力や計画?」の項目で✕だったところを注目しましょう。
  2. たとえば、「ちょっとしたミスで一日中落ち込んだ」が✕だったとします。
  3. この場合、ただ落ち込んだだけで次に活かす準備はできていなかったということです。
  4. 自分のまじめさでどのように解決できるか考えてみましょう。(例:ミスの原因を思い出して、次にミスしないための行動プランを考える)

 

そして、新たな不安が出てきたときは、「どうすれば安心できるか?」をセットで考えるようにしてみましょう。

たとえば:

  • 「プレゼンで失敗したらどうしよう」→「10分だけでもリハーサルしておこう」
  • 「急に質問されたら怖い」→「予想されそうな質問を3つ考えておこう」

ポイントは、「不安を消そう」とするんじゃなくて、「不安があっても行動できるようにする」ことです。これは、「気にしすぎを直す」よりずっと現実的で、成功体験にもつながりやすい方法です。

 

【まとめ】

まじめさや責任感は、本来あなたの大きな強みです。

でも、同時に不安を抱えやすいという性格があると、それが「しんどさ」になってしまうこともあります。

だからこそ大切なのは、「不安になりやすい自分」を否定せずに、ちょっとだけ工夫して、ラクになる方法を見つけていくこと。

完璧じゃなくて大丈夫。まずは、今日できたことを一つだけ認めてあげることから、始めてみませんか?

あなたの毎日が、少しでも軽く、安心できるものになりますように。

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