今回は起業のアイデアはあるが、自分にないスキルや資質を持つ仲間を探している人に向けた内容です。性格的に起業に興味を持ちやすい人の傾向を知ることで、効果的に声をかけることができます。
実践編では、具体的な起業ケースを取り上げながら、必要となるメンバーをシミュレーションしています。ゲームでパーティーを編成するような感覚で、自分の理想のチームを考えてみましょう。
起業仲間を誘うなら「外向的・好奇心旺盛・勤勉」な人が狙い目
起業して一緒にビジネスを進める人を選ぶ際には、もちろん能力は重要です。同時に、「こんな性格の持ち主と一緒に起業したい」というビジョンも重要です。
それに、身近に自分の欲しい能力を持っている人はなかなか少ないものですが、性格であればそれなりに付き合いが長い相手であれば理解することができます。
性格から起業仲間を選ぶアプローチは理にかなっています。なぜなら、性格からその人が起業に興味を持つかどうかがわかるからです。
2025年にカタール大学の研究者によって発表された論文によると、起業家を目指すかどうかは性格による影響を受けることがわかっています。
内容
2万2000人を超えるカタール大学の学生を対象。メールでアンケートを送り、起業したいと思う傾向と性格がどのように関わっているかを調べた。
結果
起業に興味を持ちやすいのは以下の性格の持ち主でした。
- 外向性(=人と話すのが好きで活発)が高い。
- 開放性(=新しいことに興味を持ちやすい)が高い。
- 勤勉性(=きっちり計画建てて動く)が高い。
- 協調性(=人と協力するのが得意)が高い。
考察
注意点として、この研究は起業に興味を持ちやすい性格は何かを調べただけです。なので、起業に向いているかどうかまでを調べたわけではありません。しかし、起業に興味を持ちやすいかが性格によってわかれば、起業のパートナーとして誘う人を効果的に選ぶことができます。
外向性や開放性が高いほど起業に興味を持ちやすいのは想像通りでしょう。よりアクティブでアイデアが豊富な人の方が、「新しいビジネスを始めたい!」という動機も強く持っているはずだからです。
しかし、勤勉性や協調性が高いほど起業に興味を持ちやすいのは意外でした。勤勉性が高い人は慎重な傾向があり、リスクが高いスタートアップよりも既存の会社に入ることを目指しそうなものです。おそらく、勤勉性が高い人は自己効力感や達成意欲があるため、一からビジネスを作るということにも意識が向きやすいのでしょう。
一番意外なのは協調性です。人に合わせることが好きな協調性が高い人は、他人の下で働くことや既存の会社の一員として加わることに意識が向かいそうなものです。しかし、起業する上で協調性が高いことは大きな武器になります。
なぜなら、協調性が高いことによる他者への共感スキルはビジネスの武器になるからです。実際に、「デザイン思考」という考え方では、ユーザーの立場に立って共感することが重要だと考えられています。
「デザイン思考」を取り入れて創造・共感・実行のサイクルを回す
- 共感:ユーザーのニーズや課題を理解するためにインタビューや観察を行う。
- 問題定義:ユーザーのニーズや課題を明確に定義する。
- 創造:定義された課題に対する解決策を考える。
- プロトタイプ:アイデアを形にしてプロトタイプを作成する。
- テスト:プロトタイプを実際に使用してもらい、フィードバックを得て改善する
デザイン思考の実例としては、「ベティクロッカー」のパンケーキミックスのエピソードがわかりやすいでしょう。
ベティクロッカーはアメリカの大手製粉メーカーです。卵や油などの材料を混ぜるだけで、本格的なブラウニーやパンケーキを作れる商品が売りでした。混ぜるだけで簡単にパンケーキが焼ける商品は日本でも人気ですよね。
- しかし、当初アメリカの主婦からの評判がイマイチでした。なお、当時のケーキミックスには粉末卵が入っており水を加えるだけでパンケーキが作れてしまうというものでした。
- 評判がイマイチな理由を探るため、顧客の意見をよくよく聞いてみたところ、「あまりにも簡単すぎて調理の際に罪悪感を覚える」という意見がありました。(=共感、問題定義)
- そこであえて粉末卵なしでケーキミックスを作り、「卵を割って水を加える」作り方に変更しました。つまり、あえて主婦の作業を増やしたのです。(=創造)
- これによって「ちゃんと料理をしている」という実感を味わわせることができ、おまけに新鮮な卵を使うから、よりふわふわになるというメリットも提供できました。(=プロトタイプ、テスト)


ベティクロッカーの事例では、ユーザーとなる主婦の人を調査し、「簡単すぎて罪悪感を覚える」という意見に共感するところから始めました。また、共感力だけでなくほかの性格的なスキルもデザイン思考で役立ちます。
- 共感→インタビューなどの調査は外向性が高い人が得意。
- 問題定義→ユーザーの感情に気づき、真のニーズを捉えるのは協調性が高い人が得意。
- 創造→真のニーズを踏まえて解決策を出すのは開放性が高い人が得意。
- プロトタイプ、テスト→実際に試作品を作り、試行錯誤を繰り返すのは勤勉性が高い人が得意。
以上のような役割分担を意識しながら、どのような性格の人を自分のビジネスに取り込んでいくべきなのかを考えてみましょう。
【実践】起業仲間を誘ってみよう
ステップ1:ビジネス構想のケースで自分のアイデアをまとめてみよう
まずは自分のビジネスアイデアを構想してみましょう。そして、そのアイデアの実現にどんな人材が必要か考えてみましょう。ここでは架空の起業ケースを例として出してみます。
例
- 地元の食材を使った小さなカフェを作りたい→地元産の野菜やフルーツを使ったスイーツや軽食のカフェを開く
- 手作り雑貨やアクセサリーの販売→自分や友人の作品をネットやイベントで販売する
- 健康や趣味に特化したオンラインサービス→ヨガや料理、英語学習などテーマごとのオンライン講座を運営する
ステップ2:チーム作りに必要な人物イメージを固めてみよう
パーティーを編成するような感覚で、どんな人柄を持つ人がいいのかを考えてみましょう。
- 外向性→PR・営業・ユーザーへの意見調査
- 開放性→アイデア・企画
- 誠実性→実務・管理・分析
- 協調性→チーム調整・ユーザーへの共感
外向性
- 新しい顧客やユーザーとの初対面の打ち合わせ
- イベントやセミナーでのネットワーキング
チームのアイデアやプロジェクトを外部に説明・紹介するプレゼンSNSやブログ、動画で発信する際のプロモーション活動
開放性
- 新サービスや新商品のアイデア出し
- 既存の方法や常識にとらわれず、斬新な企画を提案
- 問題解決のためのクリエイティブなアプローチを考案
- チーム内ブレインストーミングのリード
勤勉性
- 予算管理やスケジュール作成
- タスクの進捗チェックや締め切り管理
- チームの成果物や書類、データの正確さを確認
- 作業の手順書作成やマニュアル整備
協調性
- メンバー同士の意見の食い違いを仲介
- チーム内の雰囲気作りやコミュニケーション促進
- 外部パートナーや協力者との関係維持
- トラブルやストレスのある場面でのサポート
- ユーザーへの共感
ステップ3:自分のビジネス構想に最適なメンバーを配置してみよう
地元の食材を使った小さなカフェを作りたい
→欲しいパートナー:
- メニュー開発やレシピ考案が得意な人(開放性高め)
- 集客や宣伝が得意な人(外向性高め)
- 会計や在庫管理が得意な人(勤勉性高め)
手作り雑貨やアクセサリーの販売
→欲しいパートナー:
- 商品アイデアやデザイン力のある人(開放性高め)
- 写真撮影やSNS投稿で宣伝できる人(外向性高め)
- 発送や在庫管理をきっちりできる人(勤勉性高め)
健康や趣味に特化したオンラインサービス
→欲しいパートナー:
- 講座コンテンツを作る人(開放性高め)
- 受講者とのコミュニケーションやサポートを担当する人(協調性高め)
- サイト運営やスケジュール管理を担当する人(勤勉性高め)
ステップ4:パートナー候補を見つけてみよう
起業仲間として誘う友だちや知り合いに心当たりはあるでしょうか。性格を判定する際には以下の基準を参考にしてみましょう。
外向性
- 会話が多く、初対面でも自己表現を恐れない
- 人前でアイデアを話すのが苦ではない
- 新しい人や場に積極的に関わろうとする
- ミーティングで意見を率先して出すか
- SNSやイベントで積極的にネットワークを広げているか
開放性
- 新しいアイデアや未知の体験に興味を示す
- 創造的な提案をよくする
- 柔軟な思考で異なる意見を受け入れる
- 新しい分野やトレンドの話題に積極的に参加するか
- 「こうしたら面白いかも」とアイデアを出す傾向があるか
勤勉性
- 約束や締め切りを守るか
- 計画的に物事を進めるか
- 小さな作業も丁寧にこなすか
- 提案や作業の進捗をきちんと管理しているか
- プロジェクトでの責任感や準備の仕方が丁寧か
協調性
- 他人の意見や感情を尊重するか
- チームでのトラブルを避け、協力的に動くか
- 支援や助言を自然に提供するか
- 会話中に相手の意見を受け入れる姿勢があるか
- チームワークや共同作業を楽しんでいるか
まとめ
起業の仲間集めでは、スキルだけでなく「性格」からアプローチするのが有効です。研究によれば、外向性・開放性・勤勉性・協調性の高い人は起業に興味を持ちやすく、デザイン思考のプロセスでも各性格が異なる役割を発揮できます。
例えば、カフェや雑貨販売、オンラインサービスといった身近なビジネスでも、外向的な人はPRや営業、開放的な人はアイデア、勤勉な人は管理や運営、協調的な人はチーム調整やユーザーへの共感といった分担が可能です。
ゲームでパーティーを組むように、性格をヒントに最適な仲間を見つければ、アイデアを実現できるチーム作りがスムーズになります。

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