今回は企業の経営層の方に向けた内容です。企業理念をしっかり決定することだけでなく、その理念に沿った行動をとることの重要性を解説します。
理念とその実践をセットにして考えることで、社員が1つの思想を持ってまとまった組織を構築することができます。
理念と取り組みが一致しているほど、企業の収益も高い
理念がただのキャッチコピーとして設定されているだけで、実践が伴っていない事業はよく見られます。
例えば、以下のような企業環境がわかりやすいでしょう。
- 「革新性」を掲げているのに…アイデア提案の場はあるが、上層部が承認せず実行されない
- 「成長」を掲げているのに…研修制度やスキルアップ環境が未整備
企業理念の実践は軽視してはいけません。会社の雰囲気だけでなく、業績に直接関係してくるからです。
2013年にシカゴ大学やノースウェスタン大学などの研究者たちがEIEF(イタリア銀行が設立した経済と金融の研究機関)と共同で行った研究では、組織が掲げている理念が実践されている企業ほど、経営成績が高いことが示されています。
内容
企業理念が実際の職業のパフォーマンスとどのように関わっているのかなぜ関わっているのかについて調べた。
- 企業が宣伝している価値観を調べる
- 「上が言っていることとやっていることは一致しているか?」(理念と取り組みの一致)を従業員視点で評価。
- その評価と業績(利益率や株式市場での評価など)を比較
結果
- 掲げている価値観(宣伝)そのものは、業績とは関係がなかった。→「私たちは誠実です!」と書いてあるだけでは意味がない。
- 企業理念と取り組みが一致が一致しており、従業員が経営層を「信頼できる」と評価している場合、企業のパフォーマンスは高まっていた。→利益率が高く、株式市場でも評価されやすい。
- 上場企業ほど企業理念と取り組みが一致していなかった。→短期的に株主に成果を見せるプレッシャーが影響している可能性がある。
考察
つまり、どんな企業理念を掲げているかは重要ではなく、掲げている理念と実際の取り組みの一致が大事だということです。
また、上場企業において特に理念と実践の不一致が見られたのは、短期的な業績を出すことへのプレッシャーがあるからだと考えられます。
というのも、上場企業(一般に株式を広く公開し、株式市場で自由に売買できる会社)では、上場企業は四半期ごとの決算発表が義務付けられており、投資家から業績のプレッシャーを受けやすい構造だからです。
株主である投資家からの監視が強まり、短期的な利益や株価を優先しがちになるため、「掲げている理念」と「実際の行動」がズレやすくなるのでしょう。
ブラックフライデーに「買わないで」という広告を出したパタゴニアのキャンペーン
実例として、パタゴニアが行った「このジャケットを買わないで」というキャンペーンが印象的です。
「パタゴニア」とはアウトドア用品を手掛けるアメリカ発祥のアウトドアブランドです。イヴォン・シュイナードによって創業され、機能性と実用性に優れたデザインが特徴です。パタゴニアは環境問題にも積極的に取り組んでいることで知られます。例えば、リサイクル素材の使用やオーガニックコットンの採用、環境保護団体への寄付などを行っています。
パタゴニアは「私たちは故郷である 地球を救うために ビジネスを営む」という理念を持っています。
そんなパタゴニアは、ブラックフライデー(アメリカの感謝祭の翌日の金曜日のことで、小売店などで大規模な安売りが実施される日)にニューヨーク・タイムズ紙 「このジャケットを買わないで」というタイトルで広告を投稿しました。他の企業は安売り大セールを繰り広げる中、パタゴニアは大量消費を防ぐための政策をしたのです。
理由は、消費者の大量消費の問題に対して疑問を投げかけ、自社の理念を守るためです。「製造を削減し、より高品質なものを生み出していく」という理念に沿ったものでした。


パタゴニアの事例のように、企業理念を忠実に守っていく姿勢は、消費者にも伝わり、短期的な利益を逃したとしても長期的な信頼に繋がっていくでしょう。
【実践】企業理念を明確にして、日々の行動に落とし込もう!
ステップ1:理念を自分の経験と結びつけよう
経営者・マネジメント層が「なぜこの理念を掲げるのか」を、自分自身の体験や課題意識と結びつけて言語化する。
例
- 「海外市場の展示会に参加した際、自社製品が「古い」と言われ、最新のテクノロジーを取り入れた競合製品に注目が集まっていた。」
- →革新性を求め、アイデアを歓迎する文化を作る
- 「自分が若手社員だった頃、挑戦したい気持ちはあったが制度や環境が整っておらず、失敗から学ぶ機会を得られなかった。」
- →社員が成長できる環境を整え、会社全体の成長につなげる
- 「出張先で深刻な水質汚染や大気汚染を目の当たりにし、企業活動が地域社会や自然環境に与える影響を実感。」
- →持続可能な製品を作り、地球環境を守る
メッセージとともに理念を社内外に共有しましょう。共通理解を作ることで、意思決定がぶれず、よりまとまりのある組織になります。
ステップ2:理念をもとに企業としての取り組みを決定しよう
例
- 革新性:毎週、業務の10〜20%を「実験」に充てる(新しいツール試用、プロセス改善、アイデア検証など)。成果が小さくても「試したこと」をチーム内で共有し、失敗から学んだ点をオープンに話す。
- 成長:毎週末新しい知識・技術に関する勉強会を開く。
- 環境保全:「地球環境を守る」ことを企業理念に掲げ、売上の1%を環境保護団体に寄付。自社製品の修理サービスを提供し、「大量消費を煽らない」という誠実な姿勢を貫く。
ステップ3:すべての社員が理念に沿った目標を設定しよう
企業単位で行っていくだけでなく、社員一人ひとりが企業の理念に沿った行動プランを決めましょう。
例
- 革新性:成果が小さくても「試したこと」をチーム内で共有し、失敗から学んだ点をオープンに話す。
- 成長:年に一度、業務の枠を超えた新規プロジェクトに挑戦し、自分自身の「新市場開拓」を体験する。
- 環境保全:個人消費においても「持続可能性」を基準に選ぶ(環境に配慮した製品を買う、リサイクルに参加するなど)。
ステップ4:社員の行動に注目し、理念に沿った行動を評価しよう
理念に沿った行動や成果を社内で評価・表彰してみましょう。
例
- 理念に沿った意思決定やプロジェクトの成功を、社内ニュースで発信する
- 表彰制度を作る。
小さな成功でも称賛することで、理念への長期的コミットメントが強化されます。
まとめ
企業理念は単なるスローガンではなく、行動と結びついたときに初めて組織を動かす力になります。研究でも示されているように、理念と実践が一致している企業ほど、業績も高まり、社員の信頼や結束も強まります。
逆に、理念を掲げるだけで行動が伴っていないと、社員にも顧客にも「口だけ」と映ってしまい、長期的な信頼を失うリスクがあります。
パタゴニアの事例のように、理念を貫いた行動は、短期的には利益を逃すかもしれませんが、長期的にはブランド価値と顧客の信頼を高めます。
経営者・マネジメント層に求められるのは「理念を自分の言葉で語り」、それを「組織の行動に落とし込む」ことです。小さな行動の積み重ねが、理念を現実にし、企業の持続的な成長につながります。

コメント