今回はスタートアップの創業者や経営者に向けた内容です。具体的にイメージしやすいビジョンを作ることによって、メンバーが一丸となって高いパフォーマンスを上げる組織を作ることができます。ビジョンを作るときに企業が陥りがちな間違いを避けることで、圧倒的なチーム力を発揮していきましょう。
「誠実、成長、革新…」価値観だけのビジョンでは成果は出せない
企業のWebサイトなどを訪問すれば企業のビジョンが書かれています。ビジョンは経営者として企業のメンバーに周知してもらう必要がある大切な要素です。
重要なのは、そのビジョンが具体的にイメージすることが可能かという点です。
例えば、「顧客満足」という抽象的なワードではなく、「製品を使って笑顔になってもらう」と具体的なイメージを示すことが重要なのです。
具体的なビジョンの例
- 「顧客満足」→「製品を使って笑顔になってもらう」
- 「質の高い成果」→「『ここの製品を選んだことが人生で最良の決断の一つだった』とユーザーが友人に語るような製品を開発する」
2017年にペンシルバニア大学ウォートン校などの研究者たちによって発表された論文によると、イメージしやすいビジョンを設定することが業績を高めることが知られています。
内容
カリフォルニア州にある151の病院(最終)を対象。
- 病院のウェブサイトに掲載されているビジョンと価値観を表記を確認。イメージしやすいワードと価値観を示すのワードの多さを調べた。
- 病院ごとの成果を評価するために、心筋梗塞で入院した患者の再入院防止がどれだけ達成されたか(退院後30日以内に再入院しなかった患者の割合)を指標にした。
結果
- ビジョンの中に、価値観を示すワードが少ないほどイメージしやすいワードが増え、パフォーマンスの質は高くなった。
- 具体的には、心筋梗塞の患者の再入院の件数が少なくなっていた。
- しかし、この効果は価値観が4つ以下の場合にのみ有効。
- 価値観の数が多い場合、イメージしやすいワードの言葉は少なくなり、再入院防止の効果は弱くなってしまった。
- 大多数の病院のビジョンはイメージしやすいワードよりも、概念的な言葉が圧倒的に多く用いられていた。
(※論文のうち、実験1の内容をまとめています。)
考察
研究のポイントをまとめると以下の通りになります。
- イメージしやすいビジョンの病院のほうがより成果を挙げていた。
- しかし、価値観を示すワード(誠実、成長、卓越など)をビジョンに含めすぎるとイメージしやすいビジョンの効力が薄れてしまう。
つまり、単にビジョンを提示するだけでは不十分で、具体的なイメージを持たせることが重要だということです。この研究は病院を対象にしていますが、企業でも同じことが言えると考えられます。
多くの企業では、抽象的なワードを含めすぎることで目標をぼんやりとさせてしまっています。
価値観のワード(誠実、成長、革新など)は3~4つに絞り込みましょう。多すぎる価値観でメンバーの解釈が分散するのを防ぐことができます。
【実践】具体的なイメージのビジョンを設定してみよう!
ステップ1:企業が目指す最終的な目標は何かを考えよう
まずは、企業の目標を一文で書き出してみましょう。そして、その文の中に誰もが頭の中で具体的にイメージできる動作や状況を入れてみましょう。
△抽象的でイメージしづらい例
- 「質の高い成果の達成によって卓越性で際立つ病院になる」
- 「業界をリードする革新的な企業を目指す」
- 「顧客満足度を最大化するサービスを提供する」
- 「組織の効率性と生産性を向上させる」
- 「社員の能力開発を通じて持続的成長を達成する」
◯具体的でイメージしやすい例
- 「顧客が製品を手に取り、笑顔で友人に勧めたくなる体験を提供する」
- 「患者が笑顔で退院し、家族や友人に医療体験を喜んで話す姿を思い描きながら、私たちは毎日働く」
- 「子どもたちが安心して遊べる安全な遊び場をつくり、親がその場面を目にして微笑む」
- 「お客様が製品を手に取り、使った瞬間に『これが欲しかった!』と声を上げる光景を想像する」
- 「社員がチームで協力して新しいアイデアを形にする瞬間を見届ける」
- 「地域の人々が私たちのサービスを使って日常の不便さから解放され、笑顔で暮らす未来を描く」
ステップ2:価値観を絞り込もう
企業のコアとなる価値観は5つ以上出さず、3つ以内に絞りましょう。また、それぞれの価値観に簡単な具体例を添えて考えるといいです。
△価値観のワードが多すぎる例
- 「誠実さ、創造性、挑戦、顧客志向、チームワークを大切にしながら業務を遂行する」
- 「イノベーション、透明性、責任感、協働、効率性、顧客満足を重視する」
- 「安全性、品質、環境配慮、倫理観、社員幸福、持続可能性を実現する」
- 「多様性、公正、成長、挑戦、顧客重視、スピードを行動の指針とする」
- 「革新、信頼、誠実、協力、学習、柔軟性、成果を追求する」
◯3つに絞り込んだ例
- 「スピード重視」→プロトタイプ(試作品)は48時間以内に作る
- 「顧客志向」→ユーザーの声を週に1回チームで共有
- 「創造性」→今までにない機能や体験を提供する
このように価値観を絞ることによって一貫性が生まれます。上の3つの価値観からは「素早く試作品を作り、顧客の意見を聞き、それをもとに新しいアイデアを生み出す」というストーリーが伺えます。一貫性が生まれるので、メンバーも企業があるべき態度を頭の中に描きやすいです。
まとめ
ビジョンは抽象的な言葉ではなく、誰もが具体的にイメージできる内容であることが重要です。価値観の数を絞り込み、一貫性のあるメッセージを示すことで、組織全体の方向性が明確になります。
具体的でイメージしやすいビジョンは、メンバーを動かし、企業の成果向上につながります。

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