部下について来てもらえるリーダーを目指したい人に向けた内容です。
- 「自分が正しい指示を出しているつもりなのに部下が動かない。」
- 「小さなミスを注意しただけだが空気が悪くなる。」
- 「相談されず、気づいたら部下が勝手に判断していた。」
リーダーとしてこんな風に悩んでいませんか?重要な点として、そもそも人は権力のある人の命令に従うのが嫌いです。ですので、権力や立場だけで人を動かすことは難しいでしょう。
今回は権力と信頼という2つの軸で、チームにおける人材を4つのタイプに分類した理論を紹介します。自分が「温かいリーダー」タイプとして頼られているか、それとも「冷たい支配者」タイプとして嫌われているかがわかります。
「権力✕信頼」でわかる人材の4タイプ
ノースカロライナ大学などの研究者たちが発表した論文によると、チームにおける人材は「権力」と「信頼」によって4つのタイプに分類できることを示しています。
- 権力:立場の強さのことで、形式的に与えられるもの。他者に報酬や罰をあたえる権力を持つ。相手を従わせる立場にある。
- 信頼:尊敬や実際の評価のことで、周りの人から与えられるもの。集団に貢献する能力を持つ。ついていきたいと思わせる。
便宜上、研究結果をもとに権力と信頼による4つの分類に、筆者が独自にネーミングを行ってみました。このブログ内では以下のネーミングで理解を進めていきましょう。
- 温かいリーダー:高い権力と高い信頼を持つ。
- 冷たい支配者:高い権力を持つが信頼が低い。
- 支える参謀:権力をもたないが信頼が高い。
- 静かなフォロワー:権力も信頼も持たない。
重要なのは権力をふるって命令することではなく、チームに貢献して信頼を集めることです。例えば、以下のようなリーダーでは部下はついてこないでしょう。
- 業務の非効率性やチーム内の雰囲気の悪さなどを察知できない。
- さらに上の上司に何も提案せず、現状を変えようとしない。
- そのくせ、上司という立場を誇示して偉そうにしている。
実際に、研究では冷たい支配者タイプはチーム内がぎくしゃくし、温かいリーダータイプではチームがいい方向に向かうことが示唆されています。
なお、研究では「地位」「温かさ」「支配性」といった言葉が使われていますが、やや分かりづらいのでこのブログ内では以下のように呼びかえています。
| 研究用語 | わかりやすい名称 | 説明 |
|---|---|---|
| Power(権力) | 権力 | 職位や権限による「動かす力」 |
| Status(地位) | 信頼 | 周囲が自発的に認める「ついていきたいと思わせる力」 |
| Warmth(温かさ) | 好感度 | 感情的なつながりの度合い |
| Dominance(支配性) | 影響力 | 「この人が場をリードしている」と感じさせる強さ |
内容
アメリカの大学生114人を対象。個人の権力と信頼のレベルが、影響力と好感度の評価にどのように影響するかを調べた。
- 架空の人物(人物「L」と設定)を作り出して権力と信頼をそれぞれ設定。
- 方法としては、Lについて、対象者に4つの説明文を読んでもらって印象を操作した。:
- 権力について:「Lは所属する組織で、資源をコントロールできる正式な役職を持っている」or「持っていない」などと説明。
- 信頼について:「Lは組織内で非常に尊敬され、賞賛されている」or「あまり尊敬されていない」などと説明。
- 方法としては、Lについて、対象者に4つの説明文を読んでもらって印象を操作した。:
- 対象者に、人物との交流を想定して影響力と温かさを評価してもらった。
- 影響力:主張が強い、自信があるor従順である、臆病である、自信がない
- 好感度:親しみやすい、敬意を持てる、感じが良いor無礼である、非協調的である、口論が好きそう
- また、Lの今後の行動に対する評価をしてもらった。
結果
権力と信頼の組み合わせによる、影響力(影響力がありor従属的)と好感度(高いor低い)との評価は以下のようになった。
| 信頼低い | 信頼高い | |
| 権力高い | 冷たい支配者。影響力があるが、好感度が低い(権力に頼った影響力を持つが、権力が不当だと思える) | 温かいリーダー。影響力があり、好感度が高い(非常に影響力があり、権力にも説得力がある) |
| 権力低い | 静かなフォロワー。従属的で、好感度が高い(他者に対する影響力を持たず、他人を制限しない) | 支える参謀。影響力があり、好感度が高い(他人に対する影響力を持ち、権力を行使しない) |
- 冷たい支配者(高い権力で低い信頼)の人は、影響力があるものの、好感度が最も低く評価された。
- 温かいリーダー(高い権力で高い信頼)は影響力があり、好感度が高いと評価される傾向がありました。
また、それぞれのタイプの今後の行動に対する評価は以下の通りになった。
- 温かいリーダーに対しては、好意的な行動が期待され、やり取りも快適だと評価した。
- 冷たい支配者に対しては、強制的で悪意のある行動をしてきそうと評価した。
考察
研究のポイントを簡単にまとめると以下のようになります。
- 権力の有無に関わらず、信頼が高い人は(周りから評価や尊敬を集める人)は、影響力があり好感度が高い。
- 能力があり貢献意識が高い人は、周りから頼りにされるでしょうし、その人の言うことに説得力があるからです。
- まずは「支える参謀」を目指し、権力を得たときにも信頼を損ねず「温かいリーダー」になることを目指しましょう。
- 権力だけを持つ「冷たい支配者」は「冷たい」「怖い」と見られやすい。
- 温かいリーダーに対しては、好意的な行動を期待。
- つまり、やりとりをしていて心地よくついて行きたいと思わせる傾向がありました。仮にミスをしても包み隠さず報告し、頼られる人物になると考えられます。
- 冷たい支配者に対しては、悪意のある行動を警戒。
- つまり、「ミスをしたら感情的に怒られるのではないか」「ストレス解消のために叱っているのではないか」などと警戒され、頼られない可能性があります。
リーダーが学ぶべきこととしては、まず権力を得ると自ずと嫌われるという事実です。基本的に、権力を振るう人は好ましくないと考えられます。人々は支配されることを嫌い、自由を制限してくる権力を持つ人を嫌う傾向があるからです。
よって、信頼が伴っていない権力者は嫌われる傾向があります。部下としては、その権力に相当する能力や貢献意識が欠けているのに、自分の自由を侵害してくる存在だからです。
一方で、権力を振るうに相当する信頼を持っている人に対しては抵抗を抱きません。むしろ、温かい人物だと評価するようです。自分よりも有能で知識があり、集団を助ける意識がある上司であれば、その上司に従うことに不満を抱きにくいでしょう。
ですので、頼られるリーダーになるためには、権力を得るだけでは不十分で周りからの評価を高める必要があるということです。権力だけを持ち尊敬されていない人は最も否定的に評価され、コミュニケーションを取ろうとしても拒否される可能性があるからです。
【実践】部下がついてくるリーダーになるために行動を起こそう!
チームへの貢献が大事です。
ちなみに筆者は以前、給食事業所で調理補助の仕事をしていました。PCを使うのが好きだったので、情報の整理や効率化を積極的に提案することでチームに貢献することを意識していました。具体的には以下のようなものです。
- 情報が古くなっていた食材カット早見表の内容を更新し、Excelで表を作り直して上司に提出した。
- 最新の早見表からメンバーがすぐ確認できるようにした。
- メニューの盛りつけ法について、今ではマニュアルが存在せず一人のリーダーが経験則として知っているだけであったため、マニュアルを作成した。Notionで調理・盛りつけの手順をまとめたノートを作り、メニュー名で検索できるように情報を一元化した。
- 紙のノートに書いていた人は以前のメモを探す手間が省けた。
- 新人にとっても自分でメモを作成しなくても、いつでも確認できるマニュアルとなった。
- 作業が偏って不満が出ていたところを、担当者に話をして作業を分担してくれるように頼んだ。
このように、権力を行使しなくても日々の作業に潜む非効率を発見して改善することができます。
ステップ1:現場の「小さな不便」を見逃さず、課題発見しよう
例
- 社内の共有フォルダや資料が整理されておらず、どれが最新版かわからない。
- 業務内容を理解している人が限られており、特定の人が休むと仕事が止まる。個人の経験頼みで共有されていない。
- 一部のメンバーに作業負担が偏っており、不満が溜まっている。
いずれも「誰も文句は言わないけど、みんなが不便を感じている領域」です。上層部や管理職には見えにくい部分なので、現場に近い立場で情報を集めていきましょう。
ステップ2:自分のスキルでできる範囲の解決策を形にする
権力を行使しなくても、ツールの知識や整理力を使えば十分に改善可能です。
ポイントは小さな改善から始めることです。スキルは高度なものである必要はなく「情報をまとめるのが好き」「人よりも遠慮せず意見を言うことができる」など些細なことで構いません。
例:情報が古く不正確
- 実務者と確認したり、必要な資料を精査したりして、重複や古いファイルを整理。
- 最新版の管理方法を決めて「更新日・責任者・用途」を明示する。
- アクセス権限を整え、誰でも見つけやすいフォルダ構成に整える。
例:ノウハウが属人化
- データ整理+検索機能でアクセス性向上をはかる。
- 自分の担当業務を分解し、手順をWordやNotionでまとめる。
- 実際に部署の人に使ってもらい、改善フィードバックをもらう。
例:作業負担が偏る
- 全体ミーティングで「お互いに協力しよう」とぼんやり提案するだけでなく、実際に偏りを生んでいる担当者に伝える。
- 「お互いサポートできる体制にしよう」と前向きな言い方で発信し、今後は作業の偏りを指摘してもらいやすい雰囲気を整える。
ステップ3.改善後の「効果」を共有し、信頼を築こう
改善をやりっぱなしではなく、評価を聞くことが大事です。気恥ずかしいかもしれませんが、自分が行った改善について「その後どうですか?」と声を掛けてみましょう。
例:
- マニュアルを共有したあと、「使い勝手どう?」と聞いてみる。
- 「新人がすぐ確認できるようになった」と声をもらう。無駄な資料探しの時間が減り、「助かった」と感謝される。
- 業務の標準化が進み、後輩がすぐに仕事を覚えられるようになったと評価をもらう。
- 資料を整えた後、「レイアウト見づらくない?」と意見をもらう。
- 「この人が資料を整理してくれたのだ」と認識され、信頼の源になる。
- 作業分担の話をした後、「その後トラブルはない?」と聞いてみる。
- 「前より気持ちよく仕事ができる」と言われる。
- メンバーの不満が減り、チーム全体の空気が和らいだ。
いい反応が返ってきた場合、「この人はチームのための貢献をしてくれる」という周囲の認識が生まれたと言えます。逆に、反応が微妙な場合は自分が行った改善が的外れであったのかもしれません。今一度、ステップ1の課題発見のステップからやり直してみましょう。
静かなフォロワーも小さな貢献で「信頼」を集めよう
なお、「今は静かなフォロワータイプで、今からリーダーを目指して行く」という立場にある人もいるでしょう。
その人は、いきなり権力を求めようとするのではなく「支える参謀」を目指してみましょう。形式的な昇進だけではなく、集団で貢献して集団の中で信頼性を高めていくというアプローチをとっていきます。役職を与えられた後でも、信頼を損なわず温かいリーダーであり続けることが重要です。
まとめ
- 権力だけでは人は動かない。信頼が伴ってこそ影響力が発揮される。
- 「温かいリーダー」は影響力と好感度の両方を持つ。
- 「冷たい支配者」は影響力はあっても嫌われやすい。
- 現場の小さな不便を見つけ、改善することが信頼構築の第一歩。
- 「静かなフォロワー」として低い立場にある人は、まずは「支える参謀」として貢献し、やがて「温かいリーダー」を目指そう。
信頼を得るリーダーは、命令ではなく「貢献」で人を動かします。権力をもったときにこそ、「自分は形だけのリーダーになっていないか?」と自問してみましょう。

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