今回は、自分の仕事にやりがいを感じられていない人に向けた内容です。
- 毎日同じような作業をこなしているけど、それが誰の役に立っているのかわからない。
- 「将来のため」「スキルアップのため」と言われてもピンとこない。ご褒美や評価でもあまりやる気が上がらない。
- 誰かの役に立ちたい気持ちはあるが、今の仕事でそれが実感できない。
仕事の意義について考えることが重要です。しかし重要なのは、自分のキャリアアップのためと考えることではなく、どのように社会の役に立っているかを考えることなのです。
「仕事の意義」がパフォーマンスを2倍に高める!
2008年にノースカロライナ大学チャペルヒル校の研究者が発表した論文によると、自分の仕事がどんな意義があるのかについて考えることで、仕事のパフォーマンスが高まることがわかっています。
※論文に載せられている実験のうち実験①と実験③を解説します。
実験①
大学の資金調達の電話担当者33人(平均年齢20.6歳)を対象。
被験者を以下の3つのグループにランダムに振り分けて、それぞれの介入を行った。
- 仕事の意義を考えるグループ:仕事が他者にもたらす利益に関する2つのストーリーを読むグループ。
- 個人的な利益を考えるグループ:仕事が自分にもたらす利益に関する2つのストーリーを読むグループ。
- 介入を受けないグループ(対照群):仕事に関するストーリーを読む代わりにアンケートに回答してもらった。
被験者には、介入の1週間前と1か月後に、仕事のパフォーマンスに関する以下の指標を測定した。
- 寄付件数:翌月に寄付を取り付けることができた件数。
- 寄付総額:翌月に集めた寄付金の総額。
結果
- 仕事の意義を考えるグループでは、寄付件数と総額が増えており、どちらも2倍以上になっていた。
- 個人的な利益を考えるグループと介入を受けなかったグループでは、寄付の件数と寄付金総額についてほとんど変化は見られなかった。
実験③
資金調達の電話担当者34人(平均年齢20.1歳)を対象。その際、被験者の以下の指標を測定した。
- 勤勉性の高さ:勤勉性を測定する尺度に回答(例:「自分は信頼でき、自己規律がある人間だと思う」など)
- 向社会的価値:他人を助けたり、協力的に振る舞ったりするかを測定する尺度に回答。(例:「他人の要望にこたえることは自分にとって重要であり、身近な人を支援しようとする」など)
被験者をランダムに2つのグループに分けて介入を行った。
- 仕事の意義を考えるグループ:※実験①と同じ。
- 介入を行わないグループ(対照群):組織の方針や手続きに関する情報を読んだ。
1週間後、仕事のパフォーマンスに関する指標を測定した。
結果
- 介入を行わなかったグループに比べて、仕事の意義を考えるグループでは、より多くの寄付件数を取り付けていた。
- 性格について、
- 勤勉性が低い場合、仕事の意義を考える効果はより強い傾向が見られた。
- 向社会的価値が高い場合、仕事の意義を考える効果はより強い傾向が見られた。
考察
研究のポイントを簡単にまとめると以下のようになります。
- 「自分の仕事が誰かのためにどのように役立つか」というストーリーを読むだけで、仕事のパフォーマンスが高まる。
- 他人や社会に与える影響について考えることが重要で、スキル獲得やキャリアアップなど個人的利益について考えても効果は薄い。
- 仕事の意義について考えることは、
- もともとの責任感が低くルーズな人ほど、特に効果が高い。
- 「社会の役に立ちたい」という意識が高い人ほど、特に効果が高い。
仕事をしていて、「自分の仕事が他人の役に立っている!」と実感できる人ばかりではありません。
実際、この研究で対象になったのは学生の奨学金に充てる寄付を集める仕事でした。卒業生に電話をかけて寄付をお願いし、奨学金に使われるお金を集める仕事です。大事な仕事ではあるものの、「人の役に立っている」という実感がほぼ見えないため、今回の実験対象になったようです。
「誰かに影響を与えた」「誰かの価値につながった」という実感が大事
実験において、「仕事の意義を考えるグループ」が読んだストーリーは、担当者が調達した資金によって、奨学金を受けることができた学生が書いたものでした。
- 「奨学金によって工学や神経科学の教育を受け、多様な課外活動に参加できた」
- 「奨学金によって州外の大学に進学し、他の奨学生とのつながりを築けた」
対して、「個人的な利益を考えるグループ」が読んだストーリーは、過去の電話担当者が書いたもので、仕事で得た知識やスキルを活かしてキャリアを成功させたという内容でした。
- 「仕事で得た知識やスキルを生かして不動産業界で満足度が高く収入のいいキャリアを築いた」
- 「この仕事の経験によって大学院での教育スキルや組織能力が向上した」
「知識やスキルのアップにつながる」という考え方も一見効果がありそうに見えます。しかし、実際に仕事のパフォーマンスに関わったのは前者でした。
仕事の意義について考えることには、主に2つの効果があるようです。
- 社会的影響の実感:自分の行動が他者にどのような利益をもたらすか。
- 社会的価値の実感:自分の貢献が他者にどのように評価されているか。
社会的な影響や社会的な価値を考えることで、働く人は他者とのつながりをより強く感じるようになります。すると、仕事のモチベーションが高まるのだと考えられます。
つまり、パフォーマンスを高めようと思えば、仕事やプロジェクトがどのような意義を持つかについて考えるべきなのです。
【実践】「この仕事をしていてよかった!」の声を集めてみよう!
おすすめの習慣プラン
- 先輩や同僚とご飯に行って、仕事の話になったときには、
- →「この仕事しててよかったと思った瞬間ってありますか?」と聞いてみる。
- 仕事で「やる気出ないな…」と感じた瞬間には、
- →自分の仕事をする中で、誰かに与えられる影響や価値を1つ思い出す。
ステップ1:先輩や同僚から、誰かの役に立った体験談を聞いてみよう
先輩や同僚の声を聞いてみましょう。
- 「この仕事しててよかったと思った瞬間ってありますか?」
- 「誰かに感謝されたことってありますか?」
筆者もスイミングスクールでアルバイトをしていたことがありますが、「子どもに対する指導は自分にはあまり向いていない」と思えてモチベーションが下がっていた時期があります。
しかしあるとき、小学校を卒業してスクールをやめる子どもから手紙をもらったことがあります。「泳ぎ方のポイントが分かりやすかった」「コーチと話をするのが楽しかった」という言葉をもらい、「他人の役に立っていたんだな」と実感しました。
このようなストーリーは、自分が体験することができなくても、他の同僚や先輩なら体験しているかもしれません。「昔、担当したお客さんに感謝されたことがあって…」などと話してくれたときには、そのストーリーの概要をメモしておきましょう。
ステップ2:自分の仕事の「影響」と「価値」について考えてみる
重要なのは、「自分の仕事が他人にどのような影響を与えるか」「どのように評価されるか」という2点を考えることでした。自分が過去に体験したこと、もしくはステップ1で取材したストーリーから、自分の仕事の影響と価値を考えてみましょう。
例:寄付を募る電話担当
- 行動:電話営業をかけて、卒業生に寄付をしてもらった。
- → 影響や価値:奨学金になり、学生が進学できる。学生の将来の選択肢を増やし、活躍してもらうことができる。
例:スイミングスクールでの指導
「泳ぎ方の指導がわかりやすかったと言われた」
- 行動:子どもがわかりやすいように比喩を使うなど、説明の仕方を工夫した。
- → 影響や価値:相手が理解できた。楽しかったと感謝された。
まとめ
- 「自分の仕事が誰かの役に立っている」と感じるだけでパフォーマンスは向上する。
- 「自分の成長」よりも「他者への影響」を意識する方が効果が高い。
- 特に、勤勉性が低い人・人の役に立ちたい気持ちが強い人に効果が大きい。
この研究は、「仕事が誰かの役に立っている」と実感することが、実際のパフォーマンス向上につながることを示しています。日常の中で他人の体験や感謝の声に触れることで、やりがいは後から作ることができるのです。

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