よりよい選択を求めすぎる…それ、「強迫緩慢」かも
「勉強法にこだわりすぎて、まったく勉強が進まない…」
というかたへ。もしかすると強迫性障害のひとつかもしれません。
強迫性障害とは異様な確認行動を繰り返してしまう病気です。
強迫性障害として有名なものには、確認強迫、不潔強迫、不完全強迫、加害強迫などがあります。
これらの例を挙げてみると、
確認強迫:カギを閉めたかどうか不安になって何度も確認に戻る
不潔強迫:手が不潔だと思い込んで何度も手洗いをする
不完全強迫:ミスを過剰に恐れ、資料などを何度も確認する
加害強迫:車の運転中に自分が誰かを引いてしまったのではないかと車から降りて何度も確認する
強迫緩慢:よりよい方法を探して決断できなくなる
などの症状が挙げられます。
なかでも「ノートを完璧にまとめないと気が済まない」「より効率的な勉強法を考えているうちに勉強時間がなくなってしまう」などの症状は「強迫緩慢」の一種と言えます。
強迫緩慢とは、ベストな方法を考えすぎて決断できなくなる状態です。端から見ると何もせずにボーッとしているように見えます。
僕もこの症状にかなり苦しんでいました。学生のときは、
- ノートを完璧にとろうとして罫線に沿って段落分けをしていた
- 効率的に復習できるようにオレンジのペンを使っていたが、あとから「ここも大事かも…」と思い立つと、鉛筆の部分をわざわざ消してオレンジで書き換える
- ノートよりも教科書ベースで勉強した方がいいと思い立つと、緑のペンで教科書を塗り赤シートで隠す方法をとり始める
- しかし緑のペンでは赤シートで完全に隠れないため、この方法もやめた
- 次は緑のテープを使うようになったが扱いづらくこれも断念
- 結局どの方法でやるべきか分からなくなり、勉強中はそのことばかりを考えるようになり勉強が進まない
- 「自分は何をやっているんだ…」という自己嫌悪に陥る
このような強迫行動は、学生を卒業して趣味の読書をするときにも現れます。
- 内容を覚えておくために読書ノートをとるべき!
- マインドマップがいいと聞いたのでマインドマップ形式でノートをとり始める
- しかし、幅に限りのある紙のノートだと思うようにまとめられずイライラしてしまう
- ノートのサイズをいろいろと試すようになる、読書中も「やっぱりB5の方が持ち運び安いかな」「いやA4の方が書きやすいし」ということばかり考えるようになる
- 次にアプリのマインドマップでノートをとるようになる
- 音声入力を使うようになるものの本の隅から隅まで記録しないと気がすまなくなり、苦痛になってくる
- アプリだと夜中に復習するとブルーライトの関係で寝付きが悪くなるのではないかと心配になる
- 結局紙のノートがいいか、アプリのマインドマップがいいのか迷って、そのことばかりを考えるようになる
- 自己嫌悪に陥る
今はましになったものの、当時は勉強法が迷走していたと言わざるを得ません。
何度もノートを変えるので、最初の数ページしか書かれていないノートがたくさん溜まっていきました。
何より辛いのは勉強がまったく進まないということです。2時間の勉ん今日時間を確保しても、大半を勉強法を悩むことに費やすので当然はかどりません。
段々と「これだけこだわっているのに結果がついてこない…」「また同じことを考えている…自分は何をやっているんだ」と鬱的な気持ちになってきます。
実際に強迫性障害は3~5割がうつ病を併発するといいます。
ベストではなく、ベターを目指せ
強迫緩慢になってしまう原因は完璧を求めすぎていることです。
最近は勉強法ブームと言ってもいいぐらい、書店には「○○勉強法」の本が並んでいます。といっても世の中に完璧な勉強法はありません。
完璧を求めすぎると、「この方法だとここがダメ」「あの方法だとあそこがダメ」といつまでも実行できなくなります。
にも関わらず、「もっと完璧な方法はないか?」とこだわり続けて、勉強法の本を買い込むことになってしまいます。
こうなると勉強法の勉強をしているような状態といえるでしょう。
僕がやるべきことは、ベストな方法ではなくベターな方法を考えることでした。
今の僕はブログをノートがわりにして他のことはほとんどやっていません。
もちろんブログだと本の内容すべてを写すわけにはいきません。
だからこそオリジナリティが生まれますし、大事なところを抽出する勉強ができます。
完璧なノート・情報の網羅を求めていた僕に響いたアインシュタインの言葉があります。
「本やノートに書いてあることを覚える必要があるかね?」
これを聞いて「本に書いてあるんだから、わざわざノートに写しとる必要はないじゃないか」と考えるようになりました。完璧を目指す必要はないと目を覚ませたのです。
あなたの時間を奪う「反芻思考」
強迫緩慢でもっとも厄介なのは、より効率的な方法を考え過ぎるあまり、大半の時間をとられてしまうことです。
僕で言うと、「紙のノートがいいかな」「だとしたらどのサイズを使おうかな」「やっぱりアプリのノートを使った方が効率的かな」などと考え過ぎていました。
これは一種の反芻思考と言えます。反芻思考とは同じような考えをループしてしまうことです。
- 「紙のノートだとシンプルにまとめられるな…」
- →「でもスペースがせまいし、整理が大変。やっぱりアプリで管理しようかな」
- →「アプリだと目に悪いしやっぱり紙のノートを使おう」
- →…「また同じようなことを考えて時間を無駄にしてしまった…」
といった感じ。
反芻思考はうつ病の原因ともなります。強迫性障害がうつ病と併発しやすいのは反芻思考による側面もあるのでしょう。
反芻思考の先伸ばし法
反芻思考から抜け出すために効果的なのは、あらかじめ反芻思考をする時間を決めておくことです。
例えば、「午後9時からはノートのまとめ方に迷う時間」という風に決めておくのです。
事前に決めておくと、他の時間に「やっぱりこうした方が効率的かな」と強迫緩慢に陥りそうになったときは、「今はとりあえず勉強を進めて9時になったら考えよう」と思い直すことができるのです。
結果、強迫緩慢になって時間を無駄にするということがなくなり、自分を責めることもなくなります。
実際に、アメリカのペン州立大学の研究でも反芻思考の先伸ばしは効果が認められています。
- 反芻思考の傾向が強い被験者を集める
- 被験者に「午後3時からの30分間は仕事のプロジェクトでの不安について考える」などと事前に決めてもらう
- 結果、事前に反芻思考の時間を決めた被験者は余計な反芻思考が減り、思考がクリアになった
という内容。
とりあえずは反芻思考の先伸ばしを使って、強迫緩慢を防ぎましょう。
【今日のクエスト】勉強法に迷う時間をあらかじめ決めておこう
【獲得経験値】
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