「赤ちゃんの夜泣きが大変…」という方へ。
今回は夜泣きに関する科学的な内容をご紹介します。今よりも子育てがラクになる知識です。
赤ちゃんは寝不足だからグズる
「少し目を離しただけで泣き始める」「原因もなくグズっている」などの悩みをお持ちでしょう。
特に理由もないのにご機嫌斜めになってしまう理由は、睡眠不足にあるかもしれません。
人間が感情をコントロールするのは前頭葉という領域です。言うまでもなく赤ちゃんは前頭葉が未発達です。睡眠が不足すると前頭葉の働きが弱まり、我慢が効かなくなってしまうのです。
赤ちゃんから子どもにかけての理想的な睡眠時間を知っておきましょう。
- 生後0~3ヶ月:最低14時間
- 生後4~11ヶ月:最低12時間
- 1~2歳:最低11時間
- 3~5歳:最低10時間
これは昼寝も合わせた時間です。
睡眠時間が少ないと、機嫌が悪くなり様々な問題を起こしやすくなります。
ノルウェーの調査結果によると、1歳半のときに総睡眠時間が13時間以下だったり、夜に起きることが多い場合は、5歳になった時点で問題行動が多かったとか。
睡眠の時間帯
1歳までの間は起きる時刻と眠る時刻がちょうど1周ぐらいがちょうどいいです。7時に起きて19時に眠るという感じです。昼寝を加えれば13時間に届き、問題行動はグッと減ります。
2歳からは時間帯的には朝の7時に起きて、夜の8時ごろには眠り、適度に昼寝を加えるという生活が理想的です。(11時間睡眠)
生後まもない頃は体内時計の機能が未発達のため、睡眠時間が不規則になりがちですが、14時間は睡眠を確保しているようにしましょう。
朝の日差しと夜の電子機器がポイント
良質な睡眠でキーとなるのは光です。朝はしっかりと日差しを浴びて、夜はテレビなどの光を浴びないようにするのがポイントです。
睡眠にはメラトニンというホルモンが関わっています。メラトニンが増えると眠くなるようにできているのです。
メラトニンは光に反応して分泌が抑えられます。朝日差しを浴びるとメラトニンの分泌がストップして、体がシャキッと目覚めます。
逆に夜は電子機器を制限して光を浴びないようにすることでメラトニンをつくり、熟睡できるようになります。
「子どもが夜になっても寝てくれない」というのはテレビやスマホなどの光が原因かもしれません。また、就寝前になったら部屋の明るい光をつけておくのではなく、間接照明の優しい光に切り替えるといいです。
就寝儀式ですぐに眠る&夜泣きが減る
なかなか眠ってくれない場合は就寝儀式を意識するといいです。
例えば、「お乳を飲む→お風呂に入る→着替えをする→本を読み聞かせてもらう→眠る」という風に一定のルーティンを決めておきましょう。
一定のルーティンがあることによって、「そろそろ眠るんだな」ということを体で覚えさせることができるからです。
実際に就寝儀式の効果が確認されたアメリカの実験をご紹介しておきます。
- 7ヶ月から1歳半の赤ちゃん、1歳半から3歳の幼児405人を対象にした実験。
- 赤ちゃんを2つのグループに分け、片方のグループには就寝儀式を行ってもらう
- 結果、就寝儀式を行ったグループは行っていなかったグループに比べ、寝付きにかかる時間や夜泣きの回数、夜中に起きている時間が減った
親が超ラクになれる「ねんねトレーニング」
「ねんねトレーニング」というのは赤ちゃんが自分で寝られるようになるためのトレーニングです。ねんねトレーニングによって寝付きが悪い、夜泣きをするなどの睡眠の問題が改善するといいます。
ねんねトレーニングの有効性について調査したオーストラリアの研究があります。
- 328組の母親と7ヶ月の赤ちゃんを対象にした実験
- 7ヶ月の時点で睡眠に問題を抱えていた親子を2つのグループに分けて、片方のグループのみにねんねトレーニングを実践してもらう
- 結果、ねんねトレーニングを行ったグループは行っていないグループに対して、1歳になった時点で睡眠の問題が減少した
- また、母親の産後うつのリスクも減少した
ねんねトレーニングは赤ちゃんを1人で寝させるトレーニングなので、母親の負担は少なくなります。それゆえ産後うつを発症する確率が減るのは納得です。
赤ちゃんも腹をくくって1人で眠るようになるのでグズることが少なくなるみたいです。
「赤ちゃんに1人で寝させちゃっていいの?」と心配になるかもしれませんが大丈夫です。むしろ添い寝をすると赤ちゃんが乳幼児突然死症候群を発症して命を落とす危険性もあります。
ねんねトレーニングには3つの方法があります。自分にあった方法を使ってみてください。
- 赤ちゃんを1人で寝させて夜中の間は泣いたとしても対応をしない
- 赤ちゃんを1人で寝させて、泣いたときには部屋に入って声をかけるが段々と声をかける間隔を広げていく
- 赤ちゃんの近くに居てもいいが、段々と距離を広げて最終的には外から外から声をかけるだけにしていく
オススメは1と2の方法です。1の方法なら夜中は赤ちゃんの泣き声から自由になれるのでストレスが溜まることがなくなります。
ただ、夜中の間完全に無視するのは気がひけるという気持ちがあれば2の方法をとってみてください。
ねんねトレーニングの長期的な影響は?→夜中放っておいても5歳時点で問題なし
「赤ちゃんを1人にさせちゃっていいの?」「発達上問題があるのでは?」と心配になるでしょう。答えは「大丈夫」です。
ねんねトレーニングの長期的な問題点はあるのかを調べたオーストラリアの研究によると、ねんねトレーニングを行った赤ちゃんが5歳になった時点でもストレスレベルや問題行動に差はなかったそうです。
「夜泣きしたら抱きかかえるべき」は間違い!夜中ほっといても愛着形成に問題はない
「愛着形成」とは「ピンチになってもお母さんが居てくれる」という安心感
「愛着形成」とは親が子供にとっての安全基地となってあげることです。
子どもが自立して安定した精神を持つには幼少期の「愛着形成」が必要不可欠です。例えば、小さい子供が転んで泣いてしまったときに、母親がヒステリックにならずに励ましてあげると子供は安心しますよね。
「自分がピンチになってもお母さんがいれば大丈夫」という感覚が形成されれば、大きくなってからも安定したメンタルを持つようになります。
逆にお母さんが気分によって対応を変えたり、子供を無視してしまうと愛着形成がうまくいかず、極端に人を恐れたり、避けたりするようになります。
大きくなってからの人間関係は親との関係で決まるという考えが、愛着形成の考え方です。
夜中多少放っておいても愛着形成に問題はないと判明
愛着形成のことを考えると、夜中グズっているときに親が助けてあげないのは大きな問題のように思えます。しかし実際は日中にしっかりと子どもと触れ合ったり、子供のニーズに答えてあげたりすれば夜中多少放っておいても大きな問題はないのです。
2009年に発表されたアメリカの論文を見てみましょう。
- 1歳の子供44人を対象に寝ている間の親の対応などを観察
- 愛着形成のレベルも計測
- 結果、夜中にすぐに対応しない親の場合でも子供との愛着形成に問題はなかった
やや規模は小さい実験ですが、さきほどのねんねトレーニングの長期的影響を調べた実験と合わせて考えると、「夜泣きはすぐに対応しなければ後々精神的な問題となる」とは言えなさそうです。
夜はお母さんもしっかり休み、昼間に愛着形成は昼間に行う
夜中に赤ちゃんの対応をしていると親の睡眠時間も失くなってしまいます。夜泣き対応の疲れから日中に笑顔が失くなったり、子供に辛辣に当たったりすることの方が問題です。
日中はドッシリと構え、夜中はしっかりと休むというメリハリが大事なのです。
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