学校で習うことが覚えられない。自分は頭が悪いんだ…
成績不振で学校に行きたくない
学校で病む原因の1つは頭がいい生徒と自分を比べてしまうことです。
そこで今回は「記憶力は才能じゃなくて、仕組みを知っていれば誰でも身につけられるんだよ~」というお話をします。
本当の愚者は「自分がなぜ愚者なのか」を理解できていない人
成績が思うように伸びないと「自分には理解力がないんだろうか?」「記憶力が弱いんだろうか?」と心配になります。
すぐに才能のせいにしてしまうのには理由があります。それは頭のなかで起こっていることが目に見えないからです。
「同じように授業を受けて同じように勉強しているはずなのに自分だけ理解できていない」という状況になると、そりゃ不安になりますよね。
頭のなかでどのように記憶されるのかを知っておけば、不安になることも防げます。
「才能がないから」とか「記憶力が悪いから」というふわふわしたものの原因にするのは今日で止めましょう。
記事を読んでいただければ「記憶できていないのはまだ長期記憶に入っていないんだな」と現実的な反省ができるようになるでしょう。
記憶の二重貯蔵モデル
記憶の仕組みは、「二重貯蔵モデル」という考え方で説明されます。
二重貯蔵モデルとは、「短期貯蔵庫と長期貯蔵庫という2つがあるんだよ~。知識を身につけるためには長期貯蔵庫に送らないといけないんだよ~」という考え方です。
短期貯蔵庫は、瞬時に覚えてすぐに忘れる場所
頭のなかに入ってきた情報の最初の行き先は短期貯蔵庫です 。
短期貯蔵庫は数十秒ほど記憶を保持することができます。
短期貯蔵庫が覚えられる情報量は5~9個と分かっています。
例えば、「スーパーで買うものなんだっけ?」と考えたときに、
- トイレットペーパー
- ボールペン
- マヨネーズ
といった具合に、3つぐらいの情報なら覚えておけますよね。しかし買い物が終われば買い物リストの情報はきれいに忘れてしまうでしょう。短期貯蔵庫は、あくまで短期的に必要な情報を頭にとどめておくための場所なんです。
瞬時に覚える能力は個人差なし!?
短期貯蔵庫に保持しておける情報量は、個人差は多少ありますが、そこまで大きい差ではありません。
つまり、習ったばかりのことをその場で覚えておけるかどうかはあまり個人差がないのです。
一見物覚えがいい人に見える人も、決してその場で覚えているわけではないのです。(この点は後述します。)
長期貯蔵庫は、メンテナンスが大変だけどずっと忘れない場所
短期貯蔵庫はすぐに忘れてしまう場所でした。
対して、長期貯蔵庫に入った情報は原則として忘れることがありません。
長期貯蔵庫に入る条件は、その情報が何度も使われることです。
例えば、自分の名前や誕生日は長期貯蔵庫に入っていますから、一生忘れることはありません。名前は何回も名乗りますし、誕生日も毎年祝うから忘れないのです。
ですから、知識を身につけるためには短期貯蔵庫から長期貯蔵庫に送る必要があるのです。
長期貯蔵庫に送る・長期貯蔵庫をメンテナンスする
知識を覚えているという状態は、「長期貯蔵庫に入っていていつでも取り出せる状態になっている」と言い換えることができます。
では、気になる長期貯蔵庫を使いこなす方法をお伝えしましょう。
復習で長期貯蔵庫への道を補強する
「覚えられない!」という人は、覚えていないのではなく、覚えているけど記憶をたどれていないだけかもしれません。
言わば、長期貯蔵庫に入っていても長期貯蔵庫への道をたどれないため、取り出すことができていないのです。
実際、ど忘れは完全に忘れてしまっているわけではありません。例えば「江戸幕府を開いたのは誰?」と聞かれたときに「うーん出てこないなぁ」とど忘れしてしまうことはあります。でも「徳川家康だよ」と教えられれば、「そうだった!」と思い出せるはずです。
もし完全に忘却していれば答えを聞いても「誰それ?」となるはずですよね。
そして、記憶をきちんとたどれるようにするためには復習が大切なのです。
一度しか長期貯蔵庫から取り出していないと、どんどん埋もれていきます。しかし何度も取り出すことで長期貯蔵庫への道がメンテナンスされ思い出しやすくなるのです。
実際に、エビングハウスという人が行った記憶力の研究で、 一度覚えたことを復習しないと思い出せなくなることが分かっています。
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すでに長期貯蔵庫に入っている情報とくっつける
長期貯蔵庫を使いこなす2つめの方法は、すでに知っている情報と結びつけることです。
初めて見た情報もすぐに覚えてしまう「物覚えがいい人」がたまにいますよね。
こういう人は長期貯蔵庫に送るのが上手い人です。
その秘密は、すでに長期貯蔵庫に入っている他の情報と結びつけているからです。
すでに頭のなかで関連する情報があると、新しい情報も簡単に覚えられます。
例えば、以下の内容を理解して覚えてみてください。
馬の祖先であるヒラコテリウムは始新世初期に登場した
ヒラコテリウムは前足に指が4本、後ろ足には指が3本あった
それに対して、始新世後期から漸新世にかけて登場したメソヒップスは前後ともに指が3本になった。その後も進化するなかで指が退化し、最終的に中指だけが残った。
また、ヒラコテリウムは柔らかい葉を食べていたが、より進化的な馬の祖先は硬いイネ科の植物を食べられるように歯が変化した。
古生物や地球環境に馴染みがない人が覚えるのはなかなか大変かもしれません。
「始新世」「漸新世」という難しい言葉も出てきます。簡単な予備知識を理解しておきましょう。
- 「始新世」「漸新世」は時代区分の1つ。始新世の初期は気温が高く、森がたくさんあった
- 始新世の後期になると、地球が寒くなり森が減って草原が広がった。
- 草原が広がると動物はより速く走るための適応が必要になる。また、草原に生えるイネ科の植物は硬くて消化しにくい。
すると、先程よりも理解しやすくなります。
- 「ヒラコテリウム」が生きていた時代は森が多くて、柔らかい葉っぱを食べていたんだな。
- でも「メソヒップス」の時代になると寒くなって森が減り、草原が広がるようになったんだ。だから速く走るために指が減っていったんだな。草原に生えている硬い植物を食べるために歯が変化したんだな
という感じ。
ようするに何が言いたいかというと、物覚えがいい人は未知の情報を覚えるのが得意なわけではないのです。
自分の体験やすでに知っている知識と結びつけているため、頭のなかに入ってきやすいだけなのです。
見栄を張らずに基礎知識からしっかり覚えよう
自分がまったく理解できない概念を簡単に覚える人を見ると、「頭がいいんだ!」と錯覚します。
しかし、実際には基礎知識を積み上げているだけです。
例えば、英語の長文を見たときに、英単語をまったく知らない人は「なんだこの暗号は!?」と思うでしょう。しかし英単語をきちんと覚えている人は読むことができます。
ですから、勉強でつまづいたときには基礎知識からしっかり押さえましょう。
僕も難しい本を読もうとしたときに「意味わからん!」となることはよくあります。しかしそれは頭が悪いからではなく「基礎知識が足りていないんだな」と考え、すっぱり諦めます。
そして初心者の入門書だったり、子ども向けの図鑑を読んで基礎から理解するようにしています。
ですから、難しい概念を見たとき「こんなの理解できるのは天才しかいない!」と必要以上にビビるのはやめましょう。
今回見てきたとおり、記憶や理解は仕組みがあります。できないときには「基礎から積み上げればできる!」と考えるといいです。
【今日のクエスト】「『天才じゃないからできない』というフワフワした反省は一生しない」と誓おう
今回は読んでいただけただけで結構です。天才神話からいち早く抜けだしましょう。
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