少量の飲酒でもがんのリスクはアップ
お酒好きにとっては厳しいことですが、少量の飲酒であってもがんのリスクは上がってしまうようです。
2020年12月に東京大学が発表した研究によると、低度から中程度の飲酒ががんにどの程度影響を与えられるかということが調べられています。
観察
全国33カ所の労災病院の入院患者病職歴データベースから新規のがん患者の63,232件(平均年齢69歳)の症例を被験者として、がんに罹患していない6万3232件と比較。なお、年齢・性別・診断年・診断病院などは揃えて比較された。
被験者の人生におけるお酒の総摂取量を数値化するために、「飲酒指数」が使われた。飲酒指数は、1日の平均飲酒量(drink/1日)×飲酒期間(year)として定義された。1日あたりの平均飲酒量は、純アルコールにして23gを1drinkとする
純アルコール量23gは日本酒で言うと1合に相当します。
例えば、1日あたり日本酒2合を30年間飲み続けている場合なら、飲酒指数は…
飲酒指数=2drink×30年=60
となります。
結果
- 1drinkの飲酒を10年間続けることでお酒を全く飲まない人に対して何らかの癌にかかるリスクが1.05倍
- 飲酒指数10におけるリスクは、食道がんは1.45倍・口唇・口腔および咽頭がんは1.10倍・喉頭がんは1.22倍・大腸がんでは1.08倍となった
- 飲酒指数60の場合にはがんの罹患リスクは1.2倍
考察
この研究のポイントは日本人を対象にしているというところです。従来の研究でも外国人に対しての飲酒のデメリットは調べられていますが、外国人と日本人ではアルコールの分解能力が違います。アルコールの分解能力が低い日本人ではどの程度飲酒が癌に影響するのかを知ることが重要だったのです。
結果は、一般的に適量とされる飲酒量でもがんのリスクを高めてしまうという厳しいものです。例えば、純アルコール量23gのお酒を10年間飲むと癌のリスクが1.05倍です。
1日純アルコールで23gと言うと、厚生労働省が定めている適量である20gと大体一致しています。つまり、厚生労働省のガイドラインに沿って飲んでいたとしてもがんのリスクはじわじわ上がってくるということです。
1.05倍と言うと「そうでもないな」という印象になりがちです。しかし、10年で1.05倍をなめてはいけません。20年、30年と飲み続けていけばリスクはどんどん上昇すると言えるからです。
また、飲酒指数10で食道がんや口唇・口腔および咽頭がん、喉頭がんなど消化器系のがんが発生しやすいのも注目ポイントです。なかでも食道がんは1.45倍となかなかに高いリスクが出ています。
【今日のクエスト】お酒の飲み方を変えてみよう
お酒好きな人がいきなり飲酒量を0にするというのは難しいでしょう。その代わりに飲む癖を変えてみたり、少しずつ飲酒量を減らしたりするのが重要です。
例:
- お酒は食事のときにしか飲まないようにする
- 水と一緒に飲むことを心掛ける
- 仕事帰りの退勤ルートをスーパーやコンビニの少ないルートに変える
お酒好きの人は習慣的にお酒を飲んでしまう傾向にあります。例えば、ストレス発散でお酒を飲む、眠る前に寝酒をする、風呂上がりに水代わりに飲む、仕事帰りにコンビニに寄ってお酒を買ってしまう…といった具合です。
癖として飲んでいるお酒をやめて、食事のときだけ飲むようにするといいでしょう。
また、お酒と一緒に水を飲む習慣もおすすめです。水と一緒に飲むことで血中アルコール濃度が急激に上昇することを防ぎます。
【獲得経験値】
【関連知識】
↑「適度なお酒は健康にいい!」の統計的な間違いについて解説。今回の記事を読んで、「あれ?でも少しのお酒なら健康にいいって聞いたことあるけど…」と疑問に思われた人は、その説自体が間違いなのでチェックしてみるといいでしょう。
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