親しいときと話すときには、普段何気なくユーモアを織り交ぜながら会話をすると思います。実はユーモアの使いかたによってその人の性格や心理をある程度読むことができるのです。
4つのユーモアスタイル「親和的・啓発的・攻撃的・自虐的」
2003年に発表されたウェスタンオンタリオ大学の研究によると、ユーモアスタイル質問票を作成し、個人のユーモアのスタイルを以下の四つのタイプに分けています。

Individual differences in uses of humor and their relation to psychological well-being: Development of the Humor Styles Questionnaire
Describes the development and initial validation of the Humor Styles Questionnaire, which assesses four dimensions relating to individual differences …
- 親和的ユーモア:他人を楽しませたり、笑い合ったりして友好を築くユーモア(例:ジョークを言う、機知に富んだことを言う、他人と笑い合う、他人を楽しませる)
- 啓発的ユーモア:人生についてユーモラスに考え、笑い飛ばすユーモア(例:ストレスを感じる状況でも面白がる)
- 攻撃的ユーモア:皮肉やからかいなどで、他人をいじるユーモア(例:皮肉を言う、からかう)
- 自虐的ユーモア:卑屈的なことを言ったり、いじられたりするユーモア(例:他人の機嫌をとるために自虐する、他人のネタにされる)
普段何気なく使っているユーモアでも、このように分析してみると面白いですね。「自分はこのスタイルのユーモアを使いがちかも」と心当たりがあったのではないでしょうか。
「ユーモアスタイル質問票」に回答してみよう
研究では、以下の32項目の質問に対して7段階(「まったく当てはまらない」なら1、「完全に当てはまる」なら7)で回答させています。*は逆転項目で、「まったく当てはまらない」なら7、「完全に当てはまる」なら1と処理します。
親和的なユーモア
- *私は普段ほかの人とあまり笑ったり冗談を言ったりしません
- 私はほかの人を笑わせるためにそれほど努力する必要はありません
- *私は自分の面白い話をしてほかの人を笑わせることは滅多にありません
- 私は近しい友人とよく笑ったり冗談を言ったりします
- *私は普段冗談を言ったり人を楽しませたりするのは好きではありません
- 私は人を笑わせることが好きです
- *私は友達と冗談を言い合うことはあまりありません
- *私は他の人と一緒に居るときにたいてい気の利いたことを言うことができません
啓発的なユーモア
- 自分が落ち込んでいるときは、たいていユーモアで元気づけることができます
- 一人で居る時でも人生の不条理に面白がることがよくあります
- 私は動揺したり不幸を感じたりする時はたいてい気分を良くするためにその状況について何か面白いことを考えるようにしています
- 人生に対する私のユーモアのある見方は物事に対して過度に動揺したり落ち込んだりすることを防いでくれます
- 一人でいて気分が悪い時には自分を元気づけるために何か面白いことを考えるようにしています
- *悲しい時や気分が悪い時は大抵ユーモアのセンスが失われます
- 私の経験では状況の面白い側面について考えることは問題に対処する非常に効果的な方法であることが多いです
- 私は他の人と一緒にいなくても楽しく感じます。一人で居る時にも大抵笑えることを見つけることができます。
攻撃的なユーモア
- 誰が間違いを犯したら私はよくその人をからかいます
- *私のユーモアのセンスで人が気分を害したり傷ついたりすることはありません
- 冗談を言ったり面白いことを言ったりするとき私は大抵ほかの人がそれをどう受け止めるかをあまり気にしません
- *誰かが批判したり誰かをけなしたりするためにユーモアを使うのを好きではありません
- 時には状況にふさわしくなくてもとても面白いことを思いついてそれを言わずにはいられないことがあります
- *友達がみんな笑っていても私は決してほかの人を笑いません
- 嫌いな人がいるときはよくユーモアやからかいを使ってけなします
- *自分にとって本当に面白いことでも誰かが気分を害するなら笑ったり冗談を言ったりしません
自虐的なユーモア
- 私は自分がすべき以上に人々に笑われたりからかわれたりしてしまいます
- 家族や友人が笑うと自分を卑下することに夢中になってしまうことがよくあります
- 私は自分の弱点失敗欠点について面白いことを言って人々に好かれたり受け入れてもらったりしようとすることがよくあります
- *私は自分を卑下するためにおもしろいことを言うことはあまりありません
- 私は冗談を言ったり面白くしようとしたりするときに自分を卑下しすぎることがよくあります
- 友達や家族と一緒に居るとほかの人からからかわれたり冗談を言われたりすることがよくあります
- 問題があったり不幸を感じたりすると冗談を言ってごまかしてしまうことが多いので新しい友達でさえ私が本当はどう感じているのかわかりません
- ほかの人に笑わせることが友達や家族の機嫌を保つための私のやり方です
あなたがよく使うユーモアスタイルは?平均値と比べてみよう!
32項目すべてに回答し終わり、逆転項目を処理したら、それぞれユーモアスタイルごとに合計点を算出してみましょう。
研究で1195人の被験者に回答してもらった平均値(男女両方の平均値)はそれぞれ以下の通りです。自分の点数と比較してみましょう(それぞれ56点満点中)。
- 親和的ユーモア:46.4点
- 啓発的ユーモア:37.3点
- 攻撃的ユーモア:28.5点
- 自虐的ユーモア:25.9点
平均値と比べてみて、自分がよく使うユーモアのスタイルを判断してみてださい。例えば、だいたい平均値と同じぐらいだけど「自虐的ユーモア」の点数は平均よりも高い結果になったなら、自虐的ユーモアを使いがちだと言えるでしょう。
「自分のユーモアのスタイルを自分で判断できるものなの?」と不安になるかもしれませんが、心配は無用です。実際に、研究の中の実験の1つとして、被験者本人にユーモアスタイル質問票に回答してもらった後日、恋愛関係にあるパートナーに被験者のユーモア度合いを評価してさせています。すると、被験者本人の回答とパートナーによる回答に高い一致が見られました。
つまり、よく知る人からの客観的な評価とユーモアスタイル質問票における自己評価は、合致しやすいということです。
攻撃的ユーモアや自虐的ユーモアを使う人は、メンタルヘルスに問題が出やすい!?
また、この研究ではユーモアスタイルと性格や幸福度などとの関連性も調べられています。
- 親和的ユーモア:よくうつの傾向が低い、人間関係で親密になる傾向がやや高い。性格的に外向性が高い傾向が強くある。開放性が高い傾向がある
- 啓発的ユーモア:よくうつの傾向が低い、楽観的な傾向が高い、人間関係で親密になる傾向が若干高い。ソーシャルサポートに満足しやすい。性格的に外向性と開放性が高い傾向があり、神経症傾向が低い傾向がある。
- 攻撃的ユーモア:敵意や攻撃性が高い。性格的に調和性と勤勉性が低い傾向があり、神経症傾向が高い傾向がある
- 自虐的なユーモア:敵意や攻撃性が高い、よくうつの傾向が高い、対人感受性や身体化の傾向が高い、人間関係で親密になる傾向が若干高い。ソーシャルサポートに満足しづらい、性格的に調和性と勤勉性が低い傾向があり、神経症傾向が高い傾向がある
なお、四つの全てのユーモアスタイルにおいて、女性よりも男性の方がスコアが高い傾向が見られました。特に、女性と比べて男性は自虐的なユーモアと攻撃的なユーモアを使う傾向があったそうです。
まとめると、親和的ユーモアや啓発的ユーモアを使う人はメンタルが前向きで人間関係もうまくいきやすく、一方で攻撃的ユーモアや自虐的ユーモアを使いがちな人はネガティブな感情に引っ張られやすく、メンタルヘルスに問題が出やすいと言えるでしょう。
性格的には、ビッグファイブにおける神経症傾向が高い人や、調和性や勤勉性が低い人は攻撃的ユーモアや自虐的ユーモアを使いがちなので注意したほうがいいです。
ただ、否定的なユーモアを使うことによってメンタルに影響が出るのか、もともとメンタルが否定的なユーモアを使いやすいのかはこの研究だけではわかりません。どちらにせよ、攻撃的ユーモアや自虐的ユーモアよりも、親和的ユーモアや啓発的ユーモアを積極的に使っていきたいところですね。
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