今回は、よく話す間柄からより親密な関係性にステップアップしたい人に向けた内容です。
- 友人と話していても、天気や最近見たドラマなど当たり障りのない話で終わってしまい、深い話題に発展しない。
- 会話が途切れないようにと気を使うあまり、相手の本音や自分の気持ちを話せない。
- 久しぶりに会った友人と話しても、「最近どう?」のやり取りで終わり、心の距離が縮まらない。
雑談を交わしているけど、表面的な話題にとどまってしまうという悩みを持っている人は多いですよね。そこで今回は「深い会話」の実践について解説します。深いつながりを持つためにはどんな話題をチョイスすればいいか、またどのように自然に切り出せばいいかを知ることができます。
人は「深い会話」の気まずさを過大評価し、楽しさを過小評価する
深い会話とは、表面的なやり取りではなく深く意味のある会話のことです。例えば、人生における重要な体験や、自分だけの価値観、哲学などについての会話です。
- 表面的な会話:天気の話、テレビの話など。
- 深い会話:自分が情熱を持っていること、自分が人生で大事にしている価値観など。
深い友情を作るためには本音で会話しないといけないと思いつつも、深い会話はなかなか実践されません。その理由は、他人と深い話題で話すのが恥ずかしいと思ってしまうからでしょう。
しかし、2022年にシカゴ大学などの研究者たちが発表した論文によると、人はディープな会話を実際よりも気まずいものだと思い込みがちだと示されています。この研究で、複数行われた実験のうち、実験①を解説します。
内容
見知らぬ人との深い会話をどうして避けてしまうのかを調べた。研究者が用意した深く親密な質問リストを用いて、それに沿って会話をしてもらった。
金融業界の経営幹部50人を対象。被験者はお互いに会ったことのない他の被験者とランダムにペアを組み、以下の4つの深い会話の話題について会話した。会話は約10分間行われた。
- あなたの人生で最も感謝していることは何ですか?その理由を相手に話してください。
- 水晶玉が「あなた自身・あなたの人生・未来」などの真実を教えてくれるとしたら、何を知りたいですか?
- あなたがこの相手と親しい友人になるとしたら、相手に知っておいてほしい重要なことは何ですか?
- あなたが他人の前で泣いたことがある場面を教えてください。
会話を行う前に、これから行う深い会話に関する予想をしてもらった(例:相手の話にどれぐらい興味を持つと思うか、相手が自分の話にどれぐらい興味を持つと思うか、会話中にどのぐらい気まずさを感じると思うかなど)。会話をした後、実際にどう感じたかを同じ指標で回答してもらった。
結果
深い会話の前に予想した評価と、深い会話の後に体験した評価を比較したところ、以下の傾向が見られた。
- 被験者は、相手の話に対して抱く興味を過小評価していた。
- また、相手が自分の話に対して抱く興味はさらに過小評価していた。
- つまり、深い会話をするときに、相手が自分に向ける関心も自分が相手に向ける関心も低く見積もってしまうということです。
- 会話の時に感じる気まずさは実際よりも過大評価されていた。
- つまり、深い会話をすると変な雰囲気になるのではないかという心配は無用と言えます。
- 相手に感じるつながりの強さや、会話に対する幸福感は実際よりも過小評価されていた。
- また、実験後に深い会話をもっと増やしたいという願望が強くなっていた。
考察
つまり、人は深い会話を避ける理由として、会話の中であまり楽しめず気まずさを感じるのではないかという誤った考え方を持っていると考えられます。しかし、実際には予想よりも深い会話は楽しく、会話の後には深い会話に対して前向きな考え方になっていました。
【実践】日常の雑談に「深い会話」を自然に組み込んでみよう!
今回紹介した研究では、実験者がお題を出して「お互いに話し合ってください」という形式でした。そのため、実際の会話で相手に問いかけるためには少しアレンジが必要になるでしょう。今回紹介した実験で実際に用いられた深い会話のテーマは以下の4つでした。
- あなたの人生で最も感謝していることは何ですか?
- 水晶玉が「あなた自身・あなたの人生・未来」などの真実を教えてくれるとしたら、何を知りたいですか?
- あなたがこの相手と親しい友人になるとしたら、相手に知っておいてほしい重要なことは何ですか?
- あなたが他人の前で泣いたことがある場面を教えてください。
ステップ1:自己開示する内容を考えよう
深い会話で有効なのが自己開示(自分のエピソードの開示)を実践することです。深い会話において自己開示をする理由は3つあります。
- 相手も自分の話に興味を向けてくれるから:研究でも相手が自分に向けてくれる関心を過小評価してしまうことが示されている。
- 本音で話す雰囲気が作れるから:自分が本音を伝えることによって相手も話しやすい雰囲気になる。
- 相手に考える時間は与えられるから:相手が考えるキッカケや時間を作ることができる。
深い会話の話題は深い質問なだけあって、相手もとっさに回答できるとは限りません。そこで気まずい雰囲気を感じるのが怖い場合、相手が「うーん」と考え込んでしまったときには、「ちなみに俺は…」と自分のエピソードを伝えてみましょう。「自分の話なんて興味ないかも…」と思わずに積極的に打ち明けてみましょう。
以下に筆者の例を挙げておくので、参考にしてみてください。自分の記憶を掘り起こして、自分なりのエピソードを作っておきましょう。
あなたの人生で最も感謝していることは何ですか?
友人があまりできなかった自分に対して、母親が過度に干渉せず一人で遊ぶことを批判しなかったことですかね。社交性に問題があるというふうに判断せず、「勉強して見返せばいいじゃん」という感じだったのがありがたかったです。だいぶ偏屈な性格になってしまいましたが、「誰かと繋がっていないといけない」という感覚に苦しめられず、孤独を楽しむことができる性格になったのは、母親のこのスタンスの影響が大きいかと思います。
水晶玉が「あなた自身・あなたの人生・未来」などの真実を教えてくれるとしたら、何を知りたいですか?
ちょっと変かもしれませんが、自分の体内時計や生まれつきの性格など、遺伝的に決まっていることを知りたいです。先天的に決まっている体内時計や個性を知れば、それを生かすベストな方法を探求できるからです。例えば、自分の体内時計が朝型か夜型かが分かれば、いつ集中力が発揮されていつ休むべきなのかがわかるから、迷わず生活を組み立てられそうじゃないですか?水晶玉でなくても遺伝子検査で確認できそうですが。
あなたがこの相手と親しい友人になるとしたら、相手に知っておいてほしい重要なことは何ですか?
内向的な性格であるため、ひとりの時間が休息のために必須だと理解してほしいですね。遊びの誘いを断ったからといって嫌いになったわけではないし、たまには1人になりたいからといって付き合いが負担になっているというわけではないんです。一緒にいるのは楽しいけど、単純に1人の時間も必要。別々のエネルギー源だと思ってほしいですね。
あなたが他人の前で泣いたことがある場面を教えてください。
あまり人前で泣かないが、小学校の時にサッカーの1オン1のゲームをしたとき、普段なら勝てる相手に負けてしまった時に涙が出た記憶があります。かなり負けず嫌いな性格だと思います。
深い会話なので、自分の哲学や自分の価値観などに触れた内容を考えてみましょう。
ステップ2:自分が作った自己開示から、「雑談→深い会話」の流れを作ってみよう
いきなり「人生で感謝していることは?」と聞くと浮いてしまうため、話題の流れに橋渡しを作ります。ステップ1で考えた自己開示の内容を起点に、雑談をどう組み立てていくかを考えることもできます。
例:「あなたの人生で最も感謝していることは何ですか?」→母親の教育スタンスに関する自己開示をする場合
例えば、母の日で「お母さんにプレゼントとかするの?」みたいな雑談から発展させるなどの展開パターンが考えられます。
- 相手:「お母さんにプレゼントとかするの?(雑談)」
- 自分:「まぁ一応、花買って送るぐらいはしますね。」
- 相手:「すごい!お母さん思いだね。」
- 自分:「母親に感謝はしてますからね。特にうちの母親は僕の友人関係に口を出さなかったところが素敵なんですよ…(自己開示)。
- 相手:「へぇ!いいお母さんだね!」
- 自分:「でしょ?◯◯さんは人生で感謝していることってありますか?親に限らなくてもいいんですけど。(深い会話の質問)」
例:水晶玉が「あなた自身・あなたの人生・未来」などの真実を教えてくれるとしたら、何を知りたいですか?→生まれつきの遺伝子を知りたいという自己開示をする場合
例えば、「朝何時に起きてるの?」「◯◯くんって朝方?それとも夜型?」などと聞かれた時に発展させることができそうです。
- 相手:「朝型?夜型?」
- 自分:「完全に夜型です。朝は魂が抜けてますね(笑)」
- 相手:「わかる、僕も夜のほうが集中できるんですよね。」
- 自分:「ホントですか?思うんですけど、もし自分について何でも分かる水晶玉があるなら、自分の体内時計の遺伝的なリズムを知りたいです。水晶じゃなくて遺伝子検査キットとかでもいいんですけど。(自己開示)」
- 相手:「そこまで知りたい!?(笑)」
- 自分:「遺伝的な体内時計を知れば、自分にピッタリ合った生活を組み立てられそうじゃないですか?(自己開示を続ける)」
- 相手:「たしかに、それ分かったら便利そう!」
- 自分:「◯◯さんは、真実を知れる水晶玉があったら何を知りたいですか?(深い会話の質問)」
- 相手:「え~?難しいなぁ」
- 自分:「自分についてのことなら、潜在能力でも未来でも何でも知れますよ?(深い会話の質問)」
ステップ3:複数の会話のキッカケを想定してみよう
自分が考えた自己開示について、「この自己開示が使えそうな場面はどういったものがあるだろう?」と複数の展開パターンを考えておくと良いでしょう。
例:あまり人前で泣かないが、小学校の時にサッカーの1オン1のゲームをしたとき、普段なら勝てる相手に負けてしまった時に涙が出た記憶があります。かなり負けず嫌いな性格だと思います。
- キッカケ①:「学生の時に部活とかしてた?」→「部活というより小学校の時だけどよく昼休みにサッカーして遊んでたね。そのサッカーでなんだけど…(自己開示)」
- キッカケ②:(職場の休憩室のテレビでサッカーの試合を見ているときに)→「実は僕もサッカーはよくやってたんですよ。小学校のときに…(自己開示)」
- キッカケ③:「スポーツは好き?」→「好きですよ!昔から体を動かすことが好きで小学校のときはよくサッカーをやってましたね。結構負けず嫌いな性格で…(自己開示)」
→「…悔しくて人前で涙が出た数少ない記憶ですね。…◯◯さんは人前で泣いたこととかありますか?悔し涙に限らず、感動とかでもいいんですけど。(深い会話の質問につなげる)」
ステップ4:質問をアレンジして自分がしっくりくる言い回しを探してみよう
実験で使われた質問を、自分が言いやすいように言い回しを工夫してみましょう。同じテーマでも何パターンか言い回しを持っておくと雑談の中で使いやすくなります。
| 実験の質問 | 日常会話向けアレンジ例 |
|---|---|
| あなたの人生で最も感謝していることは何ですか? |
・最近「ありがたいな」と思った出来事ってある? ・感謝していることってある? |
| 水晶玉が真実を教えてくれるなら、何を知りたい? |
・もし未来をちょっとだけ覗けるとしたら、どんなこと知りたい? ・自分の生まれつきの素質を知れるとしたらどんなことを確認したい? |
| 親しい友人になるとしたら、相手に知っておいてほしい重要なことは? |
・もっと仲良くなるなら、お互いに知っておいた方がいいことってあるかな? ・仲良くなる人には知っておいてほしい自分のこだわりとか、クセってある? |
| 他人の前で泣いたことがある場面 |
・最近、感動したことってあった? ・人前で泣いたことってある?感動でも悔し涙でもなんでもいいんだけど。 |
ステップ5:相手が話しやすくなる前置きを入れる
「変なこと聞くけど」「突然だけど」のように枕詞を用意するだけでも会話の切り出しが自然になります。「変に思われるのに抵抗がある」という人は自分が馴染みやすい前置きを作ってみましょう。
- 「ちょっと聞いてもいい?」
- 「ふと思ったんだけどさ」
- 「なんか急に気になったんだけど」
- 「変なこと聞くかもしれないけど」
- 「話の流れとちょっと違うけど」
- 「なんか今の話で思い出したんだけど」
- 「これ、聞いてみたかったんだけど」
- 「突然だけどインタビューしていい?」
- 「心理テストっぽい質問してもいい?」
- 「ちょっと哲学っぽいこと聞いてもいい?」
- 「なんか人生相談みたいな質問していい?」
このような前置きがあるだけでも深い会話に挑戦する勇気が湧いてくるのではないでしょうか。これらの前置きは深い会話のスイッチになるので、相手の気を引いて会話に集中してもらう上でも有効です。
ケーススタディ
紹介したステップを盛り込んだ具体例を紹介します。
あなたの人生で最も感謝していることは何ですか?その理由を相手に話してください。
- 自己開示を用意:小学生の頃、両親が「失敗してもいいからやってみな」と言ってくれたことですね。失敗を叱られなかったおかげで、「間違えること=学ぶこと」という感覚が自然に身につきました。今でも仕事で新しいことに挑戦するとき、そのときの言葉が背中を押してくれています。人によっては厳しく育てられた方が成功するのかもしれませんが、僕の場合は“自由に転ぶ権利”をもらえたことが何よりの財産ですね。
- 会話のキッカケを想定:仕事で失敗したときの話から展開する。
- 会話例:
- 「いやー、仕事でちょっとやらかしちゃってさ…」
- 「そういうのありますよね。結構へこんだんじゃないですか?」
- 「うーん、反省はしたけどそこまでへこんではいなかったかな。俺は結構メンタル強いんだ。」
- 「え~!すごいですね。」
- 「父親のおかげかな。父親には『失敗してもいいからやってみな』って育てられたんだよ。そのおかげで、挑戦して失敗するのが悪って感覚があまりないんだ。(自己開示)」
- 「なるほど、環境って大きいですね。」
- 「ちょっと聞いてみたいんだけど、◯◯くんは、今思えばあのとき支えてくれたなって感謝してる人っている?(深い会話)」
水晶玉が「あなた自身・あなたの人生・未来」などの真実を教えてくれるとしたら、何を知りたいですか?
自己開示を用意:「自分の決断のどれが“本心からの選択”で、どれが“世間体の影響”だったか」を知りたいです。人生の節目で下した決断の中には、他人の期待や常識が混ざっていたことも多いと思うんです。もし水晶玉が「この選択はあなたの心から出たものだよ」と教えてくれたら、これからの人生で迷うことが少し減る気がします。結局、僕が知りたいのは「自分の声をどれだけ信じられていたか」ということなんだと思います。
あなたがこの相手と親しい友人になるとしたら、相手に知っておいてほしい重要なことは何ですか?
- 自己開示を用意(筆者の例):内向的な性格であるため、ひとりの時間が休息のために必須だと理解してほしいですね。遊びの誘いを断ったからといって嫌いになったわけではないし、たまには1人になりたいからといって付き合いが負担になっているというわけではないんです。一緒にいるのは楽しいけど、単純に1人の時間も必要。別々のエネルギー源だと思ってほしいですね。
- 会話のキッカケを想定:休日の過ごし方についての雑談から展開する。
- 会話例:
- 「週末何してる?」
- 「だいたい家にいますね。1人で本読んだり、音楽聴いたり。」
- 「えー、もったいない!」
- 「いや、1人の時間が充電なんですよ。 誰かと会うのは楽しいけど、1人の時間がないと電池が切れる感じ。だから仲良くなる人には『たまに1人になりたがるけど、人と関わるのが嫌いなわけではない』ってちゃんと理解してて欲しいですね。(自己開示)」
- 「なるほど、そういうタイプか。」
- 「◯◯さんは、仲良くなる人には知っておいてほしい自分の習性ってありますか?(深い会話)」
あなたが他人の前で泣いたことがある場面を教えてください。
- 自己開示を用意:大学時代、仲間と作った小さな演劇プロジェクトが終わったときに泣きました。成功した喜びというより、「終わってしまった」という喪失感が強くて。みんなで何かを作る時間が、こんなに尊いものなんだとそのときに実感しました。
- 会話のキッカケを想定:仕事でプロジェクトが一段落したシチュエーションから展開。
- 会話例:
- 「この前の企画、無事終わりましたね。」
- 「うん、終わるとちょっと寂しいよね。」
- 「わかります。僕も大学のとき、仲間と作った演劇が終わった瞬間に泣いちゃって。達成感より“もうこの時間が戻らないんだ”って喪失感の方が強かったんです。(自己開示)」
- 「うわ、共感できるな…!」
- 「◯◯さんも、寂しさとか感動で泣いた経験ってありますか?(深い会話)」
まとめ
- シカゴ大学の研究では、人は深い会話を実際よりも「気まずい」と誤って予想しているが、実際には楽しく親密なつながりを生むことが示された。
- 深い会話には「自己開示」が効果的で、自分から本音やエピソードを話すことで相手も話しやすくなる。
- 深い会話の質問を自分らしい言い回しにアレンジすることで、日常でも使いやすくなる。
人は深い会話の「気まずさ」を過大に見積もりがちですが、実際には想像以上に楽しめるということを覚えておきましょう。その鍵となるのが「自己開示」であり、自分から素直な体験や価値観を話すことで相手も心を開きやすくなります。
自己開示からの自然な問いかけを工夫すれば、雑談を発展させて深いつながりを育てることができるでしょう。

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