従来のような「給料もらっているんだからちゃんと働けよ」といった高圧的なリーダーシップでは誰もついて来てはくれません。上の立場に立つ人は「話しやすくて情報共有がしやすいリーダーを目指していることでしょう。
しかし、部下の本音を聞こうとしてもなかなか心を開いてくれないと思った経験はないでしょうか。上司と部下という上下関係があると、なかなか本音を引き出して話をすることはできませんよね。
そこで今回は、部下の個性を引き出す「変革型リーダーシップ」をとるための戦略を解説して行きます。
リーダーシップをとるなら「自虐ネタ」を仕込もう!
変革型リーダーシップとは?
変革型リーダーシップとは、チームメンバーの信念や価値観に働きかけ、行動の変化を促すリーダーシップのスタイルです。変革型リーダーシップの特徴として以下の四つの要素が挙げられています。
- 理想化されることでの影響力(Idealized Influence):部下から尊敬され、信頼される存在として影響力を発揮する。例えばリスクをとって行動したり、一貫した行動をとったりなど。
- 心を動かす動機づけ能力(Inspirational Motivation):仕事に意味づけしたり、課題を与えたりすることで部下のやる気を引き出す。例えば説得力のある未来を語るなど。
- 知的な刺激(Intellectual Stimulation):部下が現状を疑い、問題を別の角度から捉え直すように促す。新しいやり方にチャレンジするように促す。
- 個別性を大切にした配慮(Individualized Consideration):ひとりひとりの個性が尊重され生かされる
四つ全てが揃っていれば、現代的で理想的なリーダーと言えるでしょう。すべてを揃えるのは難しそうです。また自分では変革型リーダーシップがあると思っていても部下が同じように思っているとは限りません。
上司が自虐ネタを言うと、部下は「個性を大事にしてくれそう」と感じる
実は自虐ネタを使うことでリーダーシップをとる上で部下からの評価を上げることができると示されています。
部下やクライアントへの信頼性を高めたいと思った時には自虐的なユーモアを置いてみるのもいいでしょう。部下が自分の信頼を置いてくれない怖がられているという場合には効果は絶大です。
2013年に発表された研究では自虐的なユーモアを使うリーダーは、個性を大切にするリーダーシップに優れていると評価されることが知られています。
- 被験者:平均年齢20歳の大学生155人(スクリーニング後)
- 内容:リーダーのユーモアの使いかたによって、変革型リーダーシップの度合いがどのように評価されるかを調べた。
方法
被験者にはリーダーによるユーモアを交えたメッセージの文章を読んでもらった。この研究で使われた文章は、架空の企業でのリーダーが副社長に向けたメッセージが書かれており、就任式で新人を紹介することについて言及されている。そのメッセージの最後にユーモアのある一文が混ぜられていた。
その際、被験者をランダムに4つのグループに分けて比較。
- 自虐的なユーモアを交えたメッセージを読む(新人が私のことをすべて知っていながら、この仕事を引き受けてくれて嬉しいよ!)
- 攻撃的なユーモアを交えたメッセージを読む(新人があなたのことをすべて知っていながら、この仕事を引き受けてくれて嬉しいよ!)
- 自分たちを自虐するユーモアを交えたメッセージを読む(新人が私のことをすべて知っていながら、この仕事を引き受けてくれて嬉しいよ!)
- ユーモアの一部を含まないメッセージを読む(新人がこの仕事を引き受けてくれて嬉しいよ!)(対照群)
文章を読んだ後、被験者は社長に対してリーダーシップがあるかを評価する。用いられたリーダーシップの評価は以下の四つの点で評価された。
- 理想化されることでの影響力
- 心を動かす動機づけ能力
- 知的な刺激
- 個別性を大切にした配慮
結果
- 攻撃的なユーモアを読んだグループと比べて、自虐的ユーモアを読んだグループにおいて社長の「個別性を大切にした配慮」が高く評価されていた。
- また、対照群と比べて攻撃的ユーモアを読んだグループでは「個別性を大切にした配慮」が低く評価されていた。
要約・考察
つまり、リーダーが自虐的なユーモアを発することで周りの人に対して「自分たちの個性が尊重してくれそうなリーダー」だなという印象を与えることができるということです。
一方で、攻撃的なユーモア(=部下をいじったり、からかったりするユーモア)は、リーダーシップをとる上で不利に働いてしまいそうです。少なくとも個性を尊重してくれそうなリーダーだなと思ってもらうことが難しくなるでしょう。
自虐的なユーモアは普通の人が使えば自信のなさそうなイメージを与えることになりデメリットも伴います。しかし、社長や上司など立場が上の人が使えば親しみやすいという印象を与えるのに役立ちます。部下から親しみや信頼感を持ってもらうことはリーダーシップをとる上でとても重要なことでしょう。
ただ、自虐ネタは多く使いすぎるのはよくありません。実際に別の研究では、神経質傾向が高い人やメンタルヘルスに問題が出がちな人ほど自虐的ユーモアを使うということも示されています。ですので、自虐的なユーモアを使いすぎると自信がない人という印象を与えかねません。
使い時を見定めてから有効に使うことで、「この人もこんな冗談を言うんだ!」という意外性で、親近感を持たせることができます。
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