「知的謙虚さ」とは?
「知的謙虚さ」とは、自分の知識や考え方に対して謙虚な姿勢を持っているかの指標です。具体的には、以下のような能力を発揮できる人は知的謙虚さが高いと判断できます。
- 自分が何を知っていて、何を知らないのかという知的な限界を認識している
- 自分自身の誤っている考えを修正し続けようとする
インターネットなどで間違った情報が流れる現代において、知的謙虚さはとても重要な能力です。
2016年のペパーダイン大学のエリザベス・クルムレイ・マンクーゾ(Elizabeth J Krumrei-Mancuso)の研究によると、知的謙虚さを測定するための尺度が開発されています。また、クルムレイの尺度によると知的謙虚さは四つの要素で構成されることを示されています。
The Development and Validation of the Comprehensive Intellectual Humility Scale - PubMed
A series of studies was conducted to create the 22-item Comprehensive Intellectual Humility Scale on the basis of theoretical descriptions of intellectual humil...
ペパーダイン大学による知的謙虚さの4つの因子(2016年)
- 知性と自我の独立:
- 自分の意見を変更することへの開放性:
- 他者の視点の尊重:
- 知的過信の乏しさ:
小学生の知的謙虚さを把握しよう
知的謙虚さは子供が学校教育を受ける上でもとても大事な能力です。なぜなら、自分の考えが絶対正しいと思わず他人の意見を吸収することができるからです。そこで今回は子どもの知的謙虚さを測るツールを使ってみましょう。
2023年の東海大学らによる研究では、学校理科において知的謙虚さをどれぐらい持っているか判断する19項目の指標が作成されています。紙とペンを用意して子どもさんにやってもらいましょう。
小学校理科における知的謙虚さ尺度の開発
J-STAGE
東海大学による学校理科における知的謙虚の診断(2023年)
次の項目にどの程度当てはまりますか?受けている理科の授業をイメージしながら最も当てはまる数値で回答してください。
- まったく当てはまらない→0
- ほとんど当てはまらない→1
- どちらかというと当てはまらない→2
- どちらともいえない→3
- どちらかというと当てはまる→4
- かなり当てはまる→5
- 非常に当てはまる→6
- 自分の予想が間違っていると恥ずかしい気持ちになる
- 自分の考えに対して反対されると負けた気持ちになる
- 話し合うときに自分の意見が通らないと悔しい
- 自分の考えに反対意見を言われると攻撃されているように感じる
- 自分の意見の間違いを指摘されると嫌な気持ちになる
- 納得すれば自分の予想を変えることは嫌じゃない
- 友達の予想の方が良いなと思うと自分の予想を変える
- 自信があった予想でも実験結果を見て自分の考えを変えることにこだわりはない
- 自分の予想が間違っていても変更することにためらいがない
- 友達の意見を聞いてなるほどと思うと自分の考えを変える
- 友達の意見を聞いた後自分の考えを見直す
- 自分の意見に自信があっても友達の意見を聞くことは重要だ
- 自分の予想と違う結果になった時その理由を考えようとする
- 考察するときはほかの班の実験結果も使って考える
- 自分の考えより実験結果を大事にしたい
- 予想を立てるときは理由まで考えたい
- 実験で決まりを見つけた後「どんな時でもその決まりは正しいと言えるか」を考える
- 見つけた決まりに対してどんな時でも使えるかを考える
- その実験結果から言えることと言えないことを考える
- 項目1から5の数値を反転させる(0なら6、1なら5、2なら4、3ならそのまま…と変換する)
- 反転させた数値をすべて足して5で割って平均を出す(→知性と自我の独立スコア)
- 項目6から12の数値を全て足して7で割って平均を出す(→開放性スコア)
- 項目13から19の数値をすべて足して7で割って平均を出す(→一般化への慎重さスコア)
診断して数値を算出したら、以下の平均と比べて謙虚さ具合を見てみましょう。
- 「知性と自我の独立」の平均:2.84
- 「開放性」の平均:3.51
- 「一般化への慎重さ」の平均:3.17
この数値よりも高い数値が取れていれば知的謙虚さが高めということになります。しかし、皮肉なことに「自分は知的謙虚さを持っているのだ」と思い込んでしまうと、知的謙虚さを発揮できなくなります。そのため、数値が高かったからと言って謙虚の態度を忘れないように注意が必要です。
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