- 不眠の症状を劇的に改善する科学的根拠のある方法が分かる
- 具体的な基準で、自分の睡眠がどれくらい改善しているかが分かるので、達成感を積み重ねやすい
- アプリを用いて睡眠を記録するので、面倒な計算や記録の必要性がない。クリニックに行かなくても自宅で実現することができる
「睡眠制限療法」で濃縮した睡眠をくせづける
「睡眠制限療法」は、一定期間睡眠時間を減らすことによってより濃縮した睡眠を取れるようにする手法です。特に、寝床に入ってもなかなか眠りに落ちることができず、数十分や一時間過ぎてしまう人にはお勧めです。
なぜなら、寝床に入っても眠れないという経験を重ねると、だんだんと「寝床=眠れない場所」という認識が芽生え、より目が冴えるようになってしまうからです。
2015年のバーネット大学によるメタ分析では、睡眠制限療法は睡眠薬よりぐらい効果があることが示唆されています。この分析では、睡眠制限療法を含む睡眠導入法について調べた20件の研究をまとめています。
まずは自分の睡眠効率を調べよう
睡眠制限療法で睡眠の質を改善して行く上で、「睡眠効率」を基準にしていきましょう。睡眠効率とは、「寝床で過ごした時間」に対する「実際に眠っている時間」の割合です。
例:
305÷410分=0.74…
0.74×100=74%
※一応計算方法を書いていますが覚える必要はありません。今回の実践編では、自分で計算しなくても睡眠効率を把握することができます。
睡眠効率の基準は85点です。85点以上なら睡眠効率がいいと解釈できます。現時点で、寝床に入っても30分以上寝つくことができない人や夜中に何度も目が覚めてしまう人は、睡眠効率が85点に達さない場合が多いです。
なので、85点以上を目指していきましょう。実践編ではさっそく睡眠制限療法のやり方を解説していきます。
【注意】睡眠不足が致命的になる人は実践を控えて!
実践編の前に、睡眠制限療法を開始するときの注意点も把握しておきましょう。睡眠制限療法は睡眠時間が大きく短縮されるので睡眠不足になります。特に、最初の期間は集中力の低下が起こるので、以下の条件に当てはまる人は実践を控えましょう。
- 長距離の走行をしているトラックの運転手
- バスの運転手
- 工場の組み立てラインに従事している人
- ライフセーバーなどの監視業務
これらの注意力の欠如が致命的なミスにつながる人は睡眠制限療法の実践を避けるようにしてください。
また、基礎疾患として睡眠時無呼吸症候群・てんかん・パラソムニアがある人も避けましょう。睡眠時間が短縮されると症状が悪化する危険性があるためです。
【実践】自宅で今日からできる!睡眠制限療法に取り組んでみよう
睡眠制限療法の手順
- 最初の週に、1週間分の睡眠を記録する
- 「実際の睡眠時間」の平均を求める
- 次の週から、寝床にいる時間を「実際の睡眠時間の平均+30分」で設定する
- 睡眠効率が上がったかを確認する
- 次の週からは、少しずつ睡眠時間を長くしていく
ステップ1:アプリで睡眠を計測して、1週間分の睡眠を記録しよう
アプリを使って睡眠の記録を行ってみましょう。
「SleepCycle(スリープサイクル)」
「SleepCycle」は睡眠の質を計測するアプリです。スマホ枕元に置いて寝るだけで、睡眠を記録することができます。
↑睡眠の記録をとると、「寝床にいた時間」と「睡眠時間」の二つが表示されます。下の「睡眠時間」が実際に眠っていた時間を示します。「(実際の)睡眠時間」には、眠りに落ちるまでの時間や夜中に覚醒した時間は含まれません。
まずは今まで通りに睡眠をとって、睡眠の記録を1週間分取っていきましょう。
↑睡眠の記録を見直すときには、画面下のタブの「日誌」をチェック。記録を1週間とると、日曜日から土曜日までの睡眠の記録が並ぶ(画面上部)。
ステップ2:睡眠記録をもとに実際の睡眠時間の平均を求める
1週間分の記録をもとに、実際の睡眠時間の平均を計算していきましょう。(自分で計算する必要があります)
- 日誌を開いて、その日の「(実際の)睡眠時間」を確認する
- 日曜日から土曜日まで合計する(すべて「分」に直して計算するといい)
- 7で割って1日あたりの実際の睡眠時間を求める
※なお、ウィークリーサマリーに書いてある「就寝時間」という項目は、寝床にいた時間の1週間の平均なので参考にしてはいけません。
ステップ3:寝床にいる時間を「実際の睡眠時間の平均+30分」で設定する
次の週からは、寝床にいる時間を「実際の睡眠時間の平均+30分」で設定します。
実際の睡眠時間の平均は5時間だった
↓
寝床にいる時間を5時間30分に設定
↓
7時に起きたい場合、寝床にいる時間が5時間30分になるように、1時30分に寝床につくようにする
ちなみに、睡眠時間が4.5時間以下になると体に良くないので、必ずそれ以上に設定するようにします。
ステップ4:決めた時間を一週間実践
例えば、1時30分に寝床に入ると決めた場合、その就寝時刻で1週間続けます。
1時30分になるまではベッドに上がらないことが鉄則です。例えば、スマホいじりや読書などの睡眠以外の目的でベッドにあがるのは禁止です。これは本当に眠くなる時間に寝床に入ることによって、眠りに落ちるまでの時間を早めるのが狙いです。
ステップ5:ウィークリーサマリーで睡眠効率をチェックしよう
1週間の睡眠時間から睡眠効率を見て、睡眠時間を調節するかどうかを判断しましょう。
1週間分の睡眠効率は「ウィークリーサマリー」から見ることができます。ウィークリーサマリーとは、その週の日曜日から土曜日までの総合的な記録です。
↑1週間分の記録の一番右側にあるレポートのアイコンをタップ。
↑ウィークリーサマリーで見るべきは「効率」という部分。睡眠効率を示しています。
ステップ6:睡眠効率が85を超えていたら、寝床にいる時間を15分延ばそう
睡眠を制限した週の睡眠効率をチェックして、基準点である85に達しているかをチェックしましょう。
- 睡眠効率が85を超えていれば15分長くする
- 79以下の場合は15分短くする
- 80から85の間は同じ時間で
1時30分に眠る生活を1週間ほど続けて、「効率」が85以上なら次の週からは1時15分に寝床に就くようにする
以降はステップ4からステップ6を繰り返しましょう。
- 睡眠時間を繰り上げたらまた一週間同じ時間で寝床に入る
- 一週間経ったら睡眠効率をチェックして 85を超えているかどうか確認する
- 85を超えていたら寝床に入る時間を15分早める
最終的に、寝床に入っている時間を7時間から8時間半程度に伸ばすと良いでしょう。
2ヶ月を目処に実践しよう
睡眠制限療法はそれなりに時間がかかります。1週間ごとに15分ずつじわじわと睡眠時間を伸ばすからです。仮に睡眠時間を5時間まで減らして1週間ごとに15分ずつ延ばしたとすると、睡眠時間が7時間に達するまで8週間(=2ヶ月)かかることになります(最初の睡眠効率の計測期間も含めると9週間)。
気長に実践していきましょう。
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