「第一印象は大事」と分かっていても、どういった点を工夫すればいいのかはなかなか想像できませんよね。
「指導する学生や部下に信頼してもらいたい」「面接で有能そうだと思ってもらうにはどうしたらいい?」と悩んでいる人は、表情やジェスチャーに気をつけて印象をよくしてみましょう。
というのも、人はたった数秒でも人の有能さを的確に見抜いてしまうからです。
学生は6秒で教員の有能さを見抜ける!?
1993年に発表された社会心理学者のナリーニ・アンバディーとロバート・ローゼンタールによる実験では、人間は数秒から数十秒見るだけで有能さを見抜くことができると示されています。
根拠となる研究
APA PsycNet
- 被験者:女子大学生9人、男女の大学教員13名
- 内容:大学教員が授業をしている短い動画を見せて、有能さ・専門性・好感が持てるかなどを評価してもらい、実際の大学教員の評価と比べた。
方法
13名の大学教員の1時間に渡る授業のビデオを録画し、編集して30秒間のビデオクリップを作成した。9人の女声学生に無音のビデオクリップを見せて、以下の項目を評価してもらった。
- 印象に関する評価:注意深いか、有能そうか、自信に満ちているか、支配的か、共感的か、熱意があるか、正直か、好感が持てるか、楽観的か、専門的か、支援的か、温かいか…などの15項目
- しぐさに関する評価:頭のうなずき・笑顔・笑い・眉をひそめる・唇を噛む・視線を下げる・身体に触れる・手や足を動かす・ジェスチャー・胴体の姿勢など
そして、30秒間のビデオによる印象の評価と実際の教員の評価を比べた。実際の教員の評価は、普段授業を担当している学生によって学期末に評価された(評価は授業全体の質と教員の能力の2点が問われた)。
結果
- 30秒のビデオで印象に関する評価が高かった大学教員は、学期全体の授業全体の質や能力の評価も高い傾向が見られた。
- 特に30秒のビデオで、楽観的・自信がある・支配的・活動的・熱意がある・好感が持てる・温かい・有能・支援的という印象を持たれた教員は、学期全体の評価が高い傾向が見られた。
- しぐさに関する評価では、眉をひそめる・手足をそわそわ動かすのしぐさが見られる教員は、学期全体の評価が低い傾向が見られた。
- なお、教員の外見の魅力の影響を取り除いても同じような傾向が見られている。
要約・考察
研究で示されたことを要約すると以下の通りになります。
- 30秒の動画だけでも大学教員の有能さを見抜くことができた。
- 有能さを判断する上で、楽観的・自信がある・支配的・活動的・熱意がある・好感が持てる・温かい・有能である・よく助けてくれるといった印象を重視している
- 眉をひそめる・手足をそわそわ動かすといったしぐさをする人は有能さに欠けると判断できる
また、同じ論文の別の実験によると、30秒の動画をさらに短くして15秒や6秒に編集した場合でも、同じような結果が得られています。つまり、学生は大学教員の有能さを6秒の動画だけで判断することができるということです。
研究結果を応用するなら、積極的に「自信がありそう」「親切な感じがする」「ポジティブそう」と思わせる表情やジェスチャーを取り入れることによって、有能そうだと思ってもらうことができそうです。
例えば、教員が学生に有能そうだと思ってもらうことで学習のモチベーションを高めたり、企業面接において有能さをアピールしたりできるでしょう。
【実践】有能な人の振る舞いを真似て、有能さを「偽装」しよう!
ステップ1:有能さの偽装という手段を知る
有能さの「偽装」であっても無駄ではありません。確かに、有能な人が醸し出す雰囲気を真似るだけでは、実際に自分の能力が高まるわけではないでしょう。しかし、有能さを演出することによってチャンスを掴むことができ、自分の能力の向上に役立つことはあります。
例:
面接で有能だと思ってもらうことによって転職を成功させ、キャリアアップにつながる
初対面で有能だと印象づけることによって仕事を任せてもらえるようになり、経験を積むことやスキルアップにつながる
生徒に有能だと思ってもらうことによって、授業にまじめに取り組もうといいう意欲を高め、生徒の意欲に応えようとして自分自身の授業のパフォーマンスも高まる
ステップ2:「自信がありそう」「親切な感じがする」「ポジティブそう」と思わせる表情やジェスチャーを取り入れよう
例:
- 姿勢を正して自信があるように見せる
- 手足をソワソワと動かしたり、ものや自分の顔や髪を触ったりしない
- ぶつぶつ喋るのではなくてはっきりとしゃべる
- 積極的に人を助けたり、気を使ったりする
- 新しいことに挑戦する姿勢を見せたり、前向きな発言をしたりなど熱意のある一面を見せる
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