今回はADHDの特性に悩む方やその家族に向けて、ADHDの創造性の活かし方について解説します。
「やりたいことはずなのに集中力が続かない」という人でも大丈夫。自分が興味を持てることを見つけて、適切にやり方を整えれば時間を忘れて夢中になる体験ができるはずです。
ADHDはクリエイティビティが高い?
- 不注意:忘れ物が多い、何かやりかけでもそのままほったらかしにする、集中しづらいもしくは自分の興味のある事に対しては集中しすぎて切り替えが難しい、片付けや整理整頓が苦手。
- 多動性:落ち着いてじっと座っていられない、過度なおしゃべり、ソワソワして体が動いてしまう
- 衝動性:順番が待てない、気に障ることがあったら乱暴になってしまうことがある、会話の流れを気にせず思いついたらすぐに発言する、ほかの人の邪魔をしたり遮ったりする
2020年にラドバウド大学医療センターなどの研究者たちによって発表された論文では、ADHDのグレーゾーンの人は創造性が高いことが示されています。

内容
ADHDと創造性に関する過去31件の研究をまとめて分析。
結果
- グレーゾーンなADHD傾向を持つ人では、発散的思考(1つの問題について複数のアイデアを出す思考)が高いという証拠が多い。
- しかし、診断を受けている臨床的ADHDでは必ずしもそうとは言えない。
- なお、収束的思考(論理的に1つの回答を導く思考)の向上は見られなかった。
考察
ADHD傾向を持つ人は、注意力が低い分、ほかの人が余計だと思ってしまう情報を拾い上げる能力が高いからだと考えられます。創造性を発揮するためには一見関係なさそうな情報を結びつける必要があるからです。しかし、この研究ではADHDと臨床的に診断を受けている人は創造性が高い傾向は見られなかったようです。ADHDの傾向があるというラインが創造性を発揮する上ではベストなのかもしれません。
実際に、圧倒的なクリエイティビティを発揮して世の中を変えた人たちにもADHD傾向があったとされる人がいます。例えばスティーブ・ジョブズです。
スティーブ・ジョブズはiPhoneを生み出したApple社の共同設立者の一人。Apple製品は余分な要素が削ぎ落とされた洗練されたデザインで注目されています。そんなジョブズはADHD傾向があったとされており、幼い頃から興味を持ったことをやってみたい衝動を抑えられない一面がありました。


ADHDの圧倒的な集中力を引き出す「ゲーミフィケーション」テクニック
ADHDの圧倒的な集中力の引き出し方として、ローリー・エローというアメリカの自営業者のエピソードが印象的です。エローはADHDによる先延ばし癖に苦しんできましたが、「ゲームのようにタスクを処理する」という方法を自ら生み出し解決しました。

エローは先延ばしの傾向があり悩んでいたもの、ゲームは何時間でも集中して取り組むことができることに気づきます。そこで、彼はゲームのフィードバックループの考え方を掘り下げていきます。
フィードバックループとは自分の行動に関して結果が分かり評価されるという一連の流れのことです。
例えば、FPSのゲームでは以下のようなフィードバックループが繰り返されます。
- 行動:照準を合わせて弾を打つ
- 結果:当たるか外れるかという結果がすぐに出る。
- 報酬:弾が当たったら派手に評価される(効果音や敵の死亡、ダメージ数値の表示など)
つまり、ゲームでは行動・結果・報酬という流れが早いスパンで繰り返されるから、何時間でも夢中になれるのだという考察になりました。中でも、結果がすぐに出ることと報酬が派手に演出されることがゲームの特徴です。
そこで、エローは仕事のタスクも分解してゲームと同じような構造にできないかと考えました。
- 行動:例えば部屋を片付けるというタスクなら→ベッドを整える机を拭く床を掃除機をかけるという細かいタスクに分解する(5分以内で取り組めるタスクになるまで分解する)。
- 結果:細かいタスクをそれぞれ一枚の付箋に書き、タスクを終わらせることに集中する(5分以内なので結果がすぐに出る)。
- 報酬:終わったらタスクの付箋をくしゃくしゃにして透明な瓶に放り込む(触覚や音、終わった付箋が積み重なっていくという視覚で派手に演出する)
このようなゲーミフィケーション(ゲームの考え方を仕事に取り入れること)のテクニックを使って、ADHDでも没頭できる環境づくりをしてみましょう。
【実践】ADHD傾向を活かし、ゲームのように没頭しよう
ステップ1:ADHD傾向のセルフチェックをしてみよう
まずはADHDの傾向があるかどうかチェックしてみましょう。なお、これは正式な診断ではなく、生活の中で自分の傾向を把握するための参考と捉えてください。
不注意(集中・整理のしにくさ)
- 興味があること以外は集中が続きにくい
- 細かい部分でミスをしやすい(書類・メール・作業など)
- 忘れ物や失くし物が多い
- やるべきことを後回しにしてしまうことが多い
- 部屋や机の整理整頓が苦手
多動性・衝動性(行動のコントロールのしにくさ)
- 落ち着いてじっとしているのが苦手
- 頭の中に次々とアイデアや考えが浮かんで止まらない
- 話しているとき、相手の話を最後まで待てずに口を挟んでしまうことがある
- 衝動的に買い物や行動をして後悔することがある
- 強く興味を持ったことには時間を忘れて没頭してしまう
ステップ2:特性を発揮できる創作分野を探してみよう
ADHDの人が得意なクリエイティビティを発揮できるような活動を探してみましょう。ADHDの人は以下の条件がそろうと、驚くほど集中しやすい傾向があります。
- 行動自体が強い興味をそそる
- すぐに結果が出る
- 派手に報酬が演出され、達成感がある
ゲームはその典型ですが、同じような構造を持つ環境は他にもあります。
クリエイティブ活動
- 絵を描く、作曲する、動画編集、プログラミング、文章を書くなど
- 「自分の手で形が変わる」フィードバックが明確
- 成果物が視覚的に残るため達成感を得やすい
スポーツや身体活動
- バスケット、ダンス、ランニング、武道など
- 動作と結果が直結していてテンポが速い
- 達成感や爽快感がリアルタイムに得られる
即時性のある対人交流
- ディベート、演劇、YouTube配信、ライブ配信など
- 「リアクションがすぐ返ってくる」ことが報酬になる
- 共感や笑いなど感情フィードバックも強い
実験・ものづくり
- 科学実験、料理、DIY、電子工作、ガーデニング
- 「やってみた→結果が出た」というループが短く繰り返される
- 想定外の変化も刺激となり、飽きにくい
紹介したような創作分野から興味の持てるものを選んでみましょう。そして、興味が持てるものを最適にデザインしていきましょう。短いサイクルで行動→結果→報酬が返ってくるようにするのがコツです。
ステップ3:行動を5分以内でできるまで分解してみよう
全体をやるではなく「5分で試作品を1つ」「背景の色だけ塗る」など、瞬間的に手を動かせるタスクに分割してみましょう。
ステップ4:目に見える成果を残そう
作品を作っている時には、作品の途中過程を写真やスクリーンショットに撮って残してみましょう。「やった感」が具体的に見えることが重要です。
ステップ5:具体的なケースを参考にしてみよう
実験(科学・料理・ガジェット検証など)
ADHD傾向:結果がすぐ出る→ハマりやすい
- 思いついたらすぐに試す→「失敗もデータ」として面白がる
- 実験ノートにイラストや写真で結果を残す→視覚的に積み重なる快感
- その場でSNSにシェアしてリアクションを得る→即時フィードバックが次の実験意欲に
ものづくり(DIY、工作、クラフト)
ADHD傾向:手を動かすと集中しやすい
- アイデアをすぐ形にする→完成度よりスピード重視で試作品を量産
- 部品を並べたり道具を触ったりする過程自体が楽しい
- 思いついた工夫をその場で加える→発想の飛躍が独自性に
演劇・即興パフォーマンス
ADHD傾向:対人の即時反応に強い、感情表現が豊か
- 即興劇で「ひらめきをそのままセリフ」に→場を盛り上げる力
- 感情の振れ幅が表現に直結→観客に伝わりやすい
- 稽古より本番で燃えるタイプ→“ライブ感”が最大の武器に
絵を描く・ビジュアルアート
ADHD傾向:細部にハマるor大胆に表現する、時間を忘れる集中力
- 線や色に没頭して気づいたら数時間→独特の世界観が育つ
- 思いついたモチーフを一気に描く→爆発力のある作品に
- 頭の中のイメージが次々浮かぶ→シリーズ化や連作に向く
プログラミング・デジタル創作
ADHD傾向:問題解決に夢中、動作確認の即時性が報酬になる
- バグを直す→動く→達成感でさらにのめり込む
- 面白そうな機能を思いついたら即コード追加→独創的なツールが生まれる
- 時間を忘れて集中し、気づいたら夜明け→ハイパーフォーカスが成果物に直結
まとめ
ADHDは「不注意」「多動性」「衝動性」といった特性から日常生活で困りごとが多い一方、発散的思考や独創性といった創造性の面で強みを発揮することがあります。
特にグレーゾーンのADHD傾向を持つ人では創造性の高さが研究で示されています。ゲームのように「行動→結果→報酬」のループを短いスパンで回す工夫や、自分の特性に合った創作分野を見つけることで、没頭する集中力を活かしたクリエイティブな活動につなげられます。

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