科学が示す「運命の赤い糸」!?セックスの相性は「MHC」で決まる!?

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セックスをしたときに気持ちよく感じることができるかどうかは恋人と長く関係を続けていく上で重要です。

相性を左右する要素としては、セックスのペース・相手の性的な趣味・して欲しいことを分かってくれる…などいろいろあります。加えて、「肌を合わせるだけで幸せを感じる」など感覚的な部分も多いかと思います。

そのようなセックスの相性が、実は遺伝的に決まっている部分があると言うと驚くでしょうか。

 

科学が示す「運命の赤い糸」!?セックスの相性は「MHC」で決まる!?

MHCは異物から体を守る免疫の要

MHCとは、「主要組織適合遺伝子複合体(Major Histocompatibility Complex)」のことです。MHCは免疫反応に関わるタンパク質で、細胞膜の表面に存在しウイルスや細菌などの異物から体を守る役割を持っています。人の場合は特に「ヒト白血球型抗原(HLA:Human leukocyte antigen)」と呼ばれます(この記事ではMHCという呼び方で統一します)。

 

人間のMHCは遺伝子によって決まっており、個人ごとにMHCの型にはバリエーションがあります。赤血球の血液型であるABO型に対して、MHCは白血球の血液型と言えます。

MHCにはA座・B座・C座・D座(DP、DQ、DR)の計6つがあり、遺伝的に決まります。それぞれの座に数十種類以上の違う型があるので全ての組み合わせは何千万通りになります。

 

MHCはもともとは臓器移植をするときの相性を決める物質として見つかったものです。というのも、臓器移植をしても免疫細胞が移植された臓器を異物としてみなすと攻撃を仕掛けてしまい、うまく定着できないからです。

 

MHC遺伝子が似ているほど相性はよくない!?

恋人としての相性もMHC遺伝子の型の組み合わせの影響を受けます。

実際に、ある研究では女性は自分とMHCの型が似ているほど男性の匂いを好きではない匂いと判断しました。

つまり、人間は相手の匂いから無意識にフェロモンのようなものを感じ、好き嫌いを判断していると言えます。実際、人間のMHCは尿・汗・母乳などから体臭として放たれ、鼻の奥の鋤鼻器官(じょびきかん)で感じられます。鋤鼻器官とは、両生類・爬虫類・哺乳類が持つフェロモンを嗅ぎ取るのに特化した嗅覚器官です。

 

免疫に関わる遺伝子が恋愛の満足度に影響するのは意外かもしれません。しかし、免疫力を高めることを前提に恋愛相手を選ぶことは自然なことです。なぜなら、恋愛をして自分の子孫を残すときに、より病気への抵抗性を持つ子どもを産んだほうが生存に有利だからです。自分と型が離れているMHC遺伝子を持っている異性と子どもを作った方が子どもの生存力は上がります。 MHC遺伝子は体内に侵入してくるウイルス・細菌・寄生虫といった異物に反応するものですから、両親から別々のMHC遺伝子を引き継いだ方がより多くの病気への抵抗性を獲得できるというわけです。

もちろん、人を好きになる時に、その人との間にできるかもしれない子どもの免疫力のことまで考えている人はまずいないでしょう。しかし、異性の匂いを嗅ぐことで無意識に自分の遺伝子を残すのに有利な相手を選んでいると言えます。

 

「どんな男が好みなの?」

「カッコよくて、優しくて、MHCの型が私とは違う人かな」

「??」

 

 

MHC遺伝子の型が近いと女性はオーガズムを感じにくい!?

実際に、2006年に発表されたニューメキシコ大学の研究によると、MHCの型が近いカップルはセックスの相性が悪いと示されています。

Major histocompatibility complex alleles, sexual responsivity, and unfaithfulness in romantic couples - PubMed
Preferences for mates that possess genes dissimilar to one's own at the major histocompatibility complex (MHC), a polymorphic group of loci associated with the ...

 

研究の解説
  • 被験者:平均年齢21歳の48組の男女のカップル(スクリーニング前)
  • 内容: MHCについて調べ恋愛関係の満足度について調べた

 

方法

研究の初め・女性の排卵期のタイミング・女性の排卵期ではないタイミングでそれぞれ調査を行った。被験者に対して測定した項目は以下の通り。

  • 性的な満足度(本人視点):パートナーが性的に満足させてくれる程度と、パートナーが性的にどれほど冒険的であるかの2つを9段階で回答。
  • パートナーの性的な満足度(本人視点):パートナーの視点に立って、自分が性的に満足させている程度と、自分が性的にどれほど冒険的であるかを回答。
  • 性的反応:自己申告と、パートナー視点による申告によって性的な反応に関する5つの項目で評価した(例:「私はパートナーと性行為をしたいと思っている」「パートナーを性的に喜ばせようとしている」「パートナーと性行為することを拒否している(逆転項目)」など)。パートナー視点による申告も同じ項目。パートナー視点による回答も同じ項目。(例:「パートナーは私と性行為をしたいと思っている」)
  • 浮気の人数:現在のパートナー以外の人と性行為をしている人数を回答した。
  • カジュアルな性行為への意欲:親密さがなくても性行為を行う意欲を持っているかを評価した。

 

加えて、女性の排卵期のタイミングと排卵期ではないタイミングそれぞれにおいて、以下の項目について回答してもらった。

  • パートナーへの性的魅力(女性視点):2つの質問で、その期間に自分のパートナーに対してどれだけ性的魅力を感じていたかを評価した。
  • パートナー以外の男性への性的魅力(女性視点):5つの質問で、パートナー以外の男性に性的な魅力を感じていたかを評価した。

 

なお、これらのセッションの間に男性と女性はどちらも、過去2日間でさまざまな性的な行動を行った回数を記録した。なお、研究の初めにそれぞれの被験者の口の粘膜組織から細胞を採取し、MHCの型を調べた

結果

パートナーで共有されるMHC遺伝子が増えるほど以下の傾向が見られた。

  • 女性の性的反応の傾向が低下していた。(r=-0.35)
  • 男性からしても、パートナーの性的反応が低下していると感じていた。(r=033)
  • 女性からしてパートナーが性的に満足させてくれる程度の評価が低下していた。(r=-0.30)
  • 男性からしても、自分がパートナーを性的に満足させている程度を低く評価していた。(r=-0.22)
  • 女性はより多くのパートナー以外との性行為を報告していた。(r=0.28)なお、この結果は女性のカジュアルな性行為への意欲の影響をコントロールしたときにも維持された(r=0.33)
  • 女性から見てパートナー以外の男性に対して魅力を感じる傾向が強くなった(特に排卵期においてその傾向が増していた)

 

具体的な性行動について、MHC遺伝子が増えるほど以下の傾向が見られた。

  • MHCの共有度合いによって性行為の頻度自体は変わらなかった。
  • パートナーによる性行為の試みを拒絶する傾向が増えた(特に排卵期においてその傾向が増していた)。
  • 排卵期において、パートナーとの性行為でオーガズムを感じる傾向が低くなった。

 

男性の性的反応と浮気

  • MHCの共有度合いによって、男性の性的反応は変わらず、男性から見てパートナーが性的に満足させてくれる程度も変わらなかった
  • MHCの共有度合いが増えても、パートナー以外との性行為が増える傾向が見られなかった
  • 共有度合いが増えるほど、男性から見てパートナーが性的冒険心に満足していないと感じる傾向が見られたが、女性から見てその傾向は見られなかった
要約・考察

つまり、パートナーとMHCの型が似ている場合、特に女性におけるセックスの満足度が下がってしまうと言えるでしょう。

  • 女性がセックスに対して乗り気でなくなる
  • 女性が性的に満足しづらくなる
  • 女性が(本人のカジュアルなセックスへの意欲に関係なく)浮気をしやすくなる
  • 特に排卵期において、他の男性に性的な魅力を感じやすくなってしまう
  • 排卵期において、パートナーとの性行為でオーガズムを感じにくくなる

なお、この研究では男性ではMHCの型が似ていても、セックスに対して乗り気でなくなったり、パートナーに対して性的に満足しづらくなったりする傾向は見られなかったようです。

 

ですので、女性は恋人を選ぶときには相手の匂いをしっかりと見極めて選んだ方がセックスの相性が良くなりやすいと言えるでしょう。実際に別の研究では、女性は特に恋愛関係の相手を選ぶときに五感のうちでも匂いを重視することが示されています。

ただし、香水の匂いはノーカンです(ついでに加齢臭も。加齢臭を「いい匂い」と感じる女性は少数派だと思いますが)。MHCの匂いの影響は汗などに交じるものであり、その人本来の体臭を嗅ぎ取る必要があるからです。

よって、恋人を選ぶときには「この人の匂いが好き」と思えるかどうかという基準を参考にしてみるといいでしょう。

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